不要な情報はすぐに忘れる? 脳の「選択的注意」という仕組み
実は、私たちの脳はとても「忘れっぽい」のが基本設定です。目から入ってきた情報、耳で聞いた情報、肌で感じた情報、さまざまな情報を脳は秒単位で受け取っています。そのすべてを覚えていたら、いくら優秀な脳でもパンクしてしまいます。そのため、入ってきた情報は基本的には覚えることはせず、忘れるようにできています。
このような情報の取捨選択をする仕組みを「選択的注意」と言います。私たちは画像を見たときには、すべてを見ているつもりでも、実は注意を向けていることしか脳は処理できていないのです。
こちらのダニエル・シモンズさんが作成した有名な心理学の動画を見てください。そして白いシャツを着たチームの人達がパスをする回数を数えてみてください。
パスの回数は何回でしたでしょうか?
有名な動画ですから、この動画のタネを知っている人もたくさんいると思いますが、その他にも変化したことが2つあるのに気づきましたか? 初見で気づけた人がいたら大したものです。
この動画からわかるように私たちの脳はすべてを見ているつもりでも、実は気づかない、覚えていないことのほうが圧倒的に多いのです。
うっかりミスが多い人は、大事なことには意識的に注意を向けて
湯婆婆の画像をぱっと見ると、特徴的な鼻や、しわくちゃのお肌や、顔の真ん中のできものなどに注意が向きがちで、なかなか耳飾りには注意が向きません。また、日常的に大切な情報ではないので、絶対に見たことがある人でも、忘れてしまうことがあるのは無理もないことです。大切なのは、大事な情報まで「不要な情報」と判断して忘れてしまわないことです。脳のつくりには「選択的注意」という機能があり、基本的には重要ではなさそうなことは忘れてしまうのだということをしっかりと意識して、大事な情報には意識的に注意を向け、細かくじっくりと見る癖をつけましょう。
特に、仕事が忙しかったり、ストレスが重なっていたりすると、目の前のたくさんのことにすべてしっかり取り組むことはなかなか難しいと思います。「うっかりミス」や「ちょっとした物忘れ」が多い場合、見たはずなのに処理されないという脳のクセが原因だと考えられます。「選択的注意」のことを意識するだけでも改善できることもあるのです。
意識することに加え、睡眠時間を十分とったり、散歩や遊びに行くなどリフレッシュをすることを心がけたりすることで、選択的注意を向ける脳の余力も生まれてきます。