人間関係

「コーヒー!」と言えばコーヒーが出てくるとでも?結婚30年、夫と1週間離れてわかったこと(2ページ目)

娘の結婚式の日、くたびれ果てて帰宅した後、夫が一言『コーヒー』と。これが自分の夫なのかと愛想がつき、試しに数日家出をしてみたら、寂しくもなく快適だった。帰宅を迷っているというメッセージを夫にスルーされたことで腹が決まり、離婚届とともに帰宅。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

夫のことが嫌いなんだとわかって

ずっと自分の心に蓋をしてきた。見て見ぬフリをしてきたが、私は夫が嫌いなんだ。ミサコさんはそう思った。それを認めた瞬間、気持ちが楽になったという。

「職場の同僚にその話をしたんですよ。彼女は離婚経験者。そうしたら大笑いされた。『今ごろ気づいたの?』って。でも物事、遅いということはない。今からでも、自分の気持ちに正直に生きたらどうかなと。離婚は最終手段として、その前に夫と顔を合わせないよう生活するとか。まずはしばらく離れてみればいいじゃないというんです。それも目から鱗でしたね」

娘に相談し、娘の家に1週間泊まることにしてもらった。そしてミサコさんは勤務先近くのウィークリーマンションへ。

「夫の許可は得ていません。娘の家に1週間泊まるから、自分のことは自分でしてくださいと置き手紙を残しただけ。勤務先から徒歩10分のウィークリーマンションは居心地がよかった。レイトショーの映画を観たり、行ってみたかった寄席にも出かけてみたり。平日夜は、同僚や後輩と食事をすることもあれば、ひとりでデパ地下でちょっと高級なお弁当を買ってみたり。簡単な炊事はできるから家で作ったこともあります。週末はひとりで動物園にも行きました。案外、ひとりでも寂しくないとよくわかった」

娘には逐一報告していたが、夫から娘にはひっきりなしに連絡があったという。夫はミサコさんに直接言えないため、娘に愚痴をこぼしていたようだ。

「『お父さんがお母さんの人権を尊重しなかったら、こういうことになったのよ』と娘が言ったら、『何が人権だ』と怒っていたそうです。『妻は夫のめんどうをみるロボットではありません』って娘は電話を切ったと言っていました。それを聞いていた娘の夫が、娘に拍手を送ってくれたそう」

1週間過ぎたとき、ミサコさんは夫に「帰ろうかどうしようか迷っている」とメッセージを送った。夫は返信してこなかった。

「それで腹が決まりました。離婚届を持って帰ってサインしてテーブルに置いて、賃貸マンションを契約しました。夫が調停の申し立てをしたので、今は調停中です。調停での夫も、相変わらず『妻は妻としてやるべきことがある』なんて言っているので、私の弁護士さんも呆れています」

夫は暴力こそふるわなかったが、いつでも「妻なら当然だろう」と自分の見解だけを押しつけてきた。

「もう疲れたというのが本音です。私は私の人生を生きるだけじゃなくて、夫についてもあらゆる世話を焼かなければいけない。夫の衣食住、すべてめんどうを見るんですよ。ここ数年は自分の親の介護も重なって疲弊しています。自分に正直になってみたら、もうやってらんない、というのが本当の気持ちです」

おそらく離婚に向かうのだろう。

「家庭を壊すことになったら娘に悪いと思ったんです。そうしたら娘が、『夫婦関係が壊れようがどうしようが私には関係ないから』、とニッコリ笑っていました。淡々とした意見でした」

家族の形を大事にしてきたミサコさんだが、ついに気持ちが決壊してしまった。調停を通してお互いの本音を洗いざらい伝え合ったところで、何かが見えてくるかもしれない。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます