Q. なぜ人は怖い話を聞きたくなるのでしょうか?
怖いのに見たい、聞きたい…なぜ「怖いもの見たさ」の気持ちがあるのでしょうか
怖い話や恐怖映画などは、なぜ人気なのでしょうか? 実は私たちが怖い話を求めてしまうのは、あらゆる動物が生きていく上で重要な、脳のはたらきが関係しているのです。
Q. 「怖い話や怖い映画が好きなのですが、なぜわざわざ不安になったりドキドキしたりする気持ちを求めてしまうのでしょうか?」
A. 「怖いもの見たさ」は生きていく上で重要な、人間以外の動物にもある感情です
「怖い」という気持ちは、何かに対して「危害を加えられそう」「自分にとって悪いことが起こりそう」という予感を感じ、できれば「近づきたくない」「避けたい」と思う感情ですね。しかし、対象物が何かわからないままだと「不安」な気持ちはずっと残り、私たちの脳は落ち着かなくなります。不安で落ち着かない状態を解消するには、それが何なのか、嫌でもしっかりと見たり聞いたり触れたりして、実体を明らかにし、理解する必要があります。それが「怖いもの見たさ」という行動につながるのです。これは人間だけでなく、他の動物も同じです。すべての動物は危険から命を守るために、常に周囲の変化に注意を払い、それが何であるかを認知していかければなりません。生きていくために必要な機能で、主に「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」という脳の領域が担っています。
たとえば、犬や猫の目の前に未知の物体を置くと、最初はびっくりして、飛び上がって逃げたりします。おそらく得体が知れないので、「怖い」という感情が湧くのでしょう。しかし逃げて終わりにはしません。怖いからこそ気になって仕方ないのでしょう。間もなく、やや遠く離れたところからそれが何なのか注視して観察を始めます。そしてそれほど危険ではないと分かると、少しずつ近づいて、恐る恐るその物体に触れて、それが何かを確かめようとする行動をとります。その結果、場合によっては、その物体が気に入ってしまうこともあります。「話を聞く」というのは、言語を扱う人間しかできないことかもしれませんが、「未知なるものに興味を示してその実体を知ろうとする」という行動そのものは、人間と動物に共通した本能であって、自然なことなのです。
また、私たちは行動して得られた結果を学習することもできます。未知なるものに対して「怖い」という気持ちを持つだけで終わらせず、勇気をもってチャレンジして解明することができれば、新しい知識を得ることにもつながり、さらに未知なるものに対峙していくこともできるようになります。つまり未知なるものに挑戦して成功体験を重ねていく中で、怖さに対する「ドキドキ」は、何かに挑むときの「ワクワク」にもなります。これも、怖いものを自ら求める行動につながるのではないでしょうか。
ですから、「怖い話を聞きたくなる」というのは、好奇心の表れでもあり、良いことだと思います。
意外かもしれませんが、「怖い話を聞きたい」という気持ちは、
- 科学者が未知のテーマに取り組んで、現象を解明したり、新しい技術を開発すること
- 探検家が、前人未到の地に足を運ぶこと
- 芸術家が新しい作品に挑戦すること
みなさんも、いろいろな未知なることに、果敢に挑戦していってください!
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