<目次>
まずはおさらい! 在職老齢年金とは?
老齢厚生年金の受給権を持つ人が、同時に厚生年金に加入して働いていると、お給料やボーナスの金額によって老齢厚生年金の支給額が調整されます。この制度を在職老齢年金制度といいます。「調整」という言葉ですが、要は老齢厚生年金の減額、カットです。この制度によって年金が減額されないように勤務を抑えたりする人もいるわけですが、今回の改正によって65歳前について、老齢厚生年金が減額される基準額が引き上げられ、働きながら年金をもらいやすくなりました。以下、詳しく見ていきます。
在職老齢年金制度の改正とは?
基準額が28万円から47万円に
まず、在職老齢年金の計算方法を見てみましょう。なお、細かい点は別記事に譲ることにして、ここでは触れません。- 老齢厚生年金月額(原則として報酬比例部分の額)
- 給与月額(標準報酬月額)
- 過去1年間に受けたボーナス(標準賞与額)合計の1/12
この「一定の基準額」、65歳前の場合、令和4年(2022年)3月までは「28万円」でした。これが、同年4月からは「47万円」に引き上げられました。これにより、65歳前に働きながら老齢厚生年金をもらう場合に年金が減額されにくくなりました。
具体的に計算してみましょう。
老齢厚生年金月額:年額120万円として、月額10万円
給与月額:30万円
ボーナス:過去1年間に60万円として、月額5万円
これらを合計すると、
10万円+30万円+5万円=45万円
となります。
従来の基準額28万円だと、
45万円-28万円=17万円
17万円÷2=8万5000円……カット額(月額)
10万円-8万5000円=1万5000円……支給額(月額)
このように老齢厚生年金の支給額が大幅カットになっていました。これが、基準額47万円になることにより、45万円<47万円のため、在職老齢年金による老齢厚生年金の支給額のカットはないことになります。
上の例だとカットされていた年金収入が月額8万5000円ももらえることになるので、かなりの改善が見込めますね。
今回の改正で注意しなければならないことは?
働きながら老齢厚生年金をもらいやすくなる今回の改正ですが、いくつか注意しなければならないことがあります。以下に詳しく解説します。1. 65歳以降の人は従来と変更がない
今回の改正は、65歳前の老齢厚生年金が対象です。65歳以降の在職老齢年金は以前から基準額47万円ですので、特に変わらないことになります。法改正が国会で議論されているときには65歳以降の基準額引き上げも取り沙汰されたようですが、結局は変更なしに落ち着きました。
ちなみに、制度上「特別支給の老齢厚生年金」がない、老齢厚生年金が65歳支給となる生年月日の人が繰上げ受給をしている場合は、以前から65歳前でも47万円基準で計算されていましたので、こちらも変更なしです。
2. 高年齢雇用継続給付との調整についても従来と変更がない
従来も在職老齢年金の計算とは別に、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けている厚生年金加入者は、別途年金が減額されていましたが、こちらの減額は今後も継続します。高年齢雇用継続給付を受給している人は、老齢厚生年金を全額受給できるとは限らない点には注意が必要です。
3. 47万円基準になっても年金が必ず受給できるとは限らない
これは当たり前かもしれませんが、高給取りの人の場合、47万円の基準で計算しても老齢厚生年金が減額されたり、全額停止となることもあります。改正があったからと言って必ず老齢厚生年金が受給できるとは限らない点は注意しましょう。
年金が増える場合、いつから振り込まれる?
法改正は令和4年(2022年)4月ですから、同年4月分の老齢厚生年金から計算が変わります。そして、4月分、5月分の年金は6月に振り込まれることになっています。6月の振り込み日の少し前に、年金額変更通知書が届くことになっていますので、そちらで金額を確認してください。より柔軟な働き方が選択できるようになる
今回の改正で、多くの人が働きながら年金をもらいやすくなりました。これまで老齢厚生年金の減額を避けるために勤務をセーブしていた人も、この機会に少し働き方を見直してみるのもいいかもしれませんね。【関連記事】