結論を決めつけがちな“今”に一矢を放つ作品
――『花腐し』は、2人の男が1人の女性を愛し、それぞれとの関係を描いていますが、最後の余韻が深く、ラストシーンの意味などいろいろ考えさせられました。綾野さんはどういう解釈をされましたか?綾野:感じたことをそのまま受け止めてくだされば十分です。そこに僕が横槍を入れることなんて、とてもできないです。見た方の感想がすべてで、その気持ちを大切にしていただきたいです。 ――綾野さんとしては、どう思われても観客それぞれの感想が一番大切ということなのですね。
綾野:そうですね。見方を指定した上で楽しむ作品もありますが、そういう作品の面白さとはまた違い、『花腐し』は、断定せず、物語は至ってシンプルですし、見方、感じ方、捉え方は、見てくださる皆さんの心で育んでいただけたらと思います。
芝居の面白さを知るのはこれから……
――綾野さんのキャリアや仕事観についてお伺いしたいです。まず、さまざまなタイプの作品に出演されていますが、オファーを受けるとき、基準となるものはありますか?綾野:僕は基本的にスケジュールが被っていなければというスタンスです。俳優が出演作を選んでいると思われがちですが、俳優部という一部署として“選んでいただく”という気持ちです。
ただ準備が必要なので、自分が依頼された仕事に対してきちんとお応えできる状態で臨みたい。やはり準備を万端に整えて取り組みたいですね。
――綾野さんの俳優のスタートは『仮面ライダー555』(2003)ですよね。当時を振り返るインタビューで、石田秀範監督にすごく感謝しているとおっしゃっていましたが、この頃から芝居の面白さに目覚めたのですか?
綾野:芝居は初めてでしたので、芝居を続けようとするのと、面白いと体感できるのとはまた別でしたね。芝居の本当の面白さに触れるのはこれからだと思います。 ――芝居をどういうふうに捉えていますか?
綾野:大好きです。準備も撮影も大変ですから、面白い、楽しいという気持ちだけでは続きません。作品におけるすべての過程を愛しきれると思えるから、今でも役者でいられます。
素直に芝居が好きですし、撮影現場も、作品に関わるすべてが好きなんです。出演作ごとに、好きという出会いが増え、作り上げた作品が、皆さんの日々を少しでも豊かにできるのであれば幸いです。それが存在意義です。
――「芝居が好き」という気持ちは、最初のドラマで芽生えていたんですか?
綾野:デビュー作のときは「始めよう」だけでした。石田監督からいただいた役者としての息吹を絶やさない。そんな思いで走ってきましたから。好きという気持ちに気付けたのは少し先でした。
>次ページ:綾野さんが描く青写真は