マンションを売却することで1340万円の残債は消えます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、1340万円の住宅ローンが残る自宅の中古マンションを売却して、実家の一戸建てを建て替えたいという42歳の会社員女性。月収21万円でいくらの住宅ローンが組めるのか……。迷える女性の味方、ファイナンシャル・プランナーの豊田眞弓さんがアドバイスします。解体・新築費用合計でいくらぐらいの建物が妥当?
■相談者
ボンドさん
女性/会社員/42歳
東北/持ち家(マンション)
■家族構成
子ども1人(20歳・大学生)
■相談内容
実家の近くに中古マンションを1500万円で購入したのですが、マンションにいるより実家にいることの方が多いため、マンションを売却しようと思います。その代わり実家を建て直そうと思います。マンションの残債は1340万円です。マンションを売却することで残債は消えます。実家を建て直すには解体・新築費用合計でいくらぐらいの建物が妥当でしょうか。自分の予想では月々6万円で35年ローンを組もうと思っています。無謀でしょうか。3LDKまたは4LDKを希望しています。子どもは大学2年生ですが、養育費で学費はまかなえそうです。建て替えについて、実家からの援助はありません。
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1)養育費について
養育費は月々5万円の受け取り。あと15カ月で終わる。
(2)ボーナスの使い道
車検、車検代、車の任意保険、予備費として家電製品、病院受診費用や冠婚葬祭用など。車の任意保険は年間5万5400円。
(3)加入保険について
・低解約返戻金型が60歳払済で200万円。
・医療保険は支払った保険料が戻ってくるタイプ。
・収入保障保険(掛け捨て)保障額は月10万円。
・医療保険がん保険は最低限度のものに加入。
この他にボーナスから、毎月ドル建て保険で1万4000円前後(変動あり)を支払っている。死亡保障300万円。加入して14カ月だが、やめてもいいと思っている。
■FP豊田眞弓の3つのアドバイス
アドバイス1 住宅ローンは変動金利よりも固定金利で考え直そう
アドバイス2 予算は2000万円が上限。老後資金も同時進行で備えて
アドバイス3 将来のリスクを見込んで、購入予算はできる限り抑えよう
アドバイス1 住宅ローンは変動金利よりも固定金利で考え直そう
シングルマザーとして子どもを育てつつ、親御さんのことも気遣っていらっしゃるのですね。養育費がしっかりあって、老後用の貯蓄やつみたてNISAでしょうか、積立投資も続けていらっしゃるのは素晴らしいです。さて、今の中古マンションを売却して家を建てることを検討されているのですね。売却代金で、売却の費用や残債が相殺されるものとして考えていきます。
月6万円の返済で、35年の住宅ローンを検討中とのことですが、変動金利で計画していないでしょうか? 住宅ローンのシミュレーションはまず、固定金利で考えることをおすすめします。最初から変動金利で考えると目先の金利が低いため、借り入れできる金額は増えますが、日銀が金融緩和策を引き締めに切り替えれば、途中で金利が上がって返済額が増えるリスクがあります。変動金利で借りたとしても、固定金利との差額分を金利上昇に備えて貯蓄をしておくくらいのことをしておきたいもの。借り入れ後に金利が上がってくると、月々の返済が6万円では済まなくなる可能性があるのです。
ちなみに固定金利は、今なら最も低い金利で1.3%。月々の返済額6万円、返済期間35年間、金利1.3%の条件で試算すると、借入可能額は2020万円になります。同じ返済額、返済期間を変動金利0.4%で計算すると借入可能額は2350万円ですから、固定金利より330万円ほど予算が大きくなります。変動金利を利用する場合でも、金利変動リスクを考え、予算は固定金利で考えておくといいでしょう。
アドバイス2 予算は2000万円が上限。老後資金も同時進行で備えて
35年ローンを組むと、完済時にボンドさんは77歳。繰上げ返済を行って完済を早めないと、定年後は健康状態などによっては、月に10万円稼ぐのも難しいかもしれません。60歳時点で繰上げ返済できる資金を準備しておくとともに、できれば30年程度で返せる額にとどめておきたいもの。月6万円の返済で、30年、金利1.3%の場合の借入可能額は1780万円。自己資金220万円をプラスすることで、2000万円の予算を組むことができます。結論から言うと42歳時点で建て替えるとして、住居費(諸費用込み)の全体予算は2000万円が上限といえそうです。これは60歳時点でいくら住宅ローンが残るか、というシミュレーションからも検証できます。自己資金220万円(現金)、住宅ローン1780万円とした場合(期間30年、1.3%)、60歳時点でのローン残高は約800万円になります。
毎月5万円、年間60万円を貯めれば、60歳までの18年間で1080万円貯められます。現在の資産741万円から住宅の自己資金220万円を引いた521万円と合わせると、60歳時点で元金だけで1601万円になっている計算です(退職金の記載がないのでないものとします)。投資も含まれるのでもう少し増えているかもしれませんが、元金だけで見ています。
ここから住宅ローン残債を繰上げ返済すると800万円が残り、贅沢をしなければなんとか年金で暮らしていけそうです。とはいえ、かなりギリギリです。親御さんと一緒に住むことでボンドさん自身の生活費を抑え、貯蓄ペースをあげることも考えましょう。そうすればもう少し老後のゆとりができるかもしれません。また、現役時代に親御さんの介護が始まっても、仕事は続けるようにしましょう。
アドバイス3 将来のリスクを見込んで、購入予算はできる限り抑えよう
これまでお話ししたとおり、ご実家の建て替えはマネープラン的にはギリギリの試算になります。ご実家を建て直したいとおっしゃるのには、それなりのご事情があるのだと推察しますが、可能であれば、大規模リフォームなどで今の建物に住み続ける方法も検討してみてください。解体費用もかからず、予算を数百万円~1000万円程度に抑えることができます。建て替える場合は新居の設計・建設費用に加えて、解体費用や手続きの諸費用、新しい家に合わせた家具やカーテン代など、さまざまな支出が発生します。また、定期的なリフォーム費用がかかることも念頭に置いてください。くれぐれも予算を肥大化させないようにしましょう。
最後に保険について。貯蓄型の低解約返戻金型終身保険は葬儀費用、あるいは解約返戻金が老後資金になります。ドル建保険も同様です。すでに加入している分は解約せず、続けてよいと思います。商品の詳しい情報がなく、確認いただくしかありませんが、家計がきつくなって住宅ローンが負担になったら、このドル建保険を解約すればよいでしょう。あるいは、円安が進んで大きな為替差益がのぞめそうな時や、定年後にお金に困った時に解約して使うこともできます。
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教えてくれたのは……
豊田 眞弓さん
All About教育費・奨学金ガイド。FPラウンジ代表、大学・短大で非常勤講師を務める。子どもマネー総合研究会代表。1994年より、FPとして家計や保険、住宅ローン等の相談業務に従事しながら、講演や企業研修、記事の監修、コラム執筆などで活動。『親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本』『赤ちゃんができたら知っておきたい 教育資金の本』(共著)『他人には聞けない 最新版 夫が亡くなったときに読む本』など、著書多数
取材・文/長島美樹
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