普通のグミと見分けがつかない「大麻グミ」。危険ドラッグを知らずに口にしてしまう恐れも(画像はイメージ)
大麻が合法化された諸外国で健康被害が相次ぎ問題となった「大麻グミ」が、最近日本でも出回るようになりました。口にした人が体調不良を訴え、緊急搬送される事件が増加しています。
11月3日、東京で20代の男女4人が東武スカイツリーラインの電車内で突然体調不良になり、病院に緊急搬送されました。電車に乗る前に「大麻グミ」を食べたとのことです。また、翌11月4日には、東京都小金井市の武蔵野公園で開催された「武蔵野はらっぱ祭り」で、10~50代の男女5人がやはり体調不良を訴え、病院に搬送されました。同じ祭りに参加していた40代の男性が配った「大麻グミ」を食べたのが原因で、グミが入った袋には「HHCH」と記されていたようです。
HHCHとは……大麻の主成分「THC」同様の精神作用・毒性リスクも
「HHCH」は、「ヘキサヒドロカンナビヘキソール」という合成化合物の略称です。法規制の対象となっている大麻の主成分は「THC(テトラヒドロカンナビノール)」ですが、HHCHはTHCに似ているものの、ほんの少しだけ化学構造を変えた新しい合成品(合成カンナビノイド)です。THCと同等あるいはさらに強い精神作用や毒性を示す可能性があるにもかかわらず、まだ法規制されておらず、いわゆる「危険ドラッグ」に相当していました。「危険ドラッグ」は、麻薬・覚醒剤・大麻などすでに法規制されている薬物のことではありません。人の手によって新しく合成された薬物が、「まだ法規制されていないから平気」というだけの理由で無断で製品に添加されて販売されているケースを指します。そうした薬物は、実績が乏しく、使うと何が起きるかもわかっていないわけです。それらを人に売りつけたり譲ったりして使わせることは、人体実験に他ならないもので、決して許される行為ではありません。また、それを安易に食べたり、使ったりしてしまう行為は、自殺行為だと認識すべきです。
規制が追い付かないから「違法でない」? 合法をうたう危険ドラッグに注意!
10年ほど前に、成分の定かでない薬物を混入させたハーブやアロマが「合法」とうたって販売され、それを使った人が車を暴走させたり、人に襲いかかったりする事件が相次ぎ、大きな社会問題となったことがあります。一見下火になったと思われていた危険ドラッグが、また出回るようになってきたのです。特に、大麻に対する規制が強化されるようになり、大麻の代わりに、大麻成分と似ているけれど厳密には少し違う化合物を作り出して、「まだ法律では規制されていないものだから使っても違法ではない」とのふれこみで、堂々と売り出す業者も出てきています。今回の祭りで出回ったグミも、まさに危険ドラッグ製品の一種なのです。大麻グミは、得体の知れない薬物が混入された「危険ドラッグ」に他なりません。見かけはお菓子と区別がつきませんので、よくわからないまま大量に食べると危険極まりないものです。多くの大麻グミは、インターネットなどでも簡単に買うことができ、大麻に含まれていながら法規制の対象外とされているCBD(カンナビジオール)を含んでいて、「リラックスできる」など健康にいいかのように宣伝されているものもあります。しかしCBD以外にも、今回問題となったHHCHなどの新成分も含んでいるものがありますので、食べるべきではありません。
海外では、親が買ってきた大麻グミを自宅に置いていたところ、幼い子どもがそれを食べてしまい尊い命が失われるという悲しい事件も起きています。ハロウィンで配られたお菓子の中に大麻グミ(袋から出したものは普通のグミと区別がつかない)が混じっていたという事例や、野外コンサート中に配られた大麻グミで何十人もが倒れるといった事件も起きています。今回の事件は、私たちの身近なところに危険ドラッグが忍び寄っていることを物語っています。他人事ではありません。みなさん十分に注意してください。
なお、2023年12月2日に、HHCHは指定薬物として法規制されました。
さらに詳しく知りたい方は、「『違法ではない』のに、なぜ『危険』? 極めてハイリスクな危険ドラッグとは」を、あわせてご覧ください。