人材育成・社員教育

世界的にも珍しい「終身雇用・年功序列」を続ける日本。北欧から学ぶべき「未来の働き方」とは?

日本には、昭和から続く、伝統とも呼べる独自の雇用慣行が未だ残る。日本のこれまでの雇用慣行、近年の働き方の変化を振り返り、今後どのように就労観をシフトさせていくべきか、人材コンサルタントが考える。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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「終身雇用」「年功序列」は今後も日本で続くか?

働き方改革やコロナ禍を経て、ここ数年で日本の就労環境は大きく変化してきた。しかし、昭和から続く、日本の伝統とも呼べる独自の雇用慣行が未だ残っている面もある。日本のこれまでの雇用慣行、近年の働き方の変化を振り返り、時代の変遷とともに今後どのように就労観をシフトさせていくべきか、人材コンサルタントが考える。
 

昭和的な雇用慣行の代表、「終身雇用」と「年功序列」

昭和的な雇用慣行の代表例、「終身雇用」と「年功序列」。この2つは世界的に見れば一般的ではなく、いわば日本独自の雇用慣行といえる。もちろんこれらには日本の強みにつながるポジティブな面もあるが、ネガティブな面が指摘されることも多い。

たとえば会社への貢献度が違う社員でも、入社年度が同じであれば、ほぼ同じような待遇で扱っている会社も多いのではないだろうか。能力や努力の差が報酬の差に公平に反映されないことは日本の常識となっていたかもしれないが、世界ではむしろ非常識である。

不公平な処遇をする会社では真に優秀な人材の獲得はできず、安定志向や特権志向の強い人々だけが残り、事業の発展が見込めなくなることにもなりかねない。実際、待遇が比較的良い有名な大手企業でも、若手人材を中心に優秀な社員が流出することは珍しい事象ではなく、社会は「転職当たり前」の世の中にシフトしている。
 

昭和的雇用慣行は企業・個人の双方にメリットも

終身雇用と年功序列にはプラスの面もある。たとえば終身雇用は、会社にとって中長期的なスパンで人材育成ができる。育て上げた人材が、長期にわたって会社に貢献してくれることは、会社にとってメリットだ。これには年功序列との相乗効果もあり、先輩が面倒見良く丁寧に指導してくれるおかげで、若手社員は時間をかけて仕事を学び、確実に成長できる。

著名なグローバル企業でも社員の出入りが激しい会社は多く、優秀な人材を喪失することもあるため、終身雇用や年功序列のような制度によって、社員が安定的に定着することはプラスとして捉えられる。

また、会社が社員の現状の能力や貢献度だけでなく、将来的に貢献するポテンシャルを中長期的に見てくれることは、社員個人にとっても大きなメリットである。なぜなら腰を落ち着けて、自らの能力開発や日々の仕事に取り組めるからだ。

世の中に昭和的雇用慣行が多く残る背景には、終身雇用や年功序列の仕組みがうまく機能することを願う人が、企業側にも個人側にも多いということなのかもしれないし、昭和的雇用慣行の一部が今後も残されていく可能性も高いと考えられる。
 

「派遣労働の緩和」と「副業規定の緩和」がもたらしたもの

過去30年間を振り返れば、昭和的雇用慣行からの大きな転換点があった。「派遣労働の緩和」である。派遣社員や契約社員など、有期雇用の非正規社員が大量に増えてきた歴史である。この間、社会のIT化やグローバル化も進み、職場では業務の合理化や効率化が一気に進んだ。単純作業はマニュアル化され、割かなくて良い人件費も浮き彫りになった。景気の浮き沈みの調整弁として、そして人件費を抑える都合の良い方法として、非正規社員の雇用が常態化した。

そして2022年は、副業規定の緩和が話題になった。働き方の多様性に関する議論も広がりつつある。休暇の取り方や産休後の女性が働きやすい環境整備など、時代とともに就労環境にも変化は起きている。在宅勤務や業務のオンライン化も、労働時間の短縮に好影響をもたらしている面もあるし、社員が同じ場所に集まって一緒に働く場所を職場と呼ぶ、その前提も崩れつつある。

これらのことによって、社員の就労意識や中長期的なキャリア観にも変化が生まれてきている。時代が過渡期を迎え、何が本当に必要なのか、理想的な職場や働き方は何か、もっと言えば、自分らしい生き方とは何か、誰もがそれらを模索し、真剣に向き合い始めているのではないだろうか。
 

IKEAから学ぶ、理想的な職場・生き方

現代日本にとっての「未来型の理想的な職場」を、北欧型の社会生活から学び、考えてみる。深刻な人口減少や外国人の流入により、社会の在り方の大きな変化が予想される今、社会保障や人権意識、そして男女平等などの指標で成熟社会として知られる北欧の現状を知ることは、日本の理想的な未来へのイメージを膨らませることにつながるのではなかろうか。

たとえば人口1000万人強のスウェーデン、500万人強のノルウェーは、国土の広さが日本と同等かそれ以上ある国々だが、人口では日本の10分の1、20分の1レベルで、極小人口社会である。日本で将来人口が半減したとしても、まだまだこの両国よりは、遥かに人口大国といえる。人口が少ない国でも豊かに、幸せに、ゆとりをもって暮らす人々の就労環境やキャリア意識、そして社会制度はどういうものであるのか、学ぶことができるだろう。

以下は、北欧が産んだシンプルでサステナブルなライフスタイルを提案する総合家具メーカー、IKEA(イケア)のビジネス理念とビジョンである。日本が目指すべき、理想的な職場・働き方のヒントとなる、示唆に満ちたメッセージではないだろうか。

■IKEAのビジョン(※)

より快適な毎日を、より多くの方々に


■IKEAのビジネス理念(※)

優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々に購入いただけるよう、できる限り手ごろな価格で提供すること


IKEAは、誰もが家庭を中心にゆとりのある時間を過ごし、心が安らぐような職場、そこに穏やかな空気と人間関係があり、仕事と生活のバランスが取れ、さらに金銭的に豊かでなくとも、大きな夢を持てるような働き方、サステナブルな生活をサポートすることを目指している。日本が目指していくべき、「理想的な職場・生活」の形ではないだろうか。

本当の意味で理想的な職場にたどりつくには、「会社や職場がどうであるか」ということ以上に、「自分はどう働くのが一番幸せなのか」「社会がどのようになれば幸せが持続可能になるのか」ということについて具体的な結論を出していかなければならない。

<参考リンク>
※:イケアのビジョンとバリュー(IKEA)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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