Q. 「睡眠薬を飲むとメンタルが不安定になる」って本当ですか?
脳が活発になる「レム睡眠」とは?
「寝付きが悪い」「真夜中に目が覚めて、その後眠れなくなってしまう」など、不眠症には様々なタイプがありますが、そのときの対処法として睡眠薬が使われることがありますね。一方で、何となく睡眠薬を使うことに抵抗がある方もいるようです。以前普及した睡眠薬の問題点と、改良が進んだ睡眠薬の現状について、解説します。
Q. 「毎日なかなか眠れず、不眠症状に悩んでいます。睡眠薬を処方してもらおうかと考えていますが、メンタルが不安定になるからやめた方がいいと言われて、躊躇しています。睡眠薬を飲むと精神的に不安定になるのでしょうか?」
A. ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスを壊す睡眠薬には問題点がありました。近年は改良が進んでいます
私たちが一晩眠っている間には、体と脳がともに休んでいる「ノンレム睡眠」と、体は休んでいるけれど脳が活発になる「レム睡眠」が交互に訪れます。健康な成人の平均的な睡眠時間は8時間くらいで、そのうちのおよそ80%がノンレム睡眠、残り20%がレム睡眠です。健康維持のためにはこのバランスが大切です。とくに、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスが崩れると、私たちは精神不安定に陥ることが知られています。現在広く使われている睡眠薬は、副作用が少ないように改善されているものが多いですが、少し前までの睡眠薬には、いくつかの問題点がありました。
たとえば、1920年代から1950年代に鎮静薬または睡眠薬として広く使われていた「バルビツール酸系薬物」は、それまでの薬よりも安全性が高く使いやすいと評判になって普及しましたが、いくつかの欠点もありました。その一つが、服用すると一晩ぐっすりと眠れる一方、日中の活動時に不安を感じたりイライラしたり、また急に笑ったかと思うと怒りだしたりと、感情の起伏が激しい精神不安定の状態が出やすかった、というものです。
この睡眠薬が睡眠の質に及ぼす影響を調べたところ、一晩眠っているうちのほとんどが「ノンレム睡眠」で、「レム睡眠」がなくなっていることがわかりました。この現象は「レム短縮」と呼ばれます。「レム睡眠がなくなる」ということは、夢をみなくなることでもあり、体と心が一晩中ぐっすりと休んで眠れるからいいように思われるかもしれませんが、逆に日中起きているときに不調が生じてしまうのです。
また、このタイプの睡眠薬を長く使い続けていると、そのうちレム短縮がなくなり通常の睡眠の質に戻ったように思えるのですが、そのようなときに睡眠薬を飲むのを急にやめると、逆に「レム反動」といってレム睡眠の割合が40%近くになることもわかりました。レム睡眠が多すぎるときは、一晩中悪夢ばかりみてうなされるような状態になり、その影響でやはり日中の活動時にも弊害が起こってしまうのです。
つまり、レム睡眠の割合は、減ってもだめ、増えてもだめ。ちょうど20%ぐらいあるのがいいということです。精神安定のためには、バランスのよい睡眠をとることが大切なのです。
なお、近年は薬の改良が進み、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスを変えないような睡眠薬も開発されています。また、睡眠障害の種類によって適した多種類の薬が使えるようになっています。不眠に悩んでおられる方は、ご自分にあった睡眠薬を選んでうまくご利用ください。