貯蓄

平均貯蓄額1880万円の真実!60歳以上でも実態は1049万円?【2022年5月発表・最新家計調査】

2022年5月に発表された総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、2021年の平均貯蓄額は1880万円(二人以上の世帯)と昨年から89万円の増加。しかし平均貯蓄額は、生活実感とかけ離れていると捉える人も少なくありません。ニュース的な数字だけではなく、発表されたデータから真実に迫ってみました。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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平均貯蓄額からは見えない家計の実態を深掘り!

2022年5月に総務省統計局が発表した、2021年調査の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」では、二人以上世帯の平均貯蓄額は1880万円で、前年の1791万円から89万円、5.0%の増加となりました。
 
貯蓄保有世帯の中央値は1104万円ではあるものの、年代によっては、あまりにも実感とかけ離れた数字で、貯蓄意欲が湧くどころか、「もっている人はもっているんだね」という感想で終わってしまうでしょう。しかし実態としては少し異なり、60歳以上でも、純粋な貯蓄額(貯蓄-負債)は1049万円であると知れば、自分の老後資金は大丈夫なのか、今から、少しでも多く貯蓄をしなければならない、と気づくのではないでしょうか。
 
発表されたデータから、順番に見ていきましょう。
 

40歳未満だけで見ると平均貯蓄額は726万円

まずは、年代別の平均貯蓄額です。
年代別・貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯)

年代別・貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯)


過去10年の年代別の平均貯蓄額の推移ですが、傾向としては変わらず、年齢が高いほど貯蓄額は多くなります。50代の平均と全体の平均がほぼ同じように推移し、60代以上と40代以下で二分されているのがわかります。平均貯蓄額1880万円と聞くと驚いてしまいますが、40歳未満の平均貯蓄額は726万円、実情は600万~700万円くらいなのではないでしょうか。
 
60代以上の世帯は、長い時間をかけてお金を貯めてきた成果ともいえますし、退職金などの一時金によって貯蓄額が増えたということもあるでしょう。40歳未満の世帯は、収入が思うように伸びないばかりか、出産・育児などで世帯年収が減り、貯蓄に回せるお金がないというケースもあるでしょう。40代になって平均貯蓄額が1000万円を超えるので、若年層は、これを目標に貯蓄計画を立てるといった考え方をしてもいいのではないでしょうか。
 

40歳未満の住宅ローンなどの負債は全年代の中で最大

平均貯蓄額とともに発表されるのが「負債」。2021年の負債平均額(負債ゼロ世帯も含む)は567万円で、前年から0.9%減少。負債内容のほとんどが住宅購入のための住宅ローンで、負債額の約9割を占めます。負債額も年代別に見てみると、貯蓄額とは反対に、若年層が多く、40歳未満で1366万円と全年代の中で最大となっています。
年代別・負債現在高の推移(二人以上の世帯)

年代別・負債現在高の推移(二人以上の世帯)


負債保有世帯は全体で37.7%。40代が63.7%と最も高い割合を示しています。負債保有世帯のみの負債平均額は1505万円で、40歳未満では2308万円、40代で1840万円、50代で1314万円、60代で732万円という結果です。
 
年代が上がるほど住宅ローンの返済が進み、負債が減るのは当たり前かもしれません。

40歳未満については、貯蓄を見ると前年に比べ19万円、2.8%の増加でしたが、負債は前年に比べ166万円、7.7%もの増加となっています。住宅・土地価格の高騰や低金利のため、住宅ローンの借り入れが増加傾向にあると思われます。
 

本当の貯蓄額はいくら?「貯蓄-負債」だと50歳未満はマイナス!

家庭の資産というと金融資産、つまり貯蓄や投資の金額に目が奪われがちですが、住宅ローンなどの負債があれば、それもマイナスの資産として考えておくべきです。不動産を所有していれば、活用して資産に組み込むことができますが、負債が残っている間は、不動産の評価を資産として捉えることはできないでしょう。つまり、家庭の本当の資産としては「貯蓄-負債」が純粋な貯蓄額ということがいえます。
 
これまでのデータをもとに、年代別の純粋な貯蓄はどうなっているのかを見てみましょう。
年代別・貯蓄と負債の関係(二人以上の世帯)

年代別・貯蓄と負債の関係(二人以上の世帯)


全体での平均貯蓄額は1880万円ですが、そこから負債額567万円を差し引くと、純粋な貯蓄額は1313万円です。これを年代別に見ると、40歳未満では貯蓄額が726万円なのに対して、負債は1366万円。差し引き640万円のマイナスで債務超過の状態です。住宅ローンがいかに重いものかといわざるをえません。
 
しかし、これもまだ実態に即していません。なぜなら負債がない世帯も含めた平均だからです。負債がある世帯だけの平均でまとめたが次の表です。
 

負債がある世帯だけで見ると60歳以上も安泰ではない!

年代別・貯蓄と負債の関係(二人以上世帯のうち、負債保有世帯)

年代別・貯蓄と負債の関係(二人以上世帯のうち、負債保有世帯)


負債がある世帯だけを見ると、全体平均でも様相が変わり、貯蓄額は1250万円に対し、負債は1505万円平均でもマイナス255万円の債務超過なのです。40歳未満では、マイナス1611万円と大きな借金を抱え、貯蓄を増やせない状況にあるといえるでしょう。
 
50歳以上で債務超過は解消されてくるものの、60歳以上が実は深刻で、貯蓄額は一見多いように見えますが、負債がある世帯の貯蓄額は1781万円、負債は732万円残っているため、純粋な貯蓄額は1049万円という結果に。
 
会社員であれば、退職金で住宅ローンを完済し、残りは老後資金にと考える世帯が少なくありませんが、定年退職後も負債が残る世帯も少なくありません。定年退職後も働いて収入を得ること、負債をできるだけ早く返すこと、そもそも身の丈以上の負債を抱えないことなど、このデータから考えておくべきことが見えてくるのではないでしょうか。
 
総務省の「家計調査報告」に限らず、「平均貯蓄額はいくら?」といったニュースをよく目にしますが、全体の数値は大きくなりがちです。しかしデータを深掘りしていくと、実態としては、それほど喜ばしいことでもなく、驚くべきことでもなく、どの年代にとっても、深刻な問題が見えてきます。
 
人と比べる必要はまったくありませんが、こうしたデータをひもときながら、わが家の資産はどうなっているのか、一度洗い出しをしてもいいのではないでしょうか。

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