今なら言い返すこともできるけど
その翌朝、さすがに言い過ぎたと思ったのか、夫は「ごめん」と声をかけてきた。そのときユミさんは「何が?」と冷たくあしらった。そしてそれ以来、彼女は夫を心底から信頼はしていない。いつもどこか夫を冷ややかな目で見ている自分がいる。
「夫も転職先で自分の居場所を見つけたのか、本来の明るさが戻ってきました。次女が1歳になる前に保育園にも入れて、私も職場復帰して。夫は周りの人に言われたのか、そのころから子育てに協力的になりました。とはいえ、家事育児の8割は私だと思いますが」
文句を言われなければよしとしようと、夫との関係を考えるようになった。しっかり協力態勢を整えたいという希望もなくなった。夫がやると言ったこと、頼んでもできそうなことだけを頼んだ。
「それでいっぱしのイクメンパパみたいな顔をして、『近所の人に、いいパパだって褒められた』と自慢げに語る夫に、内心うんざりしながら、そうと笑顔を向ける私。ときどき自分らしく生きてないし、夫の妙な圧に抑えつけられている感覚を抱きながらも、無難な道を歩んできたなと思います。そんな自分があまり好きではないけど、もとを考えれば夫のモラハラ、無神経な言葉から私の自尊心が奪われたんだろうと、最近、思っています」
食事に不満げな夫「あと一品なんだよな」
あのころほどひどいことは言わないが、それでも夫はいまだに食事に不満をもらすことが多い。
「栄養のバランスが悪いんじゃないかとか、あと一品なんだよなとか。だったら自分で作れよと思います。つい先日、つい『自分で作ってみたら?』と言ったら、『なにその反抗的態度』って。私は夫の娘じゃない。反抗ってどういう意味なんだろうと考えてしまいました。夫は私が反抗できる立場じゃないと思っているわけですよね。やっぱり下に見てるのは明らかで、ずっとモヤモヤしています」
そのうち私が爆発するかもしれないけれど、爆発するなら娘たちが大人になってからにしようとは思っている。ユミさんは最後は冗談めかしてそう言ったが、それこそが本音なのではないだろうか。