子どものころから母が苦手だった
「30歳で結婚したものの、なんと相手は元カノと関係が切れてなかった。元カノも既婚者なので、自分も結婚すれば立場が対等になる。そのために結婚した、君には申し訳ないことをしたと言われました」苦笑しながらそう言うのは、アキナさん(39歳)だ。屈辱的だったが、泣きながら謝る彼を責める気にもなれなかったという。
「まあ、そういうこともあるかもねと。友人たちには寛容すぎると怒られたけど、過ぎてしまったことはしかたがない。私が彼をそういう人間だと見抜けなかったわけだし。彼からは慰謝料として少しお金をもらいました。引っ越さなくてはいけなかったから、それを引っ越し代に当てようと考えていたんです」
そんなとき、実家の父が急逝。母がひとり暮らしになった。アキナさんの姉は遠方で家庭を持っており、「心配だからお母さんと一緒に暮らしてあげてよ」とひっきりなしに連絡が来た。ところがアキナさんは母親が苦手だった。
「過保護だったとか人生を阻害されたとか、そこまでではないんだけど、母と一緒にいると日常的に不愉快なんですよ(笑)。たとえば一緒にどこかに行って、道に迷うとするでしょう。そうすると母はきちんとたどり着けなかった私のせいにするわけ。一緒にいるんだから、あなたのせいでもあるよねと私は思うんですが、私が彼女をリードするものだと思い込んでる。誰かに道を聞けとしつこく言うから聞いてみると、反対方向だったとしますよね。そうすると『ほうら、やっぱりあんたが間違ってたのよ』と大声を上げて、しかも大笑いするわけです。道に迷って、でも母娘で楽しいよね、みたいに。こっちはさっぱり楽しくないんですけどね」
一事が万事、そういう感じだから、一緒にいて楽しいと思ったことがなかった。
大学に入学すると、彼女はあまり家に帰らなくなった。友人宅を泊まり歩き、母がパートに出ている昼間の時間帯に家に戻り、また出て行った。
そんなアキナさんに、母は特に何も言わなかったという。
「そのころは姉が自宅にいました。母は姉さえいればご機嫌だった。だから私が大学を卒業してしばらくたったころ、姉が結婚して家を出ていくときは大騒ぎでしたね。これからは私にターゲットが移る可能性があると察して、就職して4年目に家を出ました」
それからは年に数回しか実家に立ち寄らなかった。
>母の目がキラリと光ってイラッ!