俳優は孤独な仕事
――キャリアについてお聞きしたいです。古川さんは学生時代から演劇部でお芝居をされていたそうですが、大学を卒業して俳優の世界に飛び込んだのは、やはりお芝居への情熱ですか?古川:当時は、まさか本当に俳優になれるとは思っていませんでした。私はステージに立つのが好きなんです。中学校で演劇部に入る前はバレエをやっていたのですが、そのときも発表会に出るのが大好きでした。同じようなことを部活でできないかなと考えて、演劇部なら舞台に立てると思い入部したんです。だから今でも舞台は好きだし、続けたいと思っています。
――実際に俳優を職業にして、改めて思うことはありますか?
古川:俳優の仕事は孤独だなと思います。特に映画やドラマなど映像の仕事はセリフを覚えたり、役の気持ちを考えたり、いろんな要素をつなぎ合わせて役作りをしていくのですが、それが正解かどうかはクランクインの日に、監督の前でお芝居をしたときに初めて分かります。
監督にもよりますが、芝居について俳優に託している部分もあるので、自分の役は自分の責任です。撮影現場にはスタッフさん、共演者の方もいて、みんなで楽しく会話もしますし、協力してひとつの作品を作っているのですが、そんな中でも俳優は孤独な仕事だと思うことはあります。
――孤独な仕事でも魅力を感じていらっしゃるんですよね。
古川:演じているときに、自分の想像を超えるような感情が出てくることがあり、その瞬間を味わいたくて続けているのかもしれません。
それは私ひとりだけで生まれるものではなく、共演している俳優さんのお芝居や、スタッフさんの動きなど、作品に関わる人のすべてがピタッとハマる瞬間が来たときです。不思議なことにそのときの記憶はなく、すごい瞬間だったという感情だけが残っていて、それがすごく楽しいんです。
素敵なおばあちゃんになりたい
――将来のキャリアについて考えていることはありますか?古川:お芝居に限らず、年を重ねて、素敵なおばあちゃんになりたいと思っています。お気に入りのバーがあるのですが、そこはおばあちゃんがひとりで経営しているんです。お店にきれいな女性のモノクロ写真が飾ってあって、たぶんその写真の女性はお店のおばあちゃんの若い頃だと思うんですよね。
私もそのおばあちゃんみたいになりたくて。おばあちゃんになっても自分の生き方を愛せるようになりたいし「今はしわくちゃだけど、昔は女優で、こんなにピチピチしていたのよ」って言いたい(笑)。
――All Aboutでは、皆さんに好きな映画について聞いているのですが、何か思い出の映画や最近見て印象に残った映画などについて教えてください。
古川:いちばん最初に好きになった映画は『E.T.』です。幼稚園くらいのときに再上映があって、親に連れていってもらいました。本当にE.T.がいると思い込んでいたんですよ。
あとこの映画を通して、友情を学んだというような感覚がありましたし、自分のイマジネーションの根幹を作ってくれたのは、『E.T.』だと思います。映画の中でエリオット(主人公)と一緒に冒険をしたというのが、いい思い出として残っています。
古川琴音(ふるかわ・ことね)さんのプロフィール
1996年10月25日生まれ。神奈川県出身。2019年、映画『十二人の死にたい子どもたち』のメインキャストを演じて注目される。2020年にNHK連続テレビ小説『エール』に初出演。第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作『偶然と想像』(2021)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)、『スクロール』『リボルバーリリー』(いずれも2023)など出演作多数。近作は『雨降って、ジ・エンド。』『言えない秘密』(いずれも2024)。『みなに幸あれ』2024年1月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ他、全国ロードショー
看護学生の孫(古川琴音)は、田舎に住む祖父母に会いに行くことになります。久しぶりの再会はうれしく、楽しい時間を過ごしますが、どこか違和感を感じていました。その違和感は日に日に大きくなり、彼女は村の人間の行いに恐怖を覚えるように……。監督:下津優太
出演:古川琴音、松大航也
撮影・取材・文:斎藤 香
スタイリスト:藤井牧子
ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER)
衣装
黒ドレス、ブーツ:scai/sacai.jp
アクセサリー:mamelon/@mamelon