Q.「ミネラルウォーターで薬を飲んではいけない」って本当ですか?

【薬学部教授が解説】薬は水か白湯で飲むことが大切で、コーヒーやジュースで飲んではいけません。では、水の一種であるミネラルウォーターはどうでしょうか? 実は種類によっては薬が体に吸収されにくくなり、期待する効果が得られなくなることがあります。わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q.「ミネラルウォーターで薬を飲んではいけない」って本当ですか?

ミネラルウォーターで薬を飲んではいけないのか

ミネラルウォーターで薬を飲んではいけないのか


薬を飲むときに、何気なくペットボトルのミネラルウォーターを使っている人は少なくないかもしれません。しかし、すべてのミネラルウォーターが薬を飲むのに適しているとは言えません。分かりやすく解説します。

Q.「普段ミネラルウォーターを飲んでいますが、薬を飲むときにはミネラルウォーターを使ってはいけないという話を聞きました。本当でしょうか?」
 

A. 硬水のミネラルウォーターや海洋深層水で薬を飲むのは避けましょう

一部のミネラルウォーターは、薬を飲むのに適しません。飲み薬は、水(もしくは白湯)で飲んだ場合に、最適な効果が得られるように用法用量が決められています。コーヒーやジュースなどの水以外の飲み物では、想定外のことが起こる可能性があるのでよくありません。ミネラルウォーターは水の一種ですから、問題ないように思われるかもしれませんが、一部のミネラルウォーターは注意が必要です。

ナチュラルミネラルウォーターは、地下水(淡水)を原水としています。地中でろ過されていく中で、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラル分が溶解して、自然に水に混じったものを、そのまま飲用として販売していますが、カルシウムやマグネシウムが薬の吸収を妨げてしまうこともあります。例えば、骨粗しょう症の治療に使われるビスホスホネート系薬物、細菌感染の治療に用いられるテトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン系抗菌薬などは、カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンと結合して、水に溶けにくいものに変化してしまいます。こうなると、せっかく飲んでも体に吸収されず、効果が得られないことがあります。すべての薬が影響されるわけではありませんが、薬ごとに影響があるかどうかを一般の方が判断することはほぼ不可能でしょうから、カルシウムやマグネシウムを多く含む水は、薬を飲むときの水としては、常に避けるようにした方がいいでしょう。

ミネラル含量の指標となる「硬度」は、主にカルシウム量とマグネシウム量を算定式に当てはめて求められ、その値は採水地によってかなり違います。日本では一般に硬度が100mg/L未満のものを「軟水」、100mg/L以上 300mg/L未満のものを「中硬水」、300mg/L以上のものを「硬水」と分類しているようです。ちなみに、日本国内の水道水の硬度は30~100mg/Lくらいで軟水に相当しますので、薬を飲むときに使って問題ありません。

特に注意が必要なのは、海外のミネラルウォーターです。中でも、イタリア産のクールマイヨールは硬度1612mg/L、フランス産のコントレックスは硬度1468mg/Lで、「超硬水」です。薬を飲むのには適しません。採水地が日本のミネラルウォーターはほとんどが軟水なので、問題ありません。しかし日本の製品の中にも、「硬水」であることを売りにしている商品もありますが、そのことがちゃんと表示されていますので、確認して薬を飲むときに使わないようにすればよいでしょう。なお、同じ日本産でも海洋深層水をミネラルウォーターとして売っている商品がありますが、それはあくまで「海水」で、ミネラル分が多く含まれています。海洋深層水はいずれも薬を飲むのには使うべきではありません。
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