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令和5年度の年金は新規裁定者で2.2%、既裁定者で1.9%引き上げになります
令和5年度、つまり2023年4月以降の年金額は、新規裁定者(67歳以下)は2.2%引き上げられます。国民年金の満額を受け取る方は月額6万6250円であり1434円の引き上げです。また、既裁定者(68歳以上)は1.9%の引き上げであり、国民年金の満額を受け取る方であれば月額6万6050円、昨年度に比べて1234円の引き上げになります。
年金額の改定には「賃金」と「物価」の変動率が用いられます
年金額の改定には「賃金」と「物価」の変動率が指標として用いられます。なお新規裁定者と既裁定者に用いる指標には、以下のルールが決められています。「賃金変動率(*)」が「物価変動率」を上回る場合、新規裁定者の年金額は「賃金変動率(*)」を、既裁定者の年金額は「物価変動率」を用いて改定する。
このため、令和5年度の年金額改定には、新規裁定者では賃金変動率(*)の2.8%、既裁定者では物価変動率の2.5%が指標として用いられます。
年金額の給付水準は「マクロ経済スライド」で調整されています
年金額の改定には「賃金」「物価」の変動率に加え、「マクロ経済スライド」による調整率も使われます。「マクロ経済スライド」とは、社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて年金の給付水準を引き下げるしくみのことです。なお、「賃金」や「物価」の変動率がマイナスの年度は「マクロ経済スライド」による調整は行われません。「賃金」や「物価」がマイナスなのに、さらに追い打ちをかけるような調整はできないからです。そのため令和3年度と令和4年度は「マクロ経済スライド」は発動されず、次年度以降に繰り越されました(キャリーオーバー)。
今回の改定では本年度分の調整率(-0.3%)に、令和3年度(-0.1%)、令和4年度(-0.2%)のキャリーオーバー分が加わり、最終的にマクロ経済スライド調整率は-0.6%とされました。
その結果、令和5年度の年金改定率は新規裁定者、既裁定者それぞれで以下となります。
新規裁定者:賃金変動率(*)2.8%-0.6%(マクロ経済スライド調整率)=2.2%
既裁定者:物価変動率2.5%-0.6%(マクロ経済スライド調整率)=1.9%
まとめ
令和5年度の年金額の改定は、3年ぶりのプラス改定となります。しかしながら「賃金」「物価」の上昇率ほど年金額の率は上昇しないため、年金受給額は実質的には目減りです。その理由は「マクロ経済スライド」調整率が年金水準を引き下げるからですが、少子高齢化が進む日本において「マクロ経済スライド」は将来にわたる年金制度の維持に必要なしくみです。
そのため今後プラス改定の年があるとしても、年金受給額は実質的には目減りすると覚えておきましょう。
*正しくは名目賃金変動率であり、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に、前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたもの。
《参考》厚生労働省 Press Release