残念な教え方 第3位:学校や塾の先生の教え方を“上書き”する教え方
自分が得意科目だった勉強を子どもに教える際にやりがちです。たとえば、子どもが学校や塾の授業でとってきたノートを見て、「もっと、いい方法がある」と自分が知っている解法を披露することです。自分の知っている解法の方が、子どもが学校や塾で教わってきた方法よりも優れていると思うことは、あり得ることです。でも、学校や塾で子どもが教わったやり方を否定するのは、要注意です。
その理由は3つあります。
まず、学校や塾は、優れているようには思えない解き方をあえて教えている可能性が高いからです。学校や塾では年間のカリキュラムが決められています。カリキュラムは、一個人の考えではなく、長年、多くの専門家たちが議論を重ねて、作られたものです。学校や塾が今回、その教え方をしたのは、後に教えることとのつながりを踏まえて、計画的に選択して教えている可能性が高そうです。
次に、親が優れていると思っている解き方は、今の時代には合わない可能性があるからです。入試改革に合わせて、塾のカリキュラムやテキストは毎年更新されています。学校の指導要領も小学校は2020年度、中学校は2021年度、高等学校は2022年度から10年ぶりの大幅改訂、全面実施になります。昭和に学んだ解法を、令和に学ぶ子どもたちに教えるのは、私たちが明治や大正の解き方を教わるようなものかもしれません。
最後の理由は、親が学校や塾を否定すると、子どもも学校や塾の先生を軽視することになりかねないからです。本来であれば、学びを得られるはずの授業であっても、子どもが先生のことをバカにしてしまって、学ぶ機会を減らしてしまうのは避けたいですよね。親の価値観は子どもに影響します。
自身の解き方を子どもに教えるのであれば、まず、学校や塾ではどう教わったかを確認しましょう。そうすることで、知らずに、学校や塾で子どもが教わったやり方を否定するのを避けられます。その上で、学校や塾のやり方を上書きするのではなく、「こういう解き方もあるよ」というように、別解として紹介するのがいいでしょう。
残念な教え方 第2位:とにかく“覚え込ませる”教え方
特に、算数や数学では、解くのに便利な公式がいろいろ登場します。そのような公式を使いこなせれば、問題をかんたんに、早く、正確に解くことが可能になります。でも、そのような公式を、「なぜ、そのような公式が成り立つのか」を理解させずに教え込むと、応用問題に弱い子になりかねません。
近年の入試問題は、中学、高校、大学受験問わず「思考力」がキーワードになっています。「知っていれば解けるが、知らなければ解けない」という知識型の問題は少なくなり、与えられた情報をもとに、解き方をその場で考え出すことが求められる思考型の問題が多くなっているのです。
したがって、とにかく公式を覚えて、当てはめれば答えは出せる、というやり方は基本問題でしか役に立ちません。それよりも、できれば公式を使わない解き方、公式を使うならその仕組みを理解して使うことで、初見の応用問題にも対応できる思考力が身につくのです。
国語の語彙や漢字、社会や理科の知識事項の暗記も要注意です。「こういうものは、とにかく、くり返すことで頭に入るものだ」という昭和時代の勉強方法では無理が出ますし、なによりおもしろくありませんよね。
語彙であれば熟語に使われている漢字の意味、漢字であれば象形文字や会意文字、偏やつくり、社会や理科であれば、なぜその名前になっているのか、似たようなもののグループには他にどんなものがあるのか、対照的なものはどんなものがあるのか、というような背景を理解することを優先するほうが実用的です。
単純暗記はすぐに思い出せなくなりますが、一度理解したことは、そうかんたんに忘れるものではありません。「そういうことだったのか」と気づくおもしろさもあります。勉強は、おもしろいという感情とセットで取り組むことで、飛躍的な成果が得られます。
残念な教え方 第1位:子どもが考えているのを“待たずに”説明する教え方
子どもが考え込んでいると、じれったくなってつい「ちょっといい? これはね……」と教えたくなることでしょう。でも、その教えたくなる気持ちをガマンするのが、教えるのがうまい親です。いや、むしろ、教えるのがうまい親は、できるだけ教えません。
なぜなら、教え方がうまい親は、わが子の知識を増やすことよりも、思考力を高める方が本人のためになることを知っているからです。魚(答え)を与えるより、魚の釣り方(考える力)を身につけさせるのですね。
子どもが問題を解けなくて、考え込んでいる時間はむだな時間ではありません。
筋トレでいえば、重いダンベルを持ち上げようと筋肉に負荷がかかっている状態です。問題を解こうと、あれこれ考えている時間は、脳に負荷がかかって、思考力が鍛えられている瞬間です。考え込んでいる時間が、思考力を高めるのです。
子どもが次から次へと問題を解いていたら、親として頼もしく感じることでしょう。でも、深く思考せずにどんどん問題を解くのは勉強ではなくて、ただの「作業」です。思考力のトレーニングにはなっていません。
一見むだな時間に思える、子どもが考え込んでいる時間は、思考力が鍛えられているゴールデンタイムです。
子どもが「もうわからない」とギブアップするまでは、助け舟を出したいのをガマンして見守りましょう。でも、そうは言っても、見守り続けるのは忍耐力がいるものです。ですから親も自身の仕事を進めながら、横目で子どもを見るくらいの方が穏やかに精神を保てます。
教え方がうまい学校の先生や塾講師は、巧みな話術で生徒たちに授業するイメージがあるかもしれません。でも、本当に教え方がうまい先生は、意外と口数少なく、最小限の考える材料を示す程度です。
なぜ、知識があるのに、それらを生徒たちにいろいろ教え込まないのでしょうか。それは、教わったことよりも、自分で考えてたどり着いたことのほうが記憶に残ることを理解しているからです。
子どもは、答えを教わるよりも、たとえヒントをもらったとしても、自分で答えを出せたときのほうが喜びに満ちた表情を見せます。そんな喜びの感情が、勉強のおもしろさを知る第一歩です。
できるだけ教えないで、見守る。見守り続けるのがむずかしければ、子どもに集中しすぎないで、何かをしながら見守る。ヒントは小出しにする。これらを取り入れると、子どもの学びの姿勢が変わってくることでしょう。
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