飽きっぽい私にピッタリの仕事
――キャリアのお話も伺いたいのですが、10代の頃から芸能界でお仕事をされて、本作の久万監督や多くの先輩たちから影響を受けてきたというお話がありましたが、若い頃と今とで俳優の仕事への向き合い方の変化はありますか?貫地谷:若い頃は「あの役もやりたい、この役もやりたい」と結構貪欲でした。でも年齢を重ねてきて、たとえば俳優仲間が引退して別な仕事に就いて充実した日々を送っていることを知ったり、私自身も結婚をして私生活が変わったり、環境や周囲の人の変化によって、視野が広がったと感じます。
30歳を過ぎてから、自分の可能性はこの世界だけではないと思えるようになりました。だからと言って、今すぐ何かを始めるというわけではないんですけどね。 ――若い頃はハングリー精神も必要ですが、いい感じに変化していったんですね。この仕事を長く続ける秘訣というか、楽しさはどこにありますか?
貫地谷:この映画の取材で、小野武彦さんと合同インタビューを受けたとき、小野さんが「自分は飽きっぽいが、唯一続いているのが役者の仕事です」とおっしゃっていたんです。それを聞いてハッとしました。
私もすごく飽きっぽいので「だからこの仕事を続けていられるんだ」と思ったんです。毎回、役は違うし、撮影環境や関わる人も変わるので、そういう変化が刺激になって続けていられるのかもしれないと思いました。
自分を充実させることを最優先に考える
――今後、俳優としてこうありたいなど、思い描いていることはありますか?貫地谷:『シェアの法則』で小野さんはじめ、先輩方と共演して改めてスクリーンに人生が映し出されることが分かったので、自分自身を充実させることを最優先にしたいと思います。
私生活を大切にしながら、お仕事の依頼があったら全力で取り組んでいく。できるだけ細く長く俳優を続けていきたい。
昔はお仕事が途切れると不安になったんです。でも今は、一つひとつの仕事が人生のピースだと思って、途切れたら「私のための時間ができた」と考えるようになりました。仕事も人生も充実させていきたいです。
貫地谷しほり(かんじや・しほり)さんのプロフィール
1985年12月12日生まれ。東京都出身。2002年に映画デビュー。2004年『スウィングガールズ』で注目を集める。以降、映画、ドラマ、舞台で活躍。NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』(2007)、映画『くちづけ』(2013/第56回ブルーリボン賞主演女優賞受賞)。近作は、『総理の夫』(2021)『サバカン SABAKAN』(2022)『オレンジ・ランプ』(2023)、ドラマ『大奥』(2023/NHK)など。『シェアの法則』2023年10月14日(土)公開
春山夫妻が自宅を改装して始めたシェアハウスには年齢も職業も国籍もバラバラの人たちが暮らしています。住人にとって大家さんの喜代子(宮崎美子)はお母さんのような存在。しかし、ある日、喜代子が交通事故に遭い入院してしまいます。代わりに大家の仕事をすることになったのは、夫の秀夫(小野武彦)。人と接することが苦手な秀夫は、住人たちとうまくいかない。そんな中、住人のひとりである美穂(貫地谷しほり)が勤務先でトラブルを起こしてしまい……。監督:久万真路
出演:小野武彦、貫地谷しほり、浅香航大、鷲尾真知子、宮崎美子
撮影・取材・文:斎藤香