勤務地が都内のため1LDKのコンパクトマンションを購入したい
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、一人暮らしで今後は賃貸が借りづらくなること、もっとしっかりした物件に住みたいことからマンション購入を考える46歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。もっとしっかりした造りのマンション、購入できますか?
■相談者
毛玉さん
女性/会社員/46歳
東京都/借家
■家族構成
一人暮らし
■相談内容
マンションを購入したいという希望があるのですが、自分にそれが可能かどうか判断できず悩んでいます。現在は東京都内で賃貸アパートに一人暮らししていますが、将来、年を取ったら賃貸で借りることは難しいのではないかという不安や、もっとしっかりした物件に住みたいという希望があり、マンション購入を検討中です。勤務地が都内のため1LDKのコンパクトマンションを購入したいのですが、都内はやはり価格が高く、貯金もあまり多くないため手が出ません。
現在は毎月会社の財形貯蓄に2万円、つみたてNISAで3万3000円の積み立てをしているほか、余った分は貯蓄に回すようにしています。現状、もしくは将来的にマンション購入は可能でしょうか。
■家計収支データ
■ 家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
財形貯蓄へ34万円、あとは家電などの買い替えやレジャー費として10万円ほど。残りは普通預金へ貯蓄しています。
(2)貯蓄について
財形2万円は給与天引きで、毎月の貯蓄額には含まれていません。手取り28万円、ボーナス60万円の中から、財形貯蓄で毎月2万円×12カ月と、ボーナス17万円×2回で、年間で計58万円を財形貯蓄へ回しています。
(3)投資商品について
つみたてNISAは、毎月3万3000円を積み立て×12カ月で年間40万円。
(4)家計収支について
手取りから支出を引くとだいたい残り3万5000円くらいです。最近は行けていませんが、もともと旅行が好きで海外もよく行っていたため、1回あたり10万円くらいの旅行を年に数回行くことに使っていました。
(5)趣味娯楽費について
美容代、出かけた時の交通費、飲み代、服飾費、あとは映画や本が好きなので、映画の鑑賞代金やサブスク代金、本の購入などです。
(6)加入保険について
[本人]
・医療保険(終身タイプ、疾病入院給付金1万円/日、災害入院給付金1万円/日、手術給付金)=毎月の保険料4000円
その他に、現在がん保険への加入を検討していますが、種類が多くどれに加入したらよいのか迷っています。
(7)公的年金について
受給期間65歳から年金見込額月13万3800円。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 キャッシュでの購入は難しい。ローンを組むなら2、3年で決断を
アドバイス2 65歳でローンは完済。以降は公的年金で収支トントン
アドバイス3 買わないという選択も。賃貸が借りられなくなることはない
アドバイス1 キャッシュでの購入は難しい。ローンを組むなら2、3年で決断を
マンション購入が可能かどうか、考えていきましょう。現在、財形貯蓄で年間58万円の貯蓄ができています。加えて、つみたてNISAで毎月3万3000円、年間約40万円。年間で約100万円が貯蓄できています。このペースで65歳までの19年間、貯蓄ができたとすると1900万円になります。現在の貯蓄を加えると、2440万円です。キャッシュでマンションを購入すれば、老後資金はほぼなくなってしまいます。
そこで、65歳までに住宅ローンを完済できるようなプランを考えてみます。
年間100万円の貯蓄を2年。これで現在の貯蓄と合わせて740万円になります。ここから頭金500万円、諸費用を100万円とし、住宅ローンを1500万円借りるとします。金利1.5%(固定)で返済期間は17年。毎月返済額は8万3350円です。現在の家賃とほぼ同額になります。ただ、マンションの場合は、管理費や修繕積立金が毎月かかります。これが3万円とすると、この分が不足します。現在家計収支の差額が3万5000円ほどあり、旅行のためにストックしているとのことですが、この3万5000円のうち3万円を管理費・修繕積立金に充てます。これで、マンション購入によって家計のバランスが崩れることは防げます。
つまり、頭金500万円と住宅ローン1500万円で2000万円が購入価格の上限となります。貯蓄は140万円に減ってしまいますが、家計が維持できれば、年間約100万円の貯蓄は継続できます。
アドバイス2 65歳でローンは完済。以降は公的年金で収支トントン
年間100万円の貯蓄が継続できれば、65歳までの17年間で1700万円貯めることができます。ただ、固定資産税やその他、マンションを所有することでかかるコストがあります。その分を差し引いても65歳時点で1500万円程度の金融資産を残すことはできるでしょう。住宅ローンは65歳で完済する計画ですから、65歳以降の住宅費は管理費・修繕積立金の3万円程度です。他の支出が現状と変わりがなければ毎月の支出は14万円程度です。現時点での公的年金の見込み額が月13万3800円ですから、ほぼ収支トントンで生活していけるでしょう。
1500万円は老後のゆとり資金として残り、貯蓄からの取り崩しも最低限ですむと思われます。
アドバイス3 買わないという選択も。賃貸が借りられなくなることはない
以上のように、計算上はマンション購入ができると言えますが、東京都内で2000万円以下の物件を探すことができるのか、仮にあっても築年数が古ければリフォームが必要になり、そのコストも考慮すると、購入物件の上限はさらに抑えなければなりません。また、65歳まで健康で働けて、収入が維持できることが前提となります。ローンを抱え、収入が減ってしまったときのリスクは大きいです。その点も慎重に考えてください。
年を重ねてから賃貸住宅を借りるのは難しいと思われていますが、今は、さまざまな制度が整えられており、高齢者だから借りられないということはありません。現状のまま賃貸で暮らし、貯蓄を積み重ねていき、老後資金に充てるという選択肢があってもいいと思いますよ。好きな旅行を我慢してまでマンションを購入すべきか、もう一度考えてみてください。
最後に、マンションを購入するのであれば、つみたてNISAはしばらくお休みし、預金で頭金を増やすようにしてください。価格変動するマネー商品で頭金を貯めるのはリスクがあります。これも大切なポイントとなります。
ご希望をかなえるのは無理ではありませんが、少し慎重に考え、2、3年のうちには決断なさることをおすすめします。くれぐれも借り過ぎることのないよう、ご注意くださいね。
相談者「毛玉」さんから寄せられた感想
購入する場合、しない場合とそれぞれのケースについてアドバイスをいただいてとても参考になりました。今度の生活について、自分にとって何を優先するべきか改めて考えて検討したいと思います。ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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