共演者同士で相談しながら作り上げたドラマ
――俳優さん同士が、お芝居についてアドバイスし合うのは、意外と珍しいことだと思うのですが、『拾われた男』の現場では、そういうこともあったのですね。仲野
共演者に芝居について聞いてはいけない空気はないのですが、人の芝居にあれこれ言うのはどうなんだろうという暗黙の了解みたいなものはあるとは思います。言ったことに対する責任は取れませんから(笑)。
だからこそ、沙莉ちゃんが僕に相談してくれたのは新鮮で、僕もイキイキしちゃって(笑)、「これどうしようか?」「こっちの方がいいんじゃない?」とか、いろいろと話しながら芝居を作り上げることができました。
伊藤
太賀さんは、私にとって“アドバイスをいただきたい人”だったんです。だから相談させていただきました。 ――やはり頼りになるオーラがあったんですね!
仲野
この出来事は一生忘れません!
伊藤
きっと今後、すごい相談されると思いますよ!
松尾さんの下積み時代への共感ポイントとは
――先ほど、「松尾さんの俳優としての苦い経験など、共感することもあった」とおっしゃっていましたが、具体的には共感ポイントはどこにありましたか?仲野
共感するところは本当にたくさんありました。オーディションに向かう姿、挑戦しても落ちまくっているときの悔しさ。そして、俳優をやっているけど、仕事がなくて、これで果たして俳優と言えるのだろうかと思わざるを得ない時間が山ほどあったり……。漠然と夢はあるけど、その夢を追わなくても生きていけている時間など、とても共感しました。
そんなときに、仕事が決まったときの喜び! 小さな仕事でもうれしくて仕方がないんですよ。それこそ“拾われた男”じゃないけれど、「あなたはここにいますよ」と言われているような気がして。存在を証明されたような気持ち。そこも共感できましたね。 伊藤
私も同じ俳優として共感するポイントはたくさんありますが、オーディションのために完璧に覚えたはずのセリフが、本番で飛んで抜けてしまうところは、とても共感できました。「もう!なんで!」という気持ち。なぜだかわからないけどセリフが飛んじゃったという。
仲野
その気持ち、僕もわかります。
伊藤
悔しいけれど、オーディションは短時間で何を見せられるかという時間だし、どういう状態でいられるかというのも審査する方に見られる時間なので、誰も責められない。自分しか悪くないんです。でも一生懸命頑張って練習した事実があるからこそ悔しいし、主人公がそうやってもがいている姿は共感できましたね。
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