頭が整理できず、将来が不安です……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、52歳の会社員の女性。現在、離婚協議中で別居しているが、2人のお子さんの教育費もあり、家計はきびしい状況に。夫との教育費負担でもスムーズに話が進まず、不安は募るばかりだとか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
息子2人の教育費もかさみます

息子2人の教育費もかさみます


■相談者
ねこみみさん(仮名)
女性/会社員/52歳
中部/賃貸住宅
 
■家族構成
長男(大学2年/21歳)、次男(高校3年/18歳)
 
■相談内容
初めてご相談します。
 
近々離婚予定の52歳会社員です。1年前に転職し、正社員になりました。夫とは別居して1年です。大学2年・高校3年の息子が私と一緒に家を出ています。婚姻費用として算定表から控えめに6万円を請求しましたが4万円を提示されました。いつの間にか3万円に減額され、それも催促しないとくれません。平均で2万3000円ほどです。家を出たあと、思いがけず手術を受けたり、また母が急に亡くなったり、いろいろなことが重なりまして、家計管理もガタガタです。私についてきた子どもたちに対して責任があるので、お金のことをしっかり考えていきたいと思っています。年金について、夫は年金分割はしない、放棄してくれと言っていますが、年金分割のうち「3号分割」を行う予定です。年金分割されると65歳から124万円、分割なしだと98万円です。また、新卒で勤めていた会社で基金があり、年額12万4000円がつくようです。離婚に際して、財産分与など、弁護士さんからアドバイスを受けています。息子の受験が終わると、成人年齢の18歳なので、養育費がもらえなくなるかもしれません。ただし、夫は、大学の学費は「ある程度は出す」と子どもたちには言っているようです。私から聞くと激昂し、話し合えません。このまま、主張せず、調停もせず、子どもたちの学費を出してもらう方がよいのかなど、悩んでしまいます。
 
先生には以下の条件で家計相談をさせていただきたいです。
 
定年の60歳まで正社員、その後は手取り15万円ほどで65歳まで、できれば68歳くらいまで同じ職場で働く希望です。子どもたちにはできれば100万円ずつくらいは用意して、大学の費用や成人式など助けてあげたいと思います。
 
今後は相続で、母から500万円、父から500万円となる予定です。地方に、父の持ち家があり、父は私に相続してもよいと言うのですが、今の仕事をできるだけ続けたいので、その間は賃貸暮らしとなり、家賃が発生します。

また、近いうちに相続で現金が入るので、投資にも挑戦したいと考えています。
 
頭が整理できず、将来への不安があります。アドバイスいただけますと大変うれしく思います。
どうぞよろしくお願い致します。
 
■家計収支データ
相談者「ねこみみ」さんの家計収支データ

相談者「ねこみみ」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)ボーナスからの使い途
データにある70万円(年間)は満額の場合。今年より支給予定。受験費用(予備校代含む)に25万円、その他10万円、貯蓄は35万円を予定。
 
(2)弁護士費用
今後、発生する額は66万~100万円。捻出先は、近日中に母からの相続として500万円が入るため、そこからと考えている。
 
(3)加入保険の保障内容
[相談者]
・医療保険(終身保障終身払い、死亡50万円、入院5000円、手術5万円)=毎月の保険料4900円
・がん保険(終身保障終身払い、入院5000円、診断給付金50万円、通院5000円、他)=毎月の保険料2500円
・個人年金保険(60歳から10年確定、年金額38万円)=毎月の保険料5000円
※過去に病歴があり医療保険の保険料は割高。がん保険はがん家系ではないので加入すべきが悩んでいる。
 
(4)今後の教育費について
[長男]
大学のあと2年分として約200万円。ただし単位が足りず留年の可能性があり。

[次男]
今年高校卒業後、希望大学に届かず、浪人となる。予備校費用50万円はすでに支払い済み。他に季節講習25万円あり。大学4年間の費用は約440万円を想定。また、正式に離婚となったら、母子家庭となり、給付型奨学金と返還型奨学金の併用を考えている。給付型は入学時30万円、毎月1万2800円。

[捻出先]
子ども名義の貯蓄(教育資金用)が現在360万円。長男と次男の大学資金に計640万円かかるため、280万円を相談者が負担。話し合いで夫が半分の140万円を負担。残り140万円については、長男は教育ローン、次男は奨学金を利用すべきか、頑張って相談者が負担すべきか悩んでいる。
 
(5)退職金について
金額は不明。正社員としての在職期間は短いため「100万円程度では」とのこと。
 
(6)退職後の生活
実家に戻ると収入を得るのは難しいため、その時点でフルリタイア。実家が空家になった場合(現在、父親・85歳が住んでいる)、そこに住むのか、あるいは売却して賃貸暮らしとなるかは未定。どちらにしても、老後はブログで情報を発信したり、好きな本や映像を楽しむ、ストレスのない暮らしをするのが希望。同時に、子どもたちにはしたいことをできるだけ後押しできるような、そんな人生にしたいと願っている。
 
(7)相談者の健康状態
病気は完治。今後、継続的な検査や治療、投薬は不要。
 
■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 がん保険は不要。生活コストを抑えることを最優先に
アドバイス2 老後資金を取り崩すペースを遅くしよう
アドバイス3 家計管理と継続して働くことで老後資金は準備可能
 

アドバイス1 がん保険は不要。生活コストを抑えることを最優先に

財産分与を含めた離婚協議については、依頼されている弁護士の方と望む方向で進めてください。年金分割についても、法で守られた権利ですから、行使されることが望ましいと思います。
 
問題はその先のライフプランとなると思います。具体的にシミュレーションしてみましょう。
 
まず、現在の家計収支ですが、収入にある婚姻費用は離婚後になくなり、その時点で家計は赤字になってしまいます。
 
ただ、大幅には無理ですが、多少なら支出の見直しもできるはず。とくに保険です。加入されているがん保険は、ねこみみさんも悩まれていますが、不要と考えます。がんに対する保障は、別途加入済みの医療保険でも対応できます。さらに、現状を考えれば、より厚い保障を確保するより、生活費の固定コストを下げる方が優先順位は上となります。結果、毎月の収支は赤字を出さないことを家計の目標として、ボーナスからは半分貯蓄できれば、年間35万円。8年間で280万円となります。
 
ただし、数年後にはお子さんたちも独立して、生活費も下がると想定され、月2万~3万円の貯蓄も可能となるでしょう。例えば、60歳までの8年間のうち、4年間は平均して月3万円貯蓄できたとすると、144万円上積みされて424万円。これに今ある貯蓄510万円を加算すると計934万円。
 
仮に、相続で1000万円を受け取られるとすれば、60歳の時点での手持ち資金は1934万円となります。
 
この間に発生する大きな支出が教育費。いただいたデータによると、現在確定しているものとして、ご長男の大学費用が200万円。ご次男の大学費用が440万円と、予備校の季節講習費用に25万円。これで計665万円。このうち、すでに用意している教育資金360万円を充てると、不足分は305万円。夫婦間の協議で夫側が140万円負担されるとのことですから、ねこみみさんの負担は残り165万円。
 
さらに弁護士費用を最大の100万円を想定して、これらを60歳時の手持ち資金から差し引くと、1669万円。これに退職金100万円、個人年金保険の年金総額380万円を前倒しで加算した、2149万円が計算上の老後資金となるわけです。
 

アドバイス2 老後資金を取り崩すペースを遅くしよう

60歳以降ですが、ねこみみさんは68歳まで現在の勤務先で働くことを希望されています。手取りで月15万円の収入を見込んでいますので、ボーナスでカバーしていた不定期支出等も含めて、毎月の生活費は月3万円程度の赤字に収めたいところ。それが実践できれば、65歳となるまでの5年間で、貯蓄=老後資金から取り崩す額は180万円。
 
65歳からは公的年金が支給されます。支給額は、年金分割の加算分を加えて、年額124万円とのこと。月割りの手取り額は10万円程度でしょうか。であれば、当初の3年間は毎月7万円ほどの貯蓄が可能。これで、60~65歳までの赤字を穴埋めして、まだ70万円ほどの黒字となります。したがって、68歳の時点で2221万円前後の老後資金が残ります。
 
68歳以降、リタイアして実家に戻られるとします。家賃がなくなりますが、代わりに固定資産税が発生します。それでも生活費は月13万円程度とすることも可能かもしれません。であれば、収入は年金だけでも、赤字は月3万円ほど。それが30年間だと、1080万円を取り崩します。老後の予備費として、医療・介護費用や住宅の修繕・リフォーム費用500万円として別途確保しても、98歳までにまだ640万円近くが手元に残る計算になります。
 

アドバイス3 家計管理と継続して働くことで老後資金は準備可能

この数字は、老後資金で大きく困ることはないというだけでなく、ねこみみさんが迷われているお子さんたちの大学費用の負担(140万円分)も可能であることを意味します。また、それとは別に100万円ずつ、お子さんに渡すこともできるでしょう。
 
もちろん、この結果となるには、前提条件があります。68歳まで勤務でき、少なくとも試算したとおりの収入が得られること。生活費も想定内に収めることが必要です。しかし、想定外のことが起きるかもしれません。それでも、可能と考える数値での試算ですから、マネープランの一定の目安にはなるはずです。
 
また、利用を迷われている奨学金については、給付型であれば積極的に利用してほしいですが、貸与型の奨学金の利用はお勧めできません。社会に出る前からお子さんがまとまった額の負債を背負うことは、資金を用意できない場合を除いて、できれば回避してほしいと思います。
 
もうひとつ、投資については、少なくともしばらくは控えるべき。とくに相続として手にするまとまった資金は、今後のマネープランにとって大きな収入です。投資による目減りというリスクは避けたいところ。お子さんたちが卒業し、ご自身も定年後、さらに数年働けるめどが立った段階で、それから考えても遅くはないでしょう。
 
ともあれ、離婚を機に、環境も家計も大きく変わるわけですから、今後について不安を感じることはしごく当然です。ですが、過度な不安にメリットはありません。また、自分を追い込むこともデメリットしかありません。しっかり家計管理をして、健康に留意しながら長く働き、かつ日々の楽しみも確保しながら、それでもねこみみさんなら老後資金が用意できると、私は思います。
 

相談者「ねこみみ」さんから寄せられた感想

いつもマネープランクリニックを拝読し、自分に当てはめて考えてみたりしていました。深野先生が私の家計管理について考えてくださるなんて夢のようです。がん保険の解約をし当面の支出を抑えること、投資はしばらく我慢すること、健康に暮らし長く収入を得ること、しっかり理解して実行していきます。子ども2人にも負債を負わせずに、私が両親からしてもらったように、学歴をつけてあげたいと思います。離婚の話し合い、就職、2度の手術、母の急逝と気持ちがついていけず、つらい時間もありましたが、前に進むしかないですね。深野先生、またマネープランクリニックのスタッフの皆様方に、心より感謝をお伝えしたいです。どうもありがとうございました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武

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