養育費は月4万5000円が高校もしくは、大学卒業まで振り込まれる予定です
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、離婚が成立したものの、病気が発覚し、無理のない範囲で働きたいと考えている50歳のパート女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。体力に無理のない範囲で働きたいと思います(写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません)
■相談者
赤べこさん
女性/パート・アルバイト/50歳
中部地方/借家
■家族構成
子ども(中学2年)
■相談内容
いつも、深野先生の厳しくも温かい、それぞれに寄り添った適切なアドバイスを楽しみに拝読しております。数年続いていた離婚問題にようやくけりがつき、調停の末に晴れて離婚成立となりました。養育費は、給与収入以外に月4万5000円が高校もしくは、大学卒業まで振り込まれる予定です。
現在は週4回の非常勤で勤務しておりますが、上司より来年から勤務日数を増やしてほしいと依頼されています。しかし、最近、病気が発覚したため、あまり無理のない程度で働きたいとは思っています。病状は悪化するか、現状維持かはわかりません。幸い今のところ、日常生活に支障はなく、仕事も問題ありません。
2馬力で生活していたころの緩めの家計の癖が抜けないところもあるかとは思いますが、深野先生の忌憚のないご意見をいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
〈悩み〉
・今の賃貸(猫可物件)は家賃が高いので、早めに分譲マンションを購入しても将来的に破綻しないか、それともこのまま賃貸の方がよいか。老後の生活は大丈夫か?
・離婚による財産分与で貯金がかなり目減りした。保険、投資信託も財産分与分をねん出するために解約や一部解約をしたが、現状のままで適正か?
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1)支出の補足と内訳
・家賃はインターネット料金込みの金額
・車両費:ガソリン8000円、保険4000円、税金4000円、車検5000円。ガソリン以外は月々積み立て
・教育費:給食費、塾代
・雑費:日用雑貨、美容院、猫にかかわる費用を含む
・予備費:医療費や光熱費
(2)貯蓄について
毎月の貯蓄は、5万5000円。養育費と児童手当は、そのまま子ども名義の口座に貯蓄しておき、大学進学時に使う予定。
(3)投資について
前職での確定拠出年金が約800万円。
(4)自動車について
2年後に、昨年購入分の残価一括払い(250万円)がある。車は必須の地域、かつ通勤にも不可欠のため、今後も買い替えが必要。
(5)加入保険について
・生前給付型終身保険(終身型、60歳払込、死亡または特定疾病保険金額300万円、現時点での解約返戻金110万円)=年払い保険料10万4200円(月割りにして積立)
・積立利率変動型終身保険(60歳払済、死亡保険金329万円、現時点での解約返戻金180万円)=保険料払済
・医療保険(入院日額5000円)=毎月の保険料1800円
・医療保険(入院日額5000円)=毎月の保険料2600円※子ども分
・個人年金(65歳受取開始、10年確定、年金額120万円、現時点での解約返戻金270万円)=毎月の保険料3万3200円
(6)子どもの進路について
できれば高校まで公立希望だが、私立の可能性も高い。大学も国公立希望ではあるが、私立文系もしくは専門学校の可能性が高い。
(7)働き方について
週4回は継続可能です。元々上司からは正社員への転換を打診されましたが、正社員になるメリットがあまり感じられず(賃金面や休日等)、また、前職で二十数年間正社員として勤務し精神的にも疲弊したので、この状態を選択しております。希望すれば正社員への登用も可能と思われますが、今回断ると次はないかもしれません。
(8)公的年金について
現時点での見込額は年額172万9300円ほど(ねんきん定期便より)。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 今の生活、貯蓄ペースで大丈夫。細く長く働くことが大事
アドバイス2 65歳から生活コストは下がるので、貯蓄の取り崩しは最小限で済む
アドバイス3 住宅購入は慎重に。住居費が固定化され、負担になるかも
アドバイス1 今の生活、貯蓄ペースで大丈夫。細く長く働くことが大事
精神的なストレスを乗り越え、頑張っておられます。病気のことが一番心配ですが、現状は日常生活も問題なく、働けているとのこと。今の生活のペースを維持することを最優先に考えてください。現状維持で今後も生活、貯蓄ができるとして試算してみますが、くれぐれも体が一番です。体調に変化があったら、無理せず休養するようにしてくださいね。現状維持だとすると、現在、毎月5万5000円の貯蓄ができていますから、年間で66万円。60歳までの10年間で660万円です。現在の金融資産は720万円ですから、60歳時点で1380万円になります。
この間、お子さんの教育費が大きな支出となります。今後、高校、大学に進学した際の教育費は800万~1000万円。私立文系に進んだとしても、十分まかなうことができます。養育費が大学卒業まで続くのであれば、手元にはもう少し残せるでしょう。そのほか、車の買い替え費用があります。2年後の残価一括で250万円はやや高めの印象があります。これは一括で精算し、そのまま乗り続けるか、維持コストの安い車に買い替えてください。その後もう1回は買い替えがあると思いますが、その時点で無理のない予算で現金購入するようにしましょう。
現時点で、60歳の時に、金融資産がいくら残っているかは確定できませんが、子どもが奨学金を借りたり、教育ローンを借りたりすることなく、希望する進路に行かせてあげることはできるでしょう。
アドバイス2 65歳から生活コストは下がるので、貯蓄の取り崩しは最小限で済む
体調次第ですが、60歳から65歳の間も働くことができれば、330万円を老後資金として上乗せできます。この時には、すでに教育費はかかっていませんので、毎月支出の2万3000円は貯蓄してもいいですし、ご自身の楽しみのために使ってもいいと思います。というのも、ここまでで計算に入れていなかった保険金の受け取りや個人年金、確定拠出年金があるからです。すべて合計すると、おそらく手取りで2200万円ほどになると思います。60歳、65歳時点での金融資産を今、正確には試算できませんが、この2200万円は確実に老後資金となりますので、まったく心配する必要はありません。
さらに、支出に関しては、教育費がなくなり、保険料の支払いもなくなっていますので、おそらく毎月20万円程度には削減できていると思われます。年間で240万円ですから、公的年金での不足額は年間60万~70万円程度になると思います。公的年金は現時点での見込額は172万円ですが、現状のペースで働いていけば、180万円ほどにはなっているはずです。
年間70万円を金融資産から取り崩していっても、30年以上持ちます。ですから何も心配することはありませんよ。
アドバイス3 住宅購入は慎重に。住居費が固定化され、負担になるかも
ただ、住宅購入については、慎重に考えていただきたいと思います。老後の住まいを心配なさるのはわかりますが、少なくとも、ここまでの試算は現状の住居費で出しており、それで生涯、問題ないのです。今の住居費の範囲内でマンション購入することは不可能、とまでは言えませんが、頭金や諸費用で手元資金が減ること、マンションなら維持管理コストが生涯かかること、何よりも、ローン返済のために頑張って働かないといけない、と無理をされるのではないかということ。マンション購入は思いのほか、体力も消費します。体調を崩されることが一番の心配です。
また、賃貸であれば安いところに引っ越す、気に入った場所に引っ越すこともできます。お子さんの進学先によっては、転居する必要もあるかもしれません。ご相談者が老後にどのような生活をしたいかにもよりますが、必ずしも住宅購入することが、老後の生活を安定させることにはならないように思います。
最後に保険についてですが、お子さんの医療保険は解約しても問題ありません。その他の保険は、当面は現状のままでいいかと思います。終身保険2本は、現時点で払済にして保障だけ残すということもできますし、60歳払込が終了した時点で解約してもいいと思います。お子さんの教育費や老後資金に不安があれば、その時点で現金化すれば、保険に加入し続けた意味があります。
当面は、現状維持。今の生活リズムを崩すことのないように、お子さんと楽しく生活を送ってください。また何か不安なことがあれば、ご相談をお寄せください。
相談者「赤べこ」さんから寄せられた感想
深野先生に直接アドバイスをしていただき、現状維持の生活で問題ないと太鼓判を押していただきホッと胸をなでおろしました。教育費に関しても、自分自身が奨学金を借りて苦労した経験があるので、子どもに関しては奨学金も必要なさそうだとのことで一安心です。住宅購入については、おっしゃる通りなので熟慮して判断したいと思います。これからの生活を後押ししていただいたようで前向きに頑張ってやっていけそうです。ありがとうございました。また、生活面に変化があった時はよろしくお願いいたします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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