住宅ローンの繰り上げ返済の時期についても悩んでいます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、第3子を望んでいるもののお金のことが心配という32歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。子ども3人の教育費、足りますか?
さささーさん
女性/会社員/32歳
東北地方/持ち家(一戸建て)
■家族構成
夫(30歳)、第1子(2歳)、第2子(1歳)
■相談内容
いつも記事を読み、自分に近い状況の方など参考にし、勉強させていただいています。
ありがたいことに2人の子宝に恵まれ暮らしておりますが、金銭面で第3子を望んでもよいのか迷っております。
また、現在、住宅ローンがあり繰り上げ返済の時期についても、いつごろがよいのか(早めに行った方がよいのか、子どもが成人してからがよいのか)、ご助言いただきたいです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
■家計収支データ ■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
車の維持費(税金、保険や車検など)12万円、家電などの大きな買い物用10万円、子どもの七五三や誕生日などイベント費用8万円、家族の小遣い10万円、固定資産税の支払いなど。余ったお金は貯金。
(2)貯蓄について
90万円は子ども名義(児童手当を積立)、70万円は今まで貯めたお金、300万円は私の独身時代の貯金です。毎月の貯蓄9万2000円は、自動積立2万2000円(家の修繕費用の積立)、普通預金4万円+児童手当3万円。
(3)住居費について
・購入年/2022年
・購入価格/3500万円
・ローン借入額/2590万円
・借入金利/1.52%
・返済期間/35年
・ローン残債/2550万円
※返済は毎月返済のみ
(4)車について
1台を所有。車両費の内訳は1万1000円は駐車場代、5000円はガソリン代となっております。現在、子どもの保育園の送迎のため車で通勤していますが、子どもが小学校に上がったら、バス通勤(交通費全額補助あり)にしようと思っています。また、今乗っている車が10年目のため、買い換え時期は5年後、予算は300万円の予定です。
(5)加入保険について
夫/
・7大疾病保障付住宅ローン保険料タイプ=毎月150円
・低解約返戻金型終身保険(終身タイプ、無配当、45歳まで払込、死亡保障260万円)=毎月の保険料1万円
相談者/
・7大疾病保障付住宅ローン保険料タイプ=毎月110円
・低解約返戻金型終身保険(終身タイプ、無配当47歳まで払込、死亡保障260万円)=毎月の保険料1万円
終身保険は知り合いの保険会社の方に、子どもの学資保険代わりになるとすすめられ加入。
(6)教育費と子どもについて
毎月2万9000円の教育費は、保育園代。田舎のため、小中は公立のみの選択です。高校は公立希望ですが、試験結果次第では私立になっても行かせてあげたいです。大学は第3子がいる場合は公立、いない場合は本人次第で私立理系も行かせてあげたいです。ただどちらの場合も近くに大学がないため、自宅外通学となると思います。
夫婦ともに子どもが授かりにくい体質の中、2人の子どもが来てくれて大変ありがたく、第3子については34歳までに自然に授からなければ諦め、2人の子どもたちに愛情を注ぎたいと思います。
(7)働き方について
フルタイムの復職は会社の決まりで1年後の予定です。もし第3子の教育資金などが必要とわかれば、早めに復職して手取り収入を増やした方がよいのかなとも思っています。ただ、フルタイムに戻ると残業や当直、休日出勤もあるため悩んでいます。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 住宅ローンの繰り上げ返済よりも、教育費確保が優先
アドバイス2 子ども3人の教育費で4000万円。ギリギリなんとかなる
アドバイス3 老後資金は60歳以降も収入を得て準備する
アドバイス1 住宅ローンの繰り上げ返済よりも、教育費確保が優先
住宅ローンの繰り上げ返済のタイミングは気になるでしょうが、3人目を希望されているのでしたら、教育費の確保が優先となります。幸い、住宅ローンが完済するのは、夫65歳のとき。定年退職前に完済できればベストですが、年金生活になるときには完済していますので、焦ることはありません。教育費を確保するには、貯蓄のペースを上げるしか方法はありません。現在の家計から児童手当を含め、毎月9万2000円貯蓄ができていますが、もうひとがんばりして、毎月10万円の貯蓄をしましょう。細かく管理されているようなので、あと8000円を捻出するのも厳しいかもしれませんが、いま一度、各支出を見直してみてください。
ただ保険に関しては、節約ということではなく、必要な保障が不足しているので、見直しが必要です。実は保険を見直すことで、家計支出は現状維持のまま、毎月10万円の貯蓄ができるようになりますよ。
夫婦ともに、同じタイプの終身保険に加入していますが、2人の死亡保障は合計しても520万円です。学資保険の代わりという意味もわかりますが、死亡保障は、万一のときに遺される子どもの生活維持のために確保すべきものです。現状の520万円では不足しています。
付き合いもあるかもしれませんが、子どものためにこの保険は解約し、割安な定期保険で必要十分な保障を確保しましょう。夫婦それぞれ、死亡保障1000万円、保険期間20年。住宅ローンの団信に疾病特約をつけていますが、万全ではありません。入院日額5000円の医療保険にも加入する必要があるでしょう。見直し後の毎月の保険料は、夫婦合計でも6000円程度で収まるはずです。現在の保険料から1万4000円削減できます。削減できた分を貯蓄に回し、しっかりと貯蓄で教育費を確保していきましょう。
アドバイス2 子ども3人の教育費で4000万円。ギリギリなんとかなる
毎月10万円の貯蓄ができれば、年間120万円。ボーナスから55万円貯蓄できれば年間175万円です。ご相談者が60歳になるまでの28年間で4900万円となり、現在の貯蓄額460万円を加えると、5360万円になります。これが60歳までに貯めることができる金融資産ということです。ただし、3人目が授かった場合、2年ほどは貯蓄できないと思われます。2年分の貯蓄額350万円を差し引いて5010万円。ここから、教育費を差し引いて考えます。
オール国公立であれば教育費を抑えることができますが、高校まで公立、大学が私立とすると、およそ1人あたり1000万円が必要となります。3人で3000万円です。さらに大学は自宅外通学となれば仕送りが必要になり、毎月7万円として4年間で336万円。3人で約1000万円かかります。つまり教育費、仕送りで4000万円はかかる、ということです。
先の5010万円から差し引くと、残りは1000万円ほどですが、現在家計に計上している教育費が毎月2万9000円ありますので、これを控除して考えると、年間35万円×28年で980万円。これを加算すると金融資産の残りは約2000万円となります。
実際には、教育費は、その都度支払いが発生しますので、貯蓄しては学費を納めていくことになり、最終的に2000万円残せるかはギリギリかもしれません。車の買い換えも数回あるでしょう。子どもの進路によっては塾代や学費がもう少しかかるかもしれません。
しかし、年間175万円の貯蓄がキープできれば、子ども3人の大学進学は無理ではありません。夫婦ともまだ若いので収入は今後増えるでしょうし、子育てが一段落したら、ご相談者の収入アップも望めるでしょう。ポイントは無理なく、貯蓄を継続していくことです。
アドバイス3 老後資金は60歳以降も収入を得て準備する
まだ先の話ではありますが、老後資金については、子どもの教育費次第となるでしょう。予定していた費用ほどかからなければ、残った分は老後資金となります。退職金があれば、それも老後資金として残せます。また、60歳以降も収入を得ることができれば、貯蓄を積み重ねていくこともできるでしょう。60歳になるころには、子ども3人も社会人になっており、夫婦2人の生活であれば、生活コストも削減できます。ただ、残念ながら、住宅ローンは60歳時点でも残ってしまうでしょう。もしも今後収入が増え、子ども3人の教育費のめどが立てば(全額確保できていなくても、貯蓄ペースが維持できていればいい、ということ)、繰り上げ返済を考えてみてもいいでしょう。冒頭でも述べましたが、繰り上げ返済を焦る必要はありませんよ。
仮に、子ども2人だった場合は、マネープランとしては問題ないでしょう。老後資金も問題ないでしょう。2人の子どもに愛情を注ぐのは素敵なことですが、教育費はかけようと思えばキリがありません。その点だけは注意してくださいね。3人目のお子さんができて、もしも貯蓄がうまくいかなくなったら、またご相談をお寄せください。
相談者「さささー」さんから寄せられた感想
いつもわかりやすい説明と相談者への気遣いあふれる深野先生の記事を拝見しておりました。先生に見ていただけたらな、と思っておりました。アドバイスをいただけてとてもうれしかったです。ネット記事で住宅ローンの繰り上げ返済をした方の記事を読み、うちもしなくてはと焦っておりましたが、教育費が先とわかりよかったです。危うく順序を間違えるところでした。
3人目も何とか前向きに考えられそうでうれしいです。家計と保険を再度見直し、子どもたちへの支出も考慮した上で貯蓄に励もうと思います。先生とマネープランクリニックの担当者様、本当にありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子