Q. 犯罪行為をした人に病気が疑われる場合、どうなりますか?
病気による違法行為の責任能力とは
犯罪行為は許されることではありませんが、本来のその人の人格や性格、モラルとは関係なく、病気が原因で反社会的な行動をしてしまうことがあります。その場合、病気であることはどのように証明されるのか、解説します。
Q. 「万引きなどの犯罪行為をした人に、何らかの病気が疑われた場合、どうなりますか? 犯罪行為をした時点では病気だと診断されていなくも、罪に問われないのでしょうか?」
A. 専門医による検査や診断を受け、責任能力の有無が考慮されます
「Q. 病気が原因で、犯罪行為をしてしまうことはあるのでしょうか?」でも解説しましたが、病気が原因で、罪を犯してしまうケースは実際にあります。さまざまな精神疾患がありますが、一例として脳の病気の「ピック病」が挙げられます。この病気を発症すると、自己中心的・反社会的・非道徳的な行動を取ってしまうことがあります。私たちは脳の中の前頭葉という部分のはたらきのおかげで、感情をコントロールし、理性を保つことができていますが、ピック病では、この部位が損なわれることで、反社会的な行動につながるのです。
具体的には、それまでは通常のモラルを持って仕事や社会生活を営んでいた人が、スーパーの店頭に並んでいる総菜に躊躇なく手を出してその場で食べてしまったり、経済的に困っているわけでもないのに万引きを繰り返してしまったりすることもあります。本人には「反社会的なことをしている」という意識がないため、悪びれずに犯罪行為をして、それまでのその人のことをよく知る家族や身近な人を驚かせてしまうこともあります。
この場合、原因は脳の病気であり、精神障害の一種です。病気が疑われる場合は、専門医による検査や診断を受けることになります。これによって犯行当時に病気に罹患していたと認められ、その影響で犯行に及んだことをうかがわせる事象(たとえば、店員の目の前で堂々と万引きするような、通常では考えられない事象)等があれば、責任能力がない「心神喪失」ないし限定責任能力である「心神耗弱(こうじゃく)」と判断され、無罪もしくは減刑されます。このような判例はたくさんあります。
一方で、無罪・減刑となっても、犯罪行為を続けることが容認されるわけではありません。ご家族や周りの方で協力したり、地域の方や公的なサポートなどのサポートを受けたりしながら、本人の再犯を防止していくことになります。