感染症

オミクロン株の感染力・危険性・予防法……国内でも市中感染

【医師が解説】オミクロン株の市中感染が国内でも確認されました。オミクロン株は重症化率や死亡率は低いといったことも言われていますが、海外の状況で油断するのはおすすめできません。オミクロン株のどの点が脅威なのか、今現在わかっていることと、一人一人がすべきことを解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

オミクロン株、国内でも市中感染を確認…国内外の感染拡大状況は?

新型コロナウイルスのオミクロン株

日本国内でも市中感染が確認されたオミクロン株。感染力、リスクは?

国内でもオミクロン株の市中感染が確認されました。オミクロン株は以前南アフリカで流行した新型コロナウイルスの変異株であるベータ株がさらに変異したもので、従来のウイルスから30カ所が変異していると見られます。感染力が高く、すでに南アフリカで主に流行しているのはデルタ株ではなくオミクロン株です。

日本ではこれまで空港の検疫で陽性者が発見されていましたが、12月22日に大阪市内で初の市中感染が報告されました。今後も市中感染の可能性は高くなると考えるべきでしょう。
 

オミクロン株のリスク・変異ウイルスは何が脅威なのか

オミクロン株が流行している海外の報告になりますが、2021年12月12日時点でイングランドでは5,006例のオミクロン株感染例が報告されています。このうち1名は死亡例、10名の入院例です。この数値だけを見ると死亡率や重症化率は低い、脅威ではない変異株と感じるかもしれません。

オミクロン株については実際にまだわからないことも多いのが現状ですが、変異株が出るたびに警戒感が高まるのは、変異株には
  • 感染・伝播性の上昇
  • 毒性の上昇
  • 免疫逃避
  • 薬剤耐性獲得
などの可能性が懸念されるためです。

オミクロン株の場合はどうなのか、一つ一つ見ていきましょう。まず「感染・伝播性」については、南アフリカなどでデルタ株からオミクロン株に主な流行株が変わってきています。加えて、イギリスの調査では、オミクロン株感染例からの家庭内の二次感染率は、デルタ株感染例と比較して約2~3倍上がっていると報告されています。そのため、デルタ株よりも感染・伝播性は高くなっていると考えられています。

「毒性の変化」については新たな変異株ということで油断はできませんが、現状では上記の通り重症化率や死亡率が従来の株よりも高い様子はなく、毒性が高まっているという報告はありません。

「免疫逃避」「薬剤耐性の獲得」というのは、ワクチン接種後に獲得した免疫が効かずにブレークスルー感染してくることや、従来の株には効いていた薬剤が効かなくなっていることを指します。

ファイザー社製のワクチンの場合、2回接種後2~9週間ではオミクロン株に対する有効率は88%(95%CI 65.9-95.8)とデルタ株(88.2 (95%CI 86.7-89.5))と同等でした。しかし2回接種後10週以降では、デルタ株よりもオミクロン株に対する有効率が低く、2回接種後20週以降においては、デルタ株に対する有効率が60%強であるのに対し、オミクロン株に対する有効率は35%程度であったと報告されています。ファイザー社製の3回(ブースター)接種後2週以降においては、オミクロン株に対する発症予防効果は75.5%程度であったとされています。

抗体治療では、ソトロビマブ(ゼビュディ)は、オミクロン株に対して効果を維持していますが、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)では効果がなくなっているという報告もあります。

つまり、現時点では、オミクロン株は「感染・伝播性の上昇」「免疫逃避」「薬剤耐性の獲得」が見られるため、今後パンデミック(大流行)が起こる可能性があります。大流行により感染者が増えれば、割合としては少なくても、一定数は重症化する可能性があること、そして、今までの薬剤では効果がなくなる可能性が警戒されています。
 

オミクロン株が重症化しにくいなら、心配は不要なのか

新型コロナウイルス感染症が重症化するのは、発症後1週間前後ですので、評価するのはある程度の期間が必要になります。南アフリカでは重症化は少ないとされましたが、他国の状況がそのまま国内でも同じであるとは考えないほうがよいでしょう。

例えば南アフリカの人口は若年者が多いのに対し、日本国内は少子高齢化傾向が強いです。さらに南アフリカでは以前ベータ株が流行したのに対し、日本ではベータ株の流行はありませんでした。その意味では、今の段階で軽視しない方がよいかもしれません。発生状況や感染拡大状況を見ながら、正しく判断していくことが重要です。
 

オミクロン株の感染対策・予防法……従来株と同じように対策を

感染拡大を防ぐ方法は、どの変異株も基本は同じです。新型コロナウイルス感染症が人から人に感染する以上、これまで通りの感染対策を継続することが大切です。

手洗い、アルコール消毒、マスクなどの感染対策、人混みや換気の悪い場所を避け、間近で会話や発声を避けること。いわゆる「三密を避ける」ことです。

この2年で感染対策は日常生活の中に定着してきたかと思います。感染対策も継続は力ですし、無理なく習慣になればベストです。免疫を維持するためには、規則正しい生活、バランスの取れた食事、良い睡眠を心がけて、一人ひとりが感染対策・感染予防を行っていきましょう。
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