適当に「仕事」を言い訳にする
「妻の実家が都内の一軒家で、しかもけっこう敷地が広いんです。妻はひとりっ子なので、あちらの両親は、遠慮しながらも『できれば近くに住んでもらえたら』という感じでした。僕は仕事で出張もあるし、子どもができてからも妻の両親が近くにいれば心強い。だから敷地内に家を建てることにしました。妻の両親は穏やかなタイプで、僕たちの生活に口を挟んでくるようなことはないだろうと思って」ユウスケさん(43歳)は、そう10年前の結婚当初を振り返る。結婚してすぐ妻は妊娠、翌年に長女が、その3年後に長男が産まれた。ふたりの子が生まれた前後、彼は出張も多く、妻の実家敷地内での別居を心地よく思っていたという。
「ところが部署が変わってこの5年、コロナの影響もあって出張が激減、ついでに残業も激減しました。在宅ワーク推奨の時期も長かった。家にいることが増えて、日頃の妻と両親の関係がよく見えてきたんです」
在宅ワークで見えてきた、妻の日常
妻は起きるなり子どもを連れて実家である敷地内の母屋へ。そのままずっと夕飯まで戻ってこない。「あなたは仕事でしょ。邪魔しちゃ悪いからあっちに行ってると最初は言っていたんです。でもそのうち休日でも同じ行動をとるようになった。以前は休日は家族4人で過ごしていたのに、いつからこんなことになったのかわからない。気づいたらそういうことになっていたんです」
休日、目覚めると妻子はいない。実家を覗くと両親と妻子が楽しそうに団らんしている。妻が彼を呼びに来ることはない。一緒にあっちに行くかと聞かれれば、もちろん行く気はないとしてもそれをきっかけに話し合うこともできると彼は言う。
「僕らの生活をどう思ってるの、どうしたいのと聞いたら、『両親を安心させたい』と。答えとしてズレている気がするんですが、妻はそれが最優先だと。じゃあ、オレは? オレの存在は? と言うと『あなたは私の夫だし、子どもたちの父親だもの』と言ってからしばらく考えて『何が言いたいの?』って。家族の時間を過ごしたいんだと言うと、『じゃあ、向こうに来る?』と。でも、あくまでも来てほしくなさそうに言うんです。そのくらいは僕だって読めますから」
子どもたちが寝ちゃったから来てと言われて、迎えに行ったことはある。義母は彼を見て、「あら、いたの?」と言った。いないと思っていただけかもしれない。だがその発言に、彼は両親から歓迎されていないこと、妻が彼を大事に思っていないことを読み取った。
「子どもが小さいから、いますぐ離婚とはならないだろうけど、だんだん帰宅する時間が遅くなってはいますね」
寂しそうな表情でユウスケさんはそう言った。
>なんとなく仲間はずれ