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俳優生活20周年! 映画『罪と悪』主演の高良健吾が「絶対に演じたい」「手放したくない」役とは(4ページ目)

映画『罪と悪』の主演・高良健吾さんにインタビュー。少年時代の悲劇を抱えて大人になった男を演じた高良さんに、映画の裏側に加えて俳優業についてお話を聞きました。

斎藤 香

執筆者:斎藤 香

映画ガイド

出演作は必ず自分で選びます

「罪と悪」高良健吾

高良さんが出演作を決める際に大切にしているポイントとは

――キャリアについてお伺いしたいのですが、昨年(2023年)はさまざまなジャンルの作品に出演されて、その中でもヤンキー青春映画『Gメン』への出演はちょっと驚きました。「高良さん、こういう爆笑コメディー映画にも出るんだ」と。出演の決め手はどこにありますか?
 
高良
:僕は本当にワガママを言わせてもらっていて、若い頃から出演作は自分で決めています。俳優業は心身共に削られる大変な仕事だから、自分で選びたいんです。
 
『Gメン』出演が意外だと思われたようですが、30代で高校生役のオファーが来るなんてこの先ないだろうと思い、逃したくないので出演を決めました。
 
――確かに意外性がありました。
 
高良
:映画出演を決めるきっかけはご縁もあります。僕が熊本にいた頃によく通っていた映画館があるのですが、昨年、その映画館の館長役のオファーをいただき出演しました。出演シーンが短いので「よく出てくれましたね」と言われたのですが、地元の思い出が詰まった映画館の館長の役なんて、もう出会うことはないでしょう。貴重なオファーだと思って引き受けました。
 
作品の内容、スタッフやキャストなども出演作を決める上で大切ですが、プラス、二度とできない役も離したくないんです。

――俳優個人の役への思い入れもある……ということを考えると、俳優さんが自分で出演作を決めるのは理解できます。
 
高良
:それに他人を演じるのが仕事である俳優は本当にハードな職業なんです。だからこそ、演じる役は自分が納得した役を受けて、自分の責任において全力で演じたいと思っています。
 

ものづくりの職人たちは面白い人ばかり

罪と悪

(C)2023「罪と悪」製作委員会 PG12

――インタビューすると俳優さんの多くが高良さんと同じように「俳優は心身共に削られる仕事で、とても大変だし厳しい仕事」とおっしゃいます。でも、どこかに演じる醍醐味を感じていらっしゃるのではないかと思うのですが、この仕事の魅力はどこにありますか?
 
高良
:ものづくりの世界にいる人は面白いんですよね。虚構の世界でリアル以上の真実を生み出す人たちですから、確実に面白い人しかいません。そういう人たちに出会えて、会話をするのがまず楽しいです。
 
そもそも普通に生きていても、みなさんもどこかで演じていると思います。それは自分をよく見せたり、気を遣ったり“自分自身”を演じている。でも俳優は他人になるわけです。
 
他人に目を向けて、心を預けて、その役がどういう風に生きてきたかを考えるのが俳優の仕事ですが、役が殺人犯だったり、殺されたり、愛する人を失ったり奪ったり……という場合もあるので、楽しい気持ちにはなれず、心が苦しいこともよくあります。
 
――確かにそうですね。
 
高良
:でもそうやって役のキャラクターや生き様を考えているうちに、社会の矛盾に気付いたり、そのことについて調べたり、考えたりして、思考することが増えていく。それも俳優業の面白さの1つだと思います。

――将来、俳優としてどうありたいですか?
 
高良
:俳優としてどうありたいかは、人としてどうありたいかに直結するのですが、自分のやっていることに正直でありたいです。嘘が必要なこともあるので、それは否定しませんが、自分に対して常に正直でありたい。ずるい人になりたくない。世間とズレがあっても、僕は自分の生き方を曲げたくない。こういう生き方しかできない男なんです(笑)。
 

2024年は俳優生活20周年!

「罪と悪」高良健吾

自分に正直に、ずるい人になりたくないと語る高良さん

――本作では、20年前に犯した罪と向き合う春ですが、高良さんは2023年にやり残したり、やってしまった!と後悔したりしていることはありますか? 
 
高良
:やり残したことはないです。やり切った感があります。僕は2024年で俳優生活20周年なんです。普通なら「頑張りたい!」というところですが、自分を見つめ直す時間を増やしたいと考えています。
 
――では最後に完成した『罪と悪』の感想をお願いします。
 
高良
:地方の小さな町の話ですが、スケールの大きな映画だと思います。監督と俳優たちが密にコミュニケーションをとり、主人公たちの空白の時間にそれぞれがどう思っていたのかをキャラクターに落とし込みながら、作品を完成させたことに感動もしました。この映画で描かれる世界は、社会の闇を捉えている。今の時代だからこそ、ぜひ劇場でご覧ください。
 

高良健吾(こうら・けんご)さんのプロフィール

1987年11月12日生まれ。熊本県出身。2006年『ハリヨの夏』で映画デビュー。2011年『軽蔑』で第35回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2021年『苦役列車』で第36回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。2013年『横道世之介』で第56回ブルーリボン賞主演男優賞、第23回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞。ほか『蛇にピアス』(2008)『あのこは貴族』(2021)に出演。最新作は『レイニーブルー』(2024)、配信ドラマ『忍びの家 House of Ninjas』(2024年2月15日配信開始/Netflix)。
 

『罪と悪』2024年2月2日より全国ロードショー

罪と悪

(C)2023「罪と悪」製作委員会 PG12

何者かに殺された14歳の少年。同級生の春(高良健吾)、晃(大東駿介)、朔(石田卓也)は、犯人だと確信した人物を追い詰め、1人がその男の命を奪ってしまう。それから20年後、かつての事件と同じような殺人事件が起こり、3人は再会。そして過去の事件と向き合うことになる……。
 
監督・脚本:齊藤勇起
出演:高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、佐藤浩市(特別出演)、椎名桔平

撮影・取材・文:斎藤 香
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