家に「お金も入れていた」のに……
現在、ひとり暮らしのヨウコさん(40歳)。子どものころから親に振り回され、疲弊したあげくにひとりで暮らし始めたが、今また、母親に心を揺さぶられているという。「私には6歳年上の兄がいます。両親は頭のいい兄をとてもかわいがっていたし期待もしていたけど、私にはあまり期待はしていなかったみたい。小さいころ、私は走れば転ぶ、学校にもなじめないという、親に言わせれば“ダメな子”だったから」
ところが人間、どこでどうなるかわからない。ヨウコさんは大学を出てから、職を転々としたが、先輩たちにかわいがられ、今は先輩が起業した会社で役員を務めて生き生きと「楽しく」暮らしている。
一方、有名大学を出た兄は、人間関係で挫折して有名企業を3年で退職。その後、転職した先で知り合った女性と結婚したが、常に「仕事がつまらない」「誰もオレの力を評価してくれない」とぼやくばかりの人生となった。
「それでも両親は兄がかわいいんでしょう。私はずっと実家暮らしでしたが、兄一家が遊びに来ると母がこっそり兄に小遣いを渡すわけですよ。そういうことをしているから、兄がろくな人間にならないんだと私は母を非難していました。私、20代のころは給料の大半を家に入れていたんですよ。それはおそらくほぼ兄に流れている。母は私に『ありがとう』という言葉を言ったこともない。20代後半になると、『早く結婚しなさいよ。いまだに家にいるなんてみっともない』と言われたので、じゃあ、出ていくと行ったら『女の子がひとり暮らしなんてするもんじゃない』と」
母の言葉はすべて右から左へと流す訓練をするしかなかったと彼女は言う。
やっとひとり暮らしをするようになったのに
ヨウコさんが32歳のとき、闘病していた父が亡くなった。それを待っていたかのように、兄一家が実家になだれ込んできた。「そのころ兄は無職。義姉が必死に働いていました。ふたりの子も小学生だったんじゃなかったかしら。実家だってそう広いわけじゃないから、それを機に私は家を出ました。大事な息子さんと一緒に暮らせてよかったねと母に嫌味を投げて……」
その後、兄も非正規ではあるが働き出したと聞いたので、これで自分の役目は終わったとヨウコさんはホッとしていた。
>ようやく母親から解放されたと思ったら……