年金の繰下げ受給とは、原則65歳から受給開始となる年金を受け取らずに、開始を遅らせる(繰下げる)ことで、もらえる年金を増やす制度です。1カ月繰下げすれば年金が0.7%増えます。仮に70歳まで繰り下げると年金は42%増え、75歳まで繰り下げると年金は84%も増額します。しかし、すべての年金が、繰下げ受給の対象になるわけではありません。
今回は、年金の繰下げ受給をしても増えない年金3つをご紹介します。
年金の繰下げ受給をしても増えない年金1:加給年金
加給年金とは、厚生年金保険に20年以上加入している厚生年金者に一定条件を満たす配偶者や子どもがいる場合、老齢厚生年金に加算される家族手当のような年金です。たとえば夫が老齢厚生年金をもらう際、条件を満たす妻がいれば、加算される加給年金の年額は39万7500円(2023年度)です。
仮に、妻が5歳年下の60歳であれば65歳までの5年間が加給年金の対象となり「39万7500円×5年=198万7500円」が夫の老齢厚生年金に加算されます。
この加給年金は、老齢厚生年金に加算されるものであるため、厚生年金を繰下げすれば、加給年金もセットで繰下げされますが、加給年金は増額されません。さらに、加給年金は、配偶者が65歳になれば終了する年金です。もし、加給年金のことを知らずに、夫が繰下げ受給をしてしまうと、本来もらえるはずの加給年金がもらえなくなってしまいますので注意しましょう。
年金の繰下げ受給をしても増えない年金2:振替加算
振替加算とは、加給年金額を受け取っていた厚生年金加入者の年下の配偶者が65歳になり、加給年金額が支給停止になる代わりに、加給年金対象だった年下の配偶者が受け取る老齢基礎年金に上乗せされる年金です。たとえば、1966年4月1日以前生まれの年下の配偶者(妻)が65歳で老齢基礎年金を受け取るようになったときに振替加算が加算されます。
しかし、妻が老齢基礎年金を繰下げ受給する場合は、振替加算も受取ることはできません。さらに、振替加算は繰下げ受給の対象外となるため増額もされません。
年金の繰下げ受給をしても増えない年金3:特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金とは、男性であれば1961年(昭和36年)4月1日以前、女性であれば1966年(昭和41年)4月1日以前生まれの人が、厚生年金保険等の加入期間等の要件を満たした場合、65歳よりも早く受け取れる老齢厚生年金です。1985(昭和60)年に法律改正があり、老齢厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。特別支給の老齢厚生年金は、その法改正に伴い、受給開始年齢を段階的に、スムーズ行うために設けられた制度ということもあり「繰下げ制度」はありません。
参照:日本年金機構 「繰下げの注意点」