発売から19年……森山直太朗「さくら(独唱)」が今なお愛されるワケ
先日LINE MUSICが発表した、10代のユーザーが選ぶ「春ソング・卒業ソングランキング2022」(※1)で森山直太朗さんの「さくら(独唱)」が春ソングランキングで1位、卒業ソングで4位を獲得した。2022年でデビュー20周年を迎える森山直太朗さん
今年でデビュー20周年を迎える森山さんが世に出るきっかけになった曲……ということはほとんどの10代にとって“生まれる前の曲”なのだが、それがこのように今なお愛され続けるのはなぜだろうか。
人気の理由は「歌詞の文字数」にある?
日本人にとって精神的な礎になっているという「桜」をテーマにしているから? 毎春話題になりやすい卒業ソングだから? 森山さん自身がこの曲を歌わないライブはほとんどないというほど大事に歌い続けているから? いやそんな単純な理由ではない。「桜」や「卒業」をテーマにした曲なんて掃いて捨てるほど転がっているし、個人の想いだけで曲が愛され続けるなら世の歌手は苦労していない。長く名曲であり続けるにはそれなりの構造的な理由があるはずだ。
そこで筆者は「歌詞の文字数」に注目してみた。毎年数々のヒット曲が生まれていた1960年代から1980年代にかけて、歌詞の文字数は200~350文字程度であることが多かった。しかし2000年代以降それは徐々にインフレし、近年のJ-POPの歌詞の文字数はおおむね500~600文字にふくれあがり、中には800文字を超えるものも珍しくなくなってしまった。
歌詞の文字数が多くなるということはインパクトのある言語フレーズが作りにくくなるということ。メロディーの中に小刻みに文字をつめ込むと、リズム感は良く感じるが反比例して歌詞のインパクトが弱くなる。一度に記憶できる情報量には限界があるし、1度や2度聴いたくらいでは何のことを歌っているのか分かりづらくなってしまうのだ。
「さくら(独唱)」の歌詞の文字数は290文字。2000年代当時にしてはきわめてメッセージが端的でわかりやすい歌詞だったといえるだろう。だからこそ「桜」や「卒業」というテーマを最大限に活かして、同時代では珍しい人々の心に残る楽曲になることができたというわけだ。同年に発表され今なお愛され続ける松平健の「マツケンサンバII」が303文字、SMAPの「世界に一つだけの花」が395文字と、それぞれ歌詞の文字数が少なかったのも単なる偶然ではない。
もちろん音楽は歌詞の文字数が短ければそれで良しというものではないが、人々の心に残るヒット曲が1年に1、2曲あればいい方という近年のJ-POPシーンの状況を見ていると、「さくら(独唱)」のそんな特殊性に注目してしまうのだ。
参考
※1:10代のユーザーが選ぶ「春ソング・卒業ソングランキング2022」について調査
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003659.000001594.html)
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