Q:配偶者の扶養の範囲内って、どういう意味?
「仕事がきつくて、とにかく会社を辞めたい。夫の扶養の範囲内でパートをすると有利と聞くけど、結局『扶養の範囲内』ってどういうこと? 子どももほしいし、家もほしいし、貯金もないから不安。正社員を手放してしまっていいのだろうか?」(30代)扶養の範囲内で働くってどういうこと?
A:就労時間と収入を抑えて働くことです
相談者は仕事がハードで、夫の扶養の範囲内で働くことを検討しているようですね。そもそも扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」があります。就労時間と収入を抑えて働くことで、扶養する人の税金が軽減されたり、扶養される人が社会保険料を払わずにすむというメリットがあります。以下の説明は、扶養する人を夫、扶養される人を妻とします。扶養に入ることのできる年収の基準ですが、まずは税法上の扶養は、妻の年収103万円以下に抑えることができれば、夫の税法上の扶養に入ることができ、夫の所得税が軽減され、妻も所得税を払う必要がありません。
一方、社会保険上の扶養は、原則として妻の収入が130万円未満であれば、夫の社会保険の扶養に入ることができます。妻自身が社会保険に加入する必要はありませんので、妻自身の手取り金額が少なくなることがありません。
ただし、従業員数等の要件を満たす企業で、週20時間以上働き、月収8万8000円(年収106万円)以上等の要件を満たした場合は、パート・アルバイトであっても本人が社会保険に加入することになります。2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上の企業、と社会保険の加入の対象者は増えていきます。
妻が夫の扶養の範囲で働くと、企業によっては、夫に「家族手当」が支給されることもあります。ただし、妻が会社員を辞めて扶養の範囲内で働くことになると、世帯収入は下がる場合が多いので、そもそも世帯収入がどのように変化するか、どういうメリットがあるのかを考えておく必要があります。世帯年収が少なくなったとしても、妻に時間の余裕ができ、心身ともにストレスが軽減されるのではあれば、それも大きなメリットかと思います。
注意しておきたい点としては、扶養の範囲で働く場合は、パート・アルバイト等の非正規雇用となることが多くなるでしょう。非正規雇用は立場が不安定、正社員は安心ということは必ずしもいえませんが、企業業績が悪くなった際、まずパート・アルバイトから雇用の継続ができなくなる場合があります。
また正社員からパート・アルバイトとなり、扶養の範囲で働くことはそれほど難しくないことと思いますが、扶養の範囲で働いている状態から正社員として再度就職することはハードルが高くなるかもしれません。
現在の就労がつらい場合は、少し休職して、様子をみるのも一つの方法ではないかと思います。一度お休みをして、仕事へ復帰し、それでも続けられない場合は、扶養の範囲で働くことを検討してみてはいかがでしょうか。
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監修・文/深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)