お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

54歳の夫婦、貯金1800万円。今の仕事を55歳で退職したいと考えていますが、可能でしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、54歳のご夫婦で、現在の仕事を55歳で退職したいと考えているとのこと。55歳以降の働き方や生活について知りたいといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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夫は長年の激務で、体力、メンタルともぎりぎりの状態です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、54歳のご夫婦で、現在の仕事を55歳で退職したいと考えているとのこと。55歳以降の働き方や生活について知りたいといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
夫婦で退職を希望しています

夫は激務、夫婦で退職を希望しています

■相談者
もふもふもさん
女性/パート・アルバイト/54歳
関東/持ち家(マンション)

■家族構成
夫(会社員/54歳)、子ども(28歳、22歳)

■相談内容
はじめまして。いつも大変参考にさせていただいております。質問者の気持ちに寄り添った温かいアドバイスに、いつも心癒やされます。

54歳同士の夫婦です。2人とも、来年55歳で現在の会社を辞めたいと考えています。55歳以降の生活、働き方について、アドバイスいただければと応募させていただきました。

夫は長年の激務で、体力、メンタルともぎりぎりの状態です。これ以上続けば、大袈裟でなく死んでしまいそうで、見ていてつらいです。私のほうは、業界の状況がめまぐるしく変わり、これまでのようなやりがいのある仕事が望めそうになくなってしまいました。これを機に、違う業界を探したいと考えています。夫は早期退職になるので、退職金が少し上乗せで1500万円くらいになりそうです。私はパートなので、退職金は一切ありません。

貯蓄型の保険に入っており、10年後に解約すると1000万円くらいになりそうです。現在の貯蓄、退職金、保険の解約返戻金の合計で4300万円くらいの資産を見込めそうです。自宅はすでにローン返済済みです。

この状態であまり働かず、パートやアルバイトで年金開始までしのぐことは可能でしょうか。夫はもう正社員を目指すことは考えられないと言います。私自身もパートやフリーランスとして働きたいと考えています。

退職後の年金と健康保険はどうするのが一番よいのでしょうか。夫婦それぞれ、任意継続にして、元の会社で払い続けるべきでしょうか。子どもの扶養に入れてもらうのは、少し気がひけてお願いしにくいです。しかし、夫婦それぞれ国保に入るのはもったいない気がしてなりません。夫婦どちらかが厚生年金に加入するような働き方をして、片方を扶養に入れたほうがよいでしょうか。

年金まであと10年、どのぐらいの収入があれば、将来枯渇せずに100歳くらいまで持ちこたえられるでしょうか。長生きリスクが怖くてたまりません。なんとか子どもたちに迷惑をかけず、現在の貯蓄と年金で生きていきたいと考えています。年金は夫婦合わせて年300万円(夫210万円、妻90万円)くらいです。

お忙しいところ恐縮ですが、アドバイスいただけると幸いです。

■家計収支データ
相談者「もふもふも」さんの家計収支データ

相談者「もふもふも」さんの家計収支データ

■家計収支データ補足
(1)ご家族、お子さんについて
第1子は正社員です。毎月3万円を生活費として入れてくれています。ただ、その3万円は将来の結婚費用などのために、2万円追加して5万円ずつ貯めています。将来、子どもに贈与予定なので、私たちが使えるお金ではありません。第2子は大学生です。学部の都合で今年を含めて3年間、年間120万円ほど必要(家計収支データの教育費に計上)。

(2)ボーナスの使い道について
車検20万円、家電など20万円、旅行20万円、冠婚葬祭10万円くらい。残りの130万円は貯金です。今年7・12月のボーナスの残りは定期預金に入れる予定です。

(3)毎月の貯蓄額
NISA制度による積み立てやiDeCo、その他投資商品による積み立て、子どものために普通預金に積み立て毎月5万円を行っている。毎月の積立額は合計で18万3333円。

(4)住居費について
4万円の内訳は、管理費・修繕積立金・駐車場代(まとめて約3万円)と固定資産税の月割り。

(5)車両費について
所有台数は1台です。月1万円の内訳は、車両税・車両保険・ガソリン代を月割りにしました。現在の車はすでに10年以上で、本当は今年買い換えるつもりでしたが、夫の仕事の将来が不明なため見送りました。3年後くらいに買い換えたいです。予算は300万円くらい。

(6)加入保険について
夫/
収入保障保険(60歳まで保障、死亡時に毎月20万円)60歳で終了=毎月の保険料7860円
低解約返戻金型終身保険(60歳まで払い込み、死亡保障700万円、2030年頃の解約返戻金額540万円くらい)=毎月の保険料2万9600円

妻/
低解約返戻金型終身保険(60歳まで払い込み、死亡保障300万円、2030年頃の解約返戻金額200万円くらい)=毎月の保険料1万1630円

夫婦/
医療保険(終身保障、夫60歳まで払い込み、入院日額1万円)=毎月の保険料1万5100円
がん保険(終身保障、終身払い、入院日額1万円、その他一時金など)=毎月の保険料4360円

その他の保険=月2000円くらい

※あと、すでに払い込み済みの低解約返戻金型保険があります(妻)。死亡保障500万円で、利率1.75%で良い保険なので、解約せずにおいています。70歳くらいで解約すると380万円くらいになります。

(7)働き方について
夫についてはよくわかりません。休養したらまた働く気持ちが湧くかもしれませんが、とにかく正社員の就活はしない、とのことです。私は現在もパートなので、今後もパートになると思います。週3日など、短時間の労働であれば70歳近くまで、なんらかの仕事ができればいいなと思います。

(8)退職後の生活費について
退職後、家計支出で交通費、服飾費が削れそうです。食費はできればあまりけちけちしたくないです。夫はゴルフが好きなので、元気になれば、またやりたいと思うかもしれません。

■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 いったん仕事は辞めて、まずは家計を整える
アドバイス2 生活費は月20万円の削減を目標にする
アドバイス3 貯蓄を残すために、夫婦で年間200万円の収入を

アドバイス1 いったん仕事は辞めて、まずは家計を整える

来年を待たず、夫は今すぐにでも会社を辞めることを考えてください。体を壊してしまったら、元も子もありませんよ。ご相談者は来年まで待てるなら、それでも構いませんが、夫婦ともに、いったん休養を取られたらいかがでしょうか。基本手当(失業等給付)がありますから、半年程度は、それほど家計に影響はないでしょう。その間に、その後の生活の変化に対応できるように家計を整えてください。

まずは、保険です。貯蓄性のある保険に複数加入していますが、今後は収入が減ること、子どもは成人していることを考えると、現在の保険は払い済みにして、家計からの保険料の支払いは最小限にする必要があります。

夫の終身保険と妻の終身保険、すでに払い済みの保険もあり、これらの解約返戻金を合計すると1120万円になります。収入保障保険と終身保険は満期まで保険料を払い込むのではなく、現時点で払い済みとし、適宜、時期をみて解約していくようにしてください。解約返戻金の総額は、700万円程度になってしまうかもしれませんが、これから払い込む保険料総額を考えれば、大きな損ではありません。医療保険も割り切れれば解約。金融資産があるので、入院・ケガの治療費は十分カバーできます。

また、現在、NISAやiDeCoで積み立てをされていますが、これも一時ストップしましょう。子どものための貯蓄は大事ですが、これも一度ストップしてください。これらは、のちのち、何らかの仕事について、収入のめどがついた段階で再開すればいいでしょう。

退職すると、いろいろな手続きに追われるかもしれません。ゆっくりで構いませんので、保険や積立投資の手続きも忘れずに行うようにしてください。

アドバイス2 生活費は月20万円の削減を目標にする

現在、金融資産は貯蓄と投資を合計して1800万円あります。これに退職金1500万円、保険の解約返戻金(解約の時期は違ったとしても、おおよその金額)が700万円で、合計4000万円になります。ただし、教育費が年間120万円、3年で360万円。余裕をみて400万円かかりますから、残りは3600万円ということです。

仕事を辞めてから公的年金の受給が始まる65歳までの約10年間。生活費は持ち出しになりますから、支出の見直しも重要です。

現在の毎月の支出は約45万5000円。ここから20万円の削減を目標とします。保険を見直し、解約をすれば最大で7万円が浮きます。教育費は毎月10万円を計上していますが、3年で400万円を計算上は差し引いていますから、家計からはなくなります。さらに雑費、食費、こづかいの合計が18万円です。どう削減しても構いませんので、この3項目で3万円は減らしてください。これで合計20万円の削減が可能になります。

毎月の支出を25万円に抑えられれば、年間300万円、10年間で3000万円の持ち出しになりますが、65歳時点で600万円は残ることになります。

アドバイス3 貯蓄を残すために、夫婦で年間200万円の収入を

以上は、今後、一切仕事をしない前提での概算です。しかしながら、完全リタイアを望んでいるのではなく、心身ともに回復すれば、パート・アルバイト的な働き方を考えておられます。

たとえば、無理なく働けるようでしたら、夫婦2人で年間200万円の収入があれば、10年で2000万円は貯蓄の取り崩しをしなくてもいいことになります。65歳時点で2600万円残せれば、その後は公的年金がありますので、取り崩しのスピードを遅くすることができます。夫婦2人で年金の見込み額が300万円。手取りで255万円程度です。支出が年間300万円のままであれば、45万円が不足しますが、2600万円がゼロになるのは47年後。つまり、生涯、金銭的に困ることはありません。

年間300万円の収入があれば、さらに貯蓄の取り崩しは減らせます。ですから、考え方として、すぐに仕事を辞めて休養を十分に取ったあとは、夫婦で200万円、300万円を得られる働き方を10年すればOKということです。もしも、2、3年は休みたいということでしたら、67歳、68歳まで働くということです。いかがでしょうか?

収入のめどがたち、心身回復したら、ぜひゴルフを再開なさってください。ただ、車の買い換えが控えています。3年後は250万円の予算に抑え、その後、もう一度買い換えるときは予算200万円に。合計450万円は貯蓄から出て行きますので、その点は気をつけてください。

最後に、年金と健康保険について。ご主人は退職後、すぐに国民年金への加入手続きを。ご相談者は、できれば厚生年金に加入できる勤務先、働き方を検討してみてください。将来の年金を増やすためと公的な社会保障を得るためです。厚生年金に加入しないのであれば、夫婦それぞれが国民年金に加入することになります。

健康保険は、退職後1年は任意継続でいいでしょう。これまで会社と折半だった保険料は全額負担になりますが、現在の収入だと国民健康保険の保険料が割高になるかもしれません。2年目は夫婦ともに国民健康保険への加入になります。ご相談者が厚生年金に加入できる勤務先であれば、夫を扶養に入れることも可能でしょう。新しい勤務先に相談してみてください。

金銭的に万全とは言えないまでも、健康を取り戻したら働くという意思もおありですから、しばらくは十分な休養を取ってくださいね。

相談者「もふもふも」さんから寄せられた感想

深野康彦先生、ご助言をありがとうございました。

夫婦2人で200万円を10年間、と具体的な数字を挙げてくださり、これならなんとかなりそうと、気持ちを持ち直すことができました。保険の払い済みについて、そのような制度があることを今まで知らなかったので、大変参考になりました。年金、健康保険についてもクリアになりました。今すぐ仕事を辞めて休養してもいいと言っていただいて、本当に安心しました。夫にも伝えます。ありがとうございました。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子
 
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