60歳代の貯蓄額の中央値は700万円で、老後に不安は残る
金融広報中央委員会が毎年調査している「家計の金融行動に関する世論調査2022年」(二人以上世帯調査)によると、二人以上世帯の平均貯蓄額は1291万円、中央値は400万円という結果になりました。そのうち金融資産を保有していると回答した人の平均貯蓄額は1698万円、中央値は750万円となっています。※ここでいう平均貯蓄額は、金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査2022年」(二人以上世帯調査)の「金融商品の保有額」のことです。金融商品の保有額とは、預貯金、貯蓄性のある生命保険、債券や株式、投資信託、その他の金融商品の総合計。ただし、預貯金に関しては、日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分を除いた「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」のみをカウントすることとしているため、銀行などの口座などに保有している金額のすべてではないことを、前置きとして付記しておきます。また、調査方法が変更になり、2019年~2021年の結果は不連続である点もあわせて付記しておきます。
では、年代別では、どうなっているかみていきましょう。
金融資産を保有していないと回答した人を含む全体の平均は1291万円(中央値400万円。以下カッコ内は中央値)ですが、20歳代では214万円(44万円)。年代が上がるにつれ、貯蓄額は増え、30歳代で526万円(200万円)、40歳代で825万円(250万円)、50歳代で1253万円(350万円)となります。60歳代以降に大幅に増加するのは、退職金のほか、住宅ローンが完済した、子どもの教育費負担がなくなったなど、支出が大幅に減った影響もあるでしょう。
ちなみに二人以上世帯の集計数は5000世帯で、世帯主の平均年齢は55歳、世帯手取り年収の平均は540万円(中央値494.5万円)ですので、全体の平均貯蓄額が多いと感じるのは、比較的、年齢が高めの層に引っ張られた格好になっているのでしょう。
金融資産を保有している世帯(3843世帯)のみの集計では、平均貯蓄額が1698万円(750万円)。年代が上がるにつれて貯蓄額が増えるのは同じで、20歳代で339万円(200万円)、30歳代で697万円(390万円)、40歳代で1132万円(500万円)となります。ただし、それでも平均には届かず、50歳代でも1684万円(810万円)にとどまっています。
60歳代の貯蓄額をみると、金融資産を保有していない世帯も含む集計で、中央値が700万円。金融資産を保有している世帯でも1270万円という結果で、公的年金で不足する分を考えると、老後資金としては、やや不安が残る結果といえるかもしれません。
年収500万円~750万円未満で平均貯蓄額は1226万円
では、年収別ではどうなっているでしょう。年収が高くなるほど、貯蓄額も増えていますが、平均年収の階層である500万円~750万円未満の世帯では、金融資産を保有していない世帯も含めた平均貯蓄額は1226万円(中央値500万円)。金融資産保有世帯のみでは1503万円(中央値700万円)となっています。
750万円~1000万円未満の階層では、金融資産を保有していない世帯も含めた平均貯蓄額は1787万円(900万円)、金融資産保有世帯のみでは2067万円(1134万円)。このあたりの数値になると、実感を持てない人も少なくないかもしれませんが、老後資金は暮らし方によって必要な金額は変わります。年収が高い層は、リタイア後も生活コストを下げることができず、貯蓄はいくらあっても足りないという状況に陥りがちです。
当たり前のことですが、貯められるときを逃さず、きちんと貯めることが大事で、現在の年収からどれだけ貯蓄に回せるのか、もう一度チェックしてみてもいいのではないでしょうか。
お金の貯めどきを逃さず、働き方を見直すことも老後対策のひとつ
二人以上世帯の場合、年代が上がるにつれ、借入金がある世帯が増えます。借入金があると回答した世帯は全体で20.4%ですが、20歳代で24.0%、30歳代では25.6%、40歳代では26.0%と増えていきます。子どもが生まれれば子どもの教育費がかかるようになり、住宅購入のための住宅ローンの借り入れもあります。その分、貯蓄に回せるお金が減ってしまうのはやむを得ない一面もありますが、いつまでその状態が続くのか、あと何年すれば貯蓄を増やしていけるのかも考えておくようにしたいものです。お金の貯めどきは、「独身時代」「結婚して子どもが生まれるまで」「子育てが一段落、または子どもが独立してから定年退職する」までの3回あります。20歳代、30歳代で世帯を持ったときが、お金の貯めどきです。子育て中であれば、子どもが学校に上がったら働き方を変えて収入増を図ることも考えましょう。
定年退職まであと10年などと先がみえてきたら、老後資金はあといくら必要なのか、60歳以降は再雇用、雇用延長で何歳まで働くのかなどのイメージを持つことも大切です。
平均貯蓄額などをみて、我が家はどうなのか、これからどんな貯蓄プランにするのか、考えるきっかけにしてほしいと思います。
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