不倫でもめる両親の姿に、子どもは何を思うのか
「大人ってバカだな」と思った
「私が高校生のときでした。父が、自分の経営する飲食店のアルバイト女性と関係を持っていると知ったのは」微笑みながらそう言うのは、カヤコさん(37歳)だ。20年前、父が家で使っているパソコンをいじっていたら、女性とのメールのやりとりを見つけてしまったのだという。
「それが甘ったるいやりとりだったんですよ、高校生でもあんなメールは書かないと当時思いました」
当時、父は40代、相手の女性はどうやら30代前半の独身だったらしい。
「彼女が、『あなたと一緒にいると安心する』『私が愛した唯一の人』なんて書いていて、父も『僕はきみといると感性が若くなる』なんて書いちゃって。しばらく母にも言わずに泳がせていたんですが(笑)、父の帰宅時間が遅くなる日が続いたので、なんとなく不倫の恋がいちだんと深まってしまったのかもと思って、深夜、父を私の部屋に呼んだんです」
いいかげんにしたほうがいいよ、まだお母さんは知らないけど、バレたら大変なことになるんじゃないのとカヤコさんは父親に言った。
「父は急にまじめな顔をして、『カヤちゃん、お父さん、本気なんだよ。浮気じゃないんだ』って。どうするのと聞くと、『でもお母さんやカヤちゃんとも別れたくない』と。そのとき付き合ってすでに2年くらいたっていたみたいですね。甘えたこと言ってると、おかあさんに捨てられるよと言っておきました」
父はお調子者で、母や娘に甘えてばかりいるような男。ただ、父が家族を大事に思っているのはわかっていた。小学生のとき、カヤコさんが友だちとケンカをして学校に行きたくないと言うと、父はつきっきりで話を聞いてくれた。明日はこうやって仲直りすればいいとアドバイスもくれた。友だちと仲直りできたとき、お祝いだからと週末は遊園地に行くぞと朝から晩まで遊びまくった。彼女や4歳違いの妹が風邪を引くと朝まで看病してくれた。
「そういうことがわかっているから、お調子者だけど無碍(むげ)にはできないんですよね」
父が浮気したことについて、高校生というむずかしい年齢でありながらカヤコさんに嫌悪感はわかなかった。こんなに楽しい人だから、一緒にいたいと思う女性が現れても不思議はないと自然と受け入れてしまったのだという。
「ただ、その後、母に疑われたのをきっかけに、父は相手の女性に誠心誠意、謝って別れたみたいです。1年は暮らせるだけのお金も渡したと。だけどその彼女、父と別れて3カ月後に結婚したらしい(笑)。ていよくお金を巻き上げられただけ。バカですよね」
結局、母もすべてを把握していたようで、それからしばらく、父は母の言うなりになっていた。
「私はなぜか客観的に両親を見ていましたね。離婚ということになるなら、それはそれで夫婦の問題だからしかたがない。でももし別れても、私は距離をとりつつ、両親それぞれと付き合っていっただろうなと思います」
こんなふうに大人の考えをもつ高校生もいるのだ。
>怒号が飛び交う家で育った女性