家具化しはじめたキッチンデザイン
最近のキッチンでは、IHクッキングヒーターの採用が増えてきました。IHクッキングヒーターのトップはフラットなガラス面であり、調理をしていない時は天板と一体になるよう納まっています。一方のガスコンロも華奢な五徳が主流となり、まるでその気配を消すかのような佇まいのデザインが多くなりました。レンジフードもアリアフィーナやHEJをはじめとした、吸い込み部分が極端に薄いデザインのものが主流になってきました。食器洗浄機はオールドアタイプといって、正面部分に操作パネルが出ない機種が流行っており、扉を閉めてしまえば、どこが食器洗浄機かわからなくなっています。このようにキッチンでは機器類の存在感をなくし、どんどん家具化する傾向にあります。
また最近のキッチンはシンクをダイニング側に向ける対面型キッチンが主流ですから、否が応にも水栓金具の存在感が重要になっているのは明白です。
多色化し始めたキッチン水栓
これまでのキッチン水栓の色はクロムメッキ一辺倒で、デザインも同じようなものばかりでした。しかしEuroCucinaやimmなどヨーロッパで開催されるキッチンの展示会を見ると、数年前から水栓金具の多色化が進んでいることがわかります。日本では洗面用の水栓金具はすでに各社が多色化しています。キッチン用に関してはまだ数は少ないのですが確実に増えてきており、今後ますますバリエーションが多くなると予想されます。
なかでもKOHLERやDELTAなどアメリカ勢はいち早く多色化に対応、ヨーロッパ勢ではAXORが受注輸入で10色に対応、GROHEは機種を選んでダーククロームやゴールド色を展開、Hansgroheも一部の機種でステンレス仕上げを用意、DORNBRACHTでも全ての機種ではありませんが、プラチナマットやダークプラチナマットなど金属の素材感を生かした仕上げを用意しています。
一部の機種では一時在庫切れのアイテムもあるほどに、すでに人気が高まっています。「水栓金具なんて水とお湯が出るだけでしょ」なんて言っている場合ではなくなってきています。今はステンレス(艶消しシルバー)、ダーククロームやマットブラックに人気が集まっていますが、ゴールド系の水栓金具も徐々に人気が上がってきています。
機能で選ぶ水栓金具
もちろんこれまでのように機能で選ぶことも大事です。選択基準として、整流やシャワー・泡沫などの吐水方式を切り替えられるか、ヘッド部分を引き出すことができるかなど、使い方に合わせた機能を選ぶ必要があります。なかでもコロナ禍の影響もあって、レバーを操作しなくても吐水/止水ができるタッチもしくはタッチレス水栓の需要が伸びています。hansgroheから発表された「アクノセレクトM81」という水栓金具は、根本付近につけられた直方体の前面から箒状にソフトな水流が出てきます。野菜やデリケートな果物、広い面積を洗いたいフライパンなどを洗うのに便利な機能です。野菜や果物を入れておくことができるトレーも付属しています。他にはない面白い機能として、発売以来注目されています。さらに2021年にクロムメッキに加えてマットブラック色も発売されたので、よりコーディネートと機能を意識した水栓金具と言ってもいいでしょう。 私が気になっている水栓金具のひとつに、同じhansgroheの「タリスセレクトM51」があります。ヘッド部分を引き出せるタイプですが、その持ち方が通常とは違いますし、上部についたボタンで一時止水も可能、正面についたボタンで吐水方式を切り替えることもできます。水栓金具を使うときの所作が変わるので、個性的なキッチンデザインには最適な水栓金具として注目しています。 KWCというスイスの水栓メーカーの「ZOE」は、吐水口の周囲にLED照明が組み込まれ、水の流れを照らして魅惑的な光のシルエットを作り出し、シンク周りを魅力的に演出することができます。 このように、これまでの水栓金具にはないような、おもしろい機能も多く見られるようになったので、ユーザーとしては、自分の暮らしに何が最適か悩ましいところです。
仕上げやデザインで選ぶ水栓金具
DORNBRACHTの水栓金具の魅力は、なんといっても仕上げと動きの素晴らしさ。タッチ/タッチレス水栓ではないですが、レバーを動かすときのゾクゾクするような操作感はたまらない快感を覚え、使う楽しさを最大限に体験することができます。またAXORブランドの水栓金具は仕上げの良さが際立っていることに加えて、デザイナーの名前を全面に出した商品展開をしており、デザインのよさはもちろん、そのデザイナーが好きな人にはたまらないアイテムと言えるでしょう。 キッチンのなかで水栓金具は、最も手軽に交換できるアプライアンスのひとつでしょう。水栓金具を変えるだけでキッチンの風景が様変わりするわけですから、ちょっと検討してみてはいかがでしょう。交換する場合は専門の水道工事業者に依頼する必要がありますので、馴染みの工務店に相談してみてください。今回はキッチンデザインの最も重要なアイテムとして水栓金具を取り上げましたが、もちろん水栓金具だけにこだわればいいというわけではなく、シンク、食器洗浄機、オーブン、コンロ、レンジフードなどのアプライアンス、ワークトップや扉などの素材と色柄、全てのことに細かい神経を行き渡らせてデザインすべきものがキッチンです。楽しいキッチンの風景をつくってみましょう。
『デザイン水栓の選び方』をテーマにしたトークショーを開催
キッチンデザインの新しい潮流として、『デザイン水栓の選び方』をテーマにしたトークイベントを企画しています。トーク終了後は、会場になっている「THE KITCHEN DEMO」および「THE KITCHEN lab.」の見学ツアーも予定しています。イベントに合わせてデザイン水栓の数を増やして展示中です。<DATA>
「デザイン水栓の選び方」(トークイベント)
日時:2022年1月20日(木)16:30~18:30(予定)
出演:和田浩一(STUDIO KAZ)、末次彩(美想空間)、ゲスト
場所:KLASI COLLEGE内『THE KITCEHN DEMO & lab.』
大阪府大阪市港区築港2-1-27 KLASI COLLEGE B2およびC1
お申し込み・問い合わせ:「美想空間」三浦宛(miura@bisokuukan.com)
【今回ご紹介した水栓金具ブランド】
- GROHE:blisspa japan株式会社
- DORNBRACHT:株式会社リラインス
- KOHLER:日鉄物産マテックス株式会社
- DELTA:株式会社コンセプトビー
- AXOR:ハンスグローエジャパン株式会社
- hansgrohe:ハンスグローエジャパン株式会社
- KWC:株式会社エスユー技研
【水栓金具以外でご紹介したブランド】