「Midjourney」「Stable Diffusion」など、文章を入力するだけで画像が生成できる画像自動生成AIも人気ですが、懸念されるのが「AIが作成した画像の著作権は誰のものなのか」ということ。AI画像作成サービスと著作権の問題を考えていきます。
他人による著作権侵害を恐れる声が上がる
「mimic」(出典:公式サイト)
元々このサービスは、イラストレーター向けに作られたものです。イラスト制作の参考資料にしたり、SNSやファンコミュニティを活性化させたり、イラストという資産の活用に使ってほしいと考えて作られたものでした。
しかし実際は、不安を覚えたイラストレーターたちから、「イラストを他人に勝手にアップロードされてしまうのでは」「絵柄がパクられてしまうかも」とSNS中心に懸念の声が上がりました。「プロフィールに『AI学習禁止』と入れなくては」と、「AI学習禁止」がトレンドに入るほどの盛り上がりを見せました。
ガイドラインの禁止事項には、「他人のイラストを勝手にアップロードしないでください。必ずあなたが描いたイラスト、もしくは権利を保有しているイラストをアップロードしてください」と書かれています。また、権利侵害を発見した場合、運営会社は当該アカウントの停止や捜査機関への情報提供などの措置を行うともしていました。
しかし、ガイドラインで禁止するだけではトラブルを防ぐことは難しい可能性が高く、その結果、たった1日でのサービスの全機能停止となってしまいました。今後、不正利用に関わる課題を改善できたとき、正式版として再リリースする予定としています。
時代に合わせてどう変えるのか?
平成30年の著作権法改正で、柔軟な権利制限規定として、AIに学習させる目的での著作物利用は問題ないとされています。つまり、ガイドラインでは禁止されていても、現行法では他人のイラストをAIの学習に利用することに対して、法的な拘束力はないのです。またこの時点では、AI生成画像がどういう扱いになるのかについては検討されていませんでした。平成30年に公布された「著作権法の一部を改正する法律」概要説明資料より
AV機器評論家/コラムニストの小寺信良氏がITmediaに寄稿した記事によると、「米国では『フェアユース』があるので、それに照らし合わせればAIの学習が著作権侵害となる可能性は低く、ユーザーが侵害を問われる可能性も低い」「AIの学習が浅い場合、出力された画像が学習した何らかの著作物に近くなる可能性があり、その場合は侵害となる可能性もあり得る」といいます。
米合衆国著作権局は2022年2月14日、「Creativity Machine」と名付けられたアルゴリズムが生成した絵画に著作権を認めるよう求めた申請を却下したことを発表しました。同局は、「AIが生成した画像には著作権によって保護されるのに必要な基準である『人間の著作権』の要素が含まれていない」と表明しています。
つまり現状では、AIに学習させる行為はまったく問題ないのです。ただし、著作権者の権利を不当に侵害した場合は当然問題となるため、どのような場合は許されないのか、AIが作成した画像の権利をどう扱うのかについては今後判断していくことになりそうです。
このように、現状では、著作権などとの兼ね合いからどこからどこまでが許されるのかが不明であり、それによりサービス提供側が二の足を踏むことにつながっています。ただし、たとえ日本だけで禁止していても、世界が認めればそれがスタンダードとなり、なし崩し的に通ってしまう可能性もあります。
AIでイラストを作成する技術がある以上、今後も、この流れは止められないでしょう。海外でスタンダードなサービスが出た場合、また日本はこの分野でも後塵を拝すことになってしまいます。その前に、どこかで思い切って決断する必要があるのかもしれません。
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