「人生ってこんなにバリエーションがあったんだ」
――「TBSドキュメンタリー映画祭」は今年で4回目ですが、LiLiCoさんは3回目からアンバサダーを務めていますよね。LiLiCoさん(以下、LiLiCo):本当は、1回目からアンバサダーをやりたかったくらいです。私は昨年、初めてアンバサダーの仕事をいただいたとき、記者会見で映画祭のスタッフに「来年もやらせてください!」とお願いしたんです。それくらいドキュメンタリーの魅力にハマっていますし、力を入れてやっています。
ドキュメンタリー映画は人生観を変える力を持っているんですよ。「人生ってこんなにバリエーションがあったんだ」と驚くほど面白い。監督たちはそれぞれ自分なりのテーマを持って、それぞれの人生を映し出している。元気をもらえたり、それはどうなの?と思ったり、感情がすごく動くのがドキュメンタリー映画です。
――ドキュメンタリー映画はエンターテインメント映画と異なり、シリアスで重いイメージを持っている人も多いと思います。
LiLiCo:実はドキュメンタリー映画は、社会問題や悲惨な現実ばかりを映し出しているわけではないんです。
今回の映画祭の作品で例を挙げると『カラフルダイヤモンド ~君と僕のドリーム~』(監督:津村有紀)は、名古屋を中心に活動する「BOYS AND MEN」の弟分の男性アイドルグループ「カラフルダイヤモンド」の活動を追いかけたドキュメンタリーです。個人的には恵まれた環境で活動しているグループだなと思いましたが、彼らなりの葛藤があり、それを乗り越えた頑張りも映し出されています。 ――頑張っている人たちを見ると元気をもらえますよね。
LiLiCo:そうなんですよ。その一方で、『ダメな奴 ~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~』(監督:嵯峨祥平)は、人気ラッパー紅桜さんが刑期を終えて出所した後の人生を描いているのですが、私は彼の友だちになれるだろうかと考えさせられました。 いくら友だちとはいえ、服役を終えて出所した人を「イェ~イ」と迎え入れることができるのか。ずっと待ち続けた奥さんもすごい。どんな気持ちで待っていたんだろうと。ドキュメンタリーは自分に置き換えて考えられるところも面白いんです。
――ドキュメンタリーは現実と地続きだからこそ、“自分ごと”としても見ることができるんですね。
憧れの女性も、悪い見本も、全て映画の中にいた
――LiLiCoさんの映画生活についてお伺いしたいのですが、『王様のブランチ』(TBS)ほか、映画に関するさまざまなお仕事の関係で、たくさん映画をご覧になっていますよね。LiLiCo:年間400本くらいは見ていますね。でも『王様のブランチ』の映画コメンテーターに決まった当初は、それまで映画通のようにたくさん見ていたわけではないので、とりあえずランキングに入っている映画はすべて見て、黒澤明監督、小津安二郎監督など巨匠の作品なども見ました。昔の作品のリメイクやオマージュ作品も多いので、見ておかないと何も語れませんからね。
――もともと映画好きだったのですか?
LiLiCo:私はスウェーデンで育ったのですが、子どもの頃は、弟に重いぜんそくがあったので、学校が終わったらすぐに帰宅して弟の面倒を見ていたんです。うちはシングルマザーで、母は仕事が忙しかったので、私がやらないといけなくて。日曜日は母が家にいるので遊んで来ていいよと言ってくれたのですが、普段、学校からすぐ帰宅していたので友だちもいなくて。だから映画が友だちだったんです。
――今の明るいLiLiCoさんからは想像できないです。
LiLiCo:子ども時代はおとなしかったんです(笑)。スウェーデンでは当時、国営放送しかなかったのでCMがなく、CMは映画館で見るものだったんです。スターたちが出演するCMを見たり、映画を見たりするのが楽しかった! 現実と違って華やかな世界なので……。きっと現実逃避だったんだと思います。
私は「好きな男の子を見てドキドキ」とか、そういう思春期の経験がゼロなので、スクリーンで擬似体験をしていました。私にとってドキドキする相手はスクリーンの中の人で、憧れの女性も、悪い見本も、全て映画の中にいました。青春は映画とともにあったという感じです。 ――スウェーデン映画はラッセ・ハルストレム監督など人気監督がいますし、『ロッタちゃん』シリーズなどかわいい映画もありますよね。
LiLiCo:当時のスウェーデン映画の面白いところは、役にピッタリの人だったら素人でもスカウトしてキャスティングするんです。その1本から俳優になる人もいますが、普通の生活に戻る人もいます。
夢があっていいですよね。街を歩いていたらスカウトされて映画に出演できるかもしれないわけですから。私も昔は「スカウトされるかも!」なんて思いながら歩いていましたよ(笑)。
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