ワーケーションとは……コロナ禍で脚光を浴び、認知率8割に
コロナ禍で注目されたワーケーション。温泉地なら湯治にもつながるさまざまな健康効果も
なかなか普及しなかったワーケーションですが、皮肉にもコロナの流行とともに注目を浴び始めます。2020年7月に、感染対策と経済活動の再開の両立を目的として、政府の観光戦略実行推進会議が「ワーケーション」を観光振興の柱としたことで、改めて脚光を浴びることになったのです。
2020年に観光庁が行った調査※では、ワーケーションに対する企業の認知率は8割に上っています。
ワーケーションは三方良し! 従業員・企業・地域それぞれにメリット
ワーケーションはよく「三方良し」であると言われています。三方とはワーケーションに関わる「従業員」「企業」「受け入れる地域・自治体」のことです。働く人である従業員にとっては、普段とは違う観光地やリゾートで仕事ができるため、リフレッシュになり、ストレスも軽減できるのではないかと考えられています。また、新たな出会いやアイデアが沸き上がるといったこともあるでしょう。ワーケーションとしての勤務の前後で有給休暇を取れば効率よく観光もできます。
企業側は、従業員の満足度があがることで離職率を減らす効果なども期待できますし、イメージアップにつながります。
受け入れる地域・自治体側も、コロナで観光客が減る中で長期滞在してくれる人が増えれば、経済的にプラスになるでしょう。
温泉地ワーケーションのメリット……湯治にもつながる健康効果
もともと日本の温泉には、「湯治」という長期滞在しながら体の療養を行う文化がありました。温泉地に連泊して滞在すること自体、歴史的にも親和性が高い温泉の楽しみ方と言えるでしょう。温泉療養には「転地効果」作用もあります。普段の生活の場とは違う温泉地に滞在することが心身への刺激となり、体調が整うという作用です。温泉医学ではこの作用のことを特に「総合的生体調整作用」と呼んでいますが、1週間以上温泉地に滞在することで、乱れたホルモン値が正常化してくるといったことは、以前より医学研究として報告されています。
このように、仕事をしながら体調改善も期待できるため、ワーケーションは従業員や企業にとって一石二鳥の面もありそうです。たしかに、仕事に疲れたからちょっと温泉へ……と絶景温泉で手足を伸ばせれば、疲れも取れて新しいアイデアも浮かんできそうです。
実際に、現在もいくつかの地域でモデル的なワーケーションが行われており、その効果などが検証されつつあります。現時点でも、従業員の自律神経機能が整ってきたり、ポジティブな感情が増加したり、チームワークが向上したりといった、良好な影響が報告されています。
ワーケーションにお勧めの温泉地
ワーケーションで温泉地に滞在する場合、企業で働いている方は、まずはお勤めの会社が勤務制度としてワーケーションを取り入れているかを確認しましょう。晴れてワーケーションができそうであれば、滞在する温泉地探しです。観光目的の旅行とは少し違った観点で温泉地を選ぶのがポイントです。ワーケーションの場合、観光と違って同じ場所に複数泊することが多いので、食事が複数泊に対応しているかなども確認しておくとよいでしょう。多くの温泉旅館では、1泊2日を前提として食事の献立を組み立てているところが多いです。豪華な食事も連日では胃腸に負担になってしまいます。またWi-Fi環境が良好か、仕事に適したワークスペースがあるか、近くにスーパーなどがあるかといった長期滞在を考えた選択が必要です。
観光庁や大手旅行会社ではワーケーション向けの情報を発信していますので、あらかじめワーケーションの受け入れに積極的な旅館やホテル、地域を選ぶと良いでしょう。
また、ワーケーション先の温泉地を選ぶ際の注意点として、湯治の時のような「湯あたり」がありうることも注意が必要です。「湯あたり」とは、温泉地に滞在し始めて4~5日目に起こることがある、だるさや疲れ、眠気が出てくる現象のことです。酸性泉や硫黄泉のような皮膚への刺激の強い温泉の場合、連日の温泉で皮膚が荒れてくる人もいますので、泉質にも注意したいところです。多くの場合は温泉入浴を休むと症状は改善してきますが、連日長時間入浴しすぎることは避けたほうがよさそうです。初めてワーケーションで長期間温泉地に滞在する場合は、単純温泉や塩化物泉、硫酸塩泉、炭酸水素塩泉、炭酸泉など、比較的マイルドな温泉を選ぶのが無難です。
ワーケーションは、昔の湯治にも通じるような、古くて新しい温泉の利用法です。温泉を欲張りすぎず、上手に活用しましょう。
■参考
※新たな旅のスタイル(PDF)(観光庁)