人間関係

「子育て罰」に苦しむ母親たち。“収入の壁”に阻まれて、子どもを産み育てるだけで貧乏になる理不尽

1月に岸田首相が打ち出した「異次元の少子化対策」は、いつからか「次元の異なる少子化対策」という表現に変わった。「妻の収入の壁」に阻まれて収入を増やすことができず、子どもを産み育てるだけで「貧乏に」なり、世間の「厳しい批判にさらされる」日本社会に欠けているものとは何だろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「子育て罰」という言葉をよく目にするようになった。子育てをすることが、あたかも「罰」であるかのような、子育て世帯に厳しい今の政治や社会を批判して使われている。国税庁の資料(※1)によると、日本人の給与平均は443万円。およそ30年前、平成2年度の平均給与は年収425万2000円。この間、物価は上昇しているのに平均年収はほとんど変わっていないことになる。教育費もアップしている。
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アバウトではあるが、2021年度の私立大学文系の初年度納付金平均は119万円弱。30年前は48万円程度だから、これだけ見ても倍額。おそらく30年前のほうが家庭に余裕があったはずだ。
 

収入を“増やせない”女性の苦悩

それに加えて「妻の収入の壁」がある。国会でも話題になっているが、夫の被扶養者になっている妻がパートで収入を得ると、所得税や保険料を支払わなくてはいけなくなる「壁」がいくつかあるのだ。103万円を超えると所得税がかかり、106万円超で社会保険への加入義務の可能性が生じ、130万円超ですべての人に社会保険料が課され、150万円を超えると配偶者特別控除が満額でなくなる(※2)。

150万円といえば月収にして12万円と少し。頑張ってパートでそのくらい稼ぎたい人は多いだろう。

もちろん、妻がメインの働き手で夫が被扶養者になっているケースもあるが、一般的にはまだまだ妻が被扶養者になっていることのほうが多い。

「結婚当初は正社員で共働きをしていて、そのまま第一子が産まれました。このときは産休と育休をとって8カ月後に職場復帰、子どもは保育園に預けていました。3年後に第二子を出産、また保育園に預けようと思ったら保育園の空きがない。待機しているうちに第二子の先天性の病気がわかって……。結局、正社員として働き続けるのが難しくなりました」

そう言うのはコトミさん(42歳)だ。結婚して12年になる夫との間に、10歳と7歳の子がいる。病気をようやく克服した下の子は、無事に小学校に入った。そこからパートを始めたコトミさんだが、昨年の収入は80万円ほど。これなら所得税もかからない。

「だけどこの先、子どもの様子を見ながらではありますが、もっと働けるようになると思うんです。このまま103万円や106万円を気にしながら働くのを控えるって、バカみたいですよね。国は女性活躍とか言いながら、結局、主婦を働かせまいとしているような気がしてならないです」

せめて150万円まで「壁」を上げてほしいとコトミさんは言う。個人収入ではなく、世帯収入で税金を課す方法もあるのだが、これだと富裕層を優遇しかねないと政府としても葛藤があるようだ。

「それなら収入制限をもうければいいわけで、今はカツカツで暮らしている私たちのような世代を、もっと貧しくさせているとしか思えない。これから教育費もかかるし、頭が痛いです」

>「異次元の少子化対策」はどこへ?

※1:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査
※2:配偶者控除や38万円控除の条件とは?2022年気を付けたい年末調整変更点【動画で解説】
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