今回は『ミセス・ハリス、パリへ行く』をピックアップ。いろいろと世知辛い世の中ですが、そんな時こそ観たい! とてもチャーミングなイギリス映画です。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』の魅力とは
時代は1950年代。ミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)は、夫を第二次世界大戦で亡くし、ロンドンで家政婦をしながら生計を立てています。ある日彼女は、雇い主の家の掃除中、クリスチャン ディオールの素敵なドレスに心を奪われます。そして彼女は「パリへ行って、ディオールのドレスを買うの!」と、パリへ行く決心をします。
しかし、パリへ行くのも簡単ではありません。家政婦の賃金では足りず、ドッグレースで一攫千金を狙ったりして……。夫を亡くして、粛々と暮らしていた女性が、1着のドレスをきっかけに目標ができて、毎日がキラキラ楽しいものに変わっていくんです。
シニア女性が夢に向かって元気に突っ走る!
夢を求めて異国の地へ……という物語そのものに新鮮味はなく、これまでもこういう物語はありました。でも大抵、ヒロインは若い女性。この映画のいいところは、夢に向かって突っ走るヒロインがシニアの女性であるというところです。夢を見るのに年齢は関係ない。何歳になっても「素敵」と思ったことに夢中になったり、チャレンジしたりしてもいいんです! 観ていてうれしくなっちゃいましたよ。パリで知る階級差の世界
さて、お金を貯めてパリへ行くことができたハリス。早速ディオールの本店へ行きます。でもハリスは知らなかったんです。ディオールのドレスはオートクチュールで、飾ってあるドレスをすぐ購入できるわけではないことを。また、当時のディオールの顧客は上流階級のご婦人ばかりでした。 本店で「ドレスを買いに来たの」とマネージャー(イザベル・ユペール)に告げると「は?」という顔をされ「あなたの来るところではない」と言わんばかりの塩対応をされるハリス。
さすがにカチンときて「ちゃんとお金を持ってきたんだから!」と丸めたお札をテーブルにバサバサと出すシーンは「ああ、ハリス落ち着いて!」とヒヤヒヤしました。しかし、ここで救いの手が差し伸べられるのです。
周りを味方につけてしまうハリスの人徳
本店で開催されるショーを見にきた侯爵(ランベール・ウィルソン)が、ハリスがショーを見られるように計らってくれるんです。また、マネージャー以外のディオールのスタッフも、ディオールのドレスに憧れてパリまで来たハリスを気遣ってくれるんですよ。 スタッフもディオールに雇われている人たちで、決して上流階級ではない。だから「ディオールのドレスが欲しいの!」とやってきたハリスの勇気に心が動かされたのではないかと。無意識とはいえ、階級社会で成り立っている世界に切り込んできたわけですからね。 また、彼女はとても人がよく、周りを気遣うことができるとても優しい人柄です。ハリスが側にいたら、私も頼ってしまいそうですもん。だから、ロンドンでも仲間がパリ行きを応援してくれたし、パリではディオールの若いスタッフが親身になってくれた。人徳ですね。大人女性が元気になれるチャーミングな作品
結局、ドレスを手に入れるまで二転三転、そして手に入れたかと思うと、また災難が降りかかってきて、見ている間中、ハリスの友達になった気持ちでヒヤヒヤ……。しかし、終わり方は実にスマートで良かった!本作の素晴らしさは、シンデレラストーリーをシニア世代のヒロインで描いたこと。夢を諦めず、攻めの姿勢で突き進んでいくハリスの姿には元気をもらいました。
実は大人女性のための元気が出る映画ってありそうでないんですよね。「人生を思い切り楽しもう!」そんな気持ちにさせてくれる『ミセス・ハリス、パリへ行く』。モヤモヤしている時、凹んでいる時に見ると気持ちをアゲてくれますよ!
『ミセス・ハリス、パリへ行く』
2022年11月18日より公開。全国順次ロードショー。監督:アンソニー・ファビアン
原作:ポール・ギャリコ著『ハリスおばさんパリへ行く』
配給:パルコ/ユニバーサル映画
出演:レスリー・マンヴィル、イザベル・ユペール、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー、エレン・トーマス、ローズ・ウィリアムズ、ジェイソン・アイザックス