業務上横領罪って何ですか?
業務上横領罪は刑法253条に規定される罪で、「業務上自己の占有する他人の物を横領する」ことをいいます。業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役刑です。ここでいう「業務」とは、「社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務」のことをいいます。つまり、業務上横領罪とは、業務上、人から頼まれて自分が管理している物を、自分の物にしてしまうことをいいます。例えば、会社員の仕事のように、日々管理を任されている現金を自分のために使ってしまうような場合をイメージしてください。一方で、会社から管理を任されていない現金を、勝手に従業員が自分の物にしてしまった場合は、人から頼まれて自分が占有している物ではありませんので、横領には該当しません。このように、自分が管理していない物を、相手の意思に反して、自分の物にした場合は「窃盗罪」にあたります。
横領と窃盗の違いは、自分が管理している物を自分の物にしてしまったのか、そもそも自分が管理していない物を自分の物にしてしまったのかにあります。
横領された金品は返済されますか?
金品を横領されてしまった場合、日本では、自力救済(権利を侵害された人が法律の手続きにのっとることなく自分で権利を回復すること)が禁止されていますので、実力行使で金品を取り戻すことはできません。そこで、金品を取り戻すためには、横領した人に対して、損害賠償請求をすることになります。横領した人が任意で応じない場合には、裁判所に訴えを起こし、裁判所を通して金品の返還を求めることになります。横領された金品そのものがすでに存在しない場合には、当該金品の価額相当額の賠償を求めることもできます。
会社のペンや付せんを勝手に自宅に持ち帰って使うと……
先に述べたように、業務上横領の典型例は、会社員が、会社から管理を任されている金品を自分の物にしてしまう場合ですが、業務上横領の対象は、金品に限られません。会社で使用するための備品(ペンやノート、付せん、ファイルなど)を会社員が無許可で自宅に持ち帰って私的に使ったような場合も、業務上横領に該当しますので、注意が必要です。なお、持ち帰る意図はなく、誤って会社で使用していたペンを自分のバッグに入れて持ち帰ってしまったような場合には、横領の故意がありませんので、業務上横領には該当しません。
また、最近では、在宅勤務が一般的になり、パソコンなどの備品を貸与されている会社員も多くいると思いますが、備品にはがしにくいシールを貼ってしまったり、元に戻せないような加工をしてしまったりすると、「器物損壊罪」に該当する可能性がありますので、こちらも注意が必要です。
参考
※時事ドットコム 2023年11月21日