ちょっとした思いやりの大迷惑
「うちも同じようなことがありました」クミコさん(42歳)はそう言う。彼女の場合は、夫の実家から野菜が送られてくる。それはありがたいのだが、子どもが大きくなるにつれ、野菜の量が増えていく。
「ほうれん草や小松菜などを大量に送られてももたないですからね。結局、茹でて冷凍して……と手間がかかる。うちはふたりともフルタイムですから、そういうものは冷凍野菜を使ったほうが合理的なんです。夫に、野菜を少量にしてもらうよう言ってと頼んだけど、わかったと言いながらたぶん夫は何も言ってないんでしょう。相変わらず大量に送られてくる。だからもう私、放っておいたんです。そうしたら葉物は全滅」
そこで夫が怒った。せっかくの好意を無にするのか、と。一見、好意ではあるけれど、自分にとっては迷惑でしかない。あなたの実家から来るのだから、あなたが実家に止めるよう言うか、あなたが調理するかの二択しかないとクミコさんは言い放った。
「もう我慢できなかったんです。すると夫はようやく実家に電話をかけたみたい。次回から葉物は減りましたが、今度はかぼちゃやじゃがいもが大量に……。職場で、大きなかぼちゃが家にあるから誰かいるなら送るよと言ってみたけど、実母と同居している同世代の女性だけでしたね、ほしいと言ってくれたのは。みんな忙しいんですよ。手間のかかることはしたくてもできない。食材を捨てるのは罪悪感も募るし」
夫はそんなクミコさんの気持ちを知ってか知らずか、「たまにはパンプキンパイでも食べたいな」と能天気なことを口走る。彼女は「自分で作れば?」とつぶやいたという。
「言えばやってもらえる、言わなくてもやってもらえる。そう思っていること自体がムカッとくるんですよね」
とはいえ、コミュニケーション不足も透けてみえるような気がするが。
「確かにそう。そもそも、生活を心豊かに楽しもうと夫は言うけど、現実を見ろというのが私の意見。話は平行線で交わらない。小学生の子が3人いる家庭って、そんなものだと思いますよ。現実離れしているんですよ、夫が」
あと数年はこの事態は変わらない。夫がもう少し大人になってくれるとか、家事の戦力として「もっと使える状態」になってくれない限り、私の闘いは続くとクミコさんは苦笑した。