子どもはかわいいけど自分の時間も必要
しばらくたってから、夫が子どもたちに「土曜の午後はママの休みということにしようか」と言ってくれた。もちろん、家族の予定があったり、仕事や実家がらみの用があったりするときは別だ。何もない場合に限ってという条件つきではあるが「ママの休み」が決まった。「その代わり、夫は平日、飲みにいかなかった週は日曜の午後に休める。平日、飲みに行っていたときは話し合いで決める。お互い、ゆるやかに対処していこうということになりました」
今年春から、土曜日の午後の数時間を、ノリコさんは子どもたちのことも夫のこともいっさい気にせず、自分だけのために使えるようになった。それが家族に認められているというのがうれしいと彼女は顔をほころばせた。
「最初はひたすら昼寝をしていましたが、それも数回やってみると満足しました。次は何か勉強したいと思うようになったんです。いろいろな大学の公開講座に参加したり、カルチャーセンターの体験をしてみたり。今の仕事にプラスになることか趣味の分野かと悩みましたが、結局はキャリアに通じるものをと土曜日だけの講座に通うことにしました。仕事そのものというよりは仕事に関係する経済や社会問題などを学んでいます」
「ママの休み」の副産物
夫も触発されたのだろうか。平日の飲み会が減り、日曜の午後はスペイン語を習い始めた。少しでもしゃべれるようになると、仕事上有利なのだという。やろうやろうと思いながらできなかったんだけどと夫は照れたように言った。「講座が休みのときは友だちとランチに行ったり、ひとりで図書館に行ったりすることもあります。そうそう、先日は講座の帰りにひとりカラオケで絶叫してきました。少し遅くなっても、土曜日は夫が夕飯も作ってくれるので気持ちが楽です。最近は上の子が料理に興味をもっているようで、それも楽しみですね」
ひょんなことから家族がまとまっていると感じるようになったのは、「ママの休み」の副産物だとノリコさんは言う。
「そのうち子どもたちはそれぞれ好きなことを始めるでしょうから、今を楽しめればいいねと夫とも話しています。ママが休みをとれるかどうかは、夫婦の関係がどれだけ強固かを考える試金石になるのかもしれませんね」
夫婦が互いに横を向いていたら、家族は団結できない。
「いい夫婦より、楽しい家族を目指したい」
ノリコさんは満面の笑みでそう言った。