疲労回復法

水風呂の健康効果・リスク…間違った入り方は命の危険も

【温泉療法専門医が解説】サウナブームでも試す人が増えた「温冷交代浴」。サウナやお風呂と水風呂に交互に入ることで、血流改善や疲労回復などの健康効果を狙う入浴法ですが、間違った入り方は危険。脳卒中や狭心症、心筋梗塞など命にかかわるリスクもあります。水風呂の注意点、入るべきではない人、安全に楽しむコツをご紹介します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

サウナブームで温冷浴も認知上昇! 水風呂を楽しむ人も増加か

サウナと水風呂

サウナブームで認知度が上がった「温冷浴」。水風呂を安全に楽しむポイントはしっかり押さえましょう

人気漫画のドラマ化などで続くサウナブーム。雑誌やwebでもサウナに関する記事を多く目にしますし、サウナ愛好熱を発信する有名人も少なくありません。サウナ愛好家の数はコロナの影響もあって今年は横ばいですが、月1回以上サウナを利用する人は1千万弱と言われています。
 
報道の中でも注目すべき数字は、温冷浴の認知度と、実践している人の割合の上昇です。温冷浴とは、「熱気浴/蒸気浴(サウナ)→冷水浴(水風呂)→外気浴」のサイクルのことで、2017年には「知っていて実践している」と回答した人は13.4%だったのに対し、2021年では27.3%と大きく伸びています。

つまり、これだけ多くの人が冷水浴を利用するようになったということです。また、サウナの温冷浴の認知度上昇に合わせて、銭湯に設置してある水風呂も脚光を浴びています。
 

水風呂の健康効果は? 温冷交代浴の背景・医学的意義

では、温まるために行くはずのサウナや銭湯になぜ「水風呂」があるのでしょうか。

水風呂はサウナブームの前から「温冷交代浴」とも呼ばれている「温水浴→冷水浴」を繰り返す入浴法で用いられてきました。温冷交代浴は、以前から激しい運動を行うアスリートの疲労回復や筋肉痛予防といった目的で使われており、その効果について多くの医学研究が行われていました。冷水が筋肉の炎症を抑えることや、お湯に入ると温熱作用で血管が拡張し、冷水で血管が収縮するため、血管の拡張と収縮の繰り返しがポンプのような働きをして血流を良くすることから、疲労回復が進むと考えられています。サウナの後の冷水浴も、温水を使った温冷交代浴と同じ働きがあると考えてよいでしょう。
 

水風呂は危険? 冷水浴の危険性と体へのリスク

一方で、温冷交代浴はこのように体を鍛え上げたアスリートたちが使ってきた入浴法です。一般の人が急に真似をすると体への急激な温度差による負荷や刺激が強すぎて、場合によっては命にもかかわるような病気を引き起こすような危険性が出てきます。

冷水浴で最も危険なのは、血圧の急上昇です。ある研究によるとサウナの後の冷水浴で血圧が120から200mmHgまで急激に上がったと報告されています。
 
血管が柔らかくしなやかなアスリートや若い方なら血管が伸びて何事もなかったかのようにやり過ごすことができるでしょう。しかし、私のような中高年者は動脈硬化も進んできており、急激な血圧上昇には耐えきれず、血管が破けてしまったり、もろくなった血管の内側が詰まることがあります。このような変化が脳内で起これば脳卒中に、心臓で起これば狭心症や心筋梗塞になります。また、若い方であっても冷水浴による急激な血圧上昇は不整脈をひき起こす可能性があります。冷水浴中にこのような重大な疾患が発生すると、意識を失っておぼれてしまう可能性もあります。
 
苦手な方は無理に冷水浴をする必要はないでしょう。サウナや温水浴(お風呂)で程よく体を温めるだけでも、温熱作用によりストレスの改善や痛みの軽減、血流が良くなるなどの健康効果が得られます。また、冷水浴までしなくても、外で涼む「外気浴」だけでも爽快感が得られます。
 

冷水浴をする場合の注意点・水風呂を使用してはいけない人

もし、冷水浴に慣れていない方が冷水浴を試してみたい場合には、以下に留意して慎重に行ってください。健康に心配のある方は事前に医師に相談するくらい慎重であってもいいでしょう。
  • 心臓に疾患のある方、高齢者は冷水浴を避けた方が無難
  • 動脈硬化の進みやすい生活習慣病(糖尿病、高血圧、高コレステロール血症など)の人は避けた方が無難
  • 最初は、手足に少しずつ水をかけて体を慣らす
  • 最初は、少し冷たいと感じる程度のぬるま湯からスタートする
  • 慣れてきたらゆっくりと冷水につかる
  • 胸痛や頭痛、気分の不快など、体調の変化に気づいたら我慢せずすぐに冷水から出る
  • 他人の真似をせず、自分の体調を見ながら無理をしないこと
サウナや温泉やお風呂での温水浴は、体を温めることだけでも十分に健康効果があります。水風呂も人気とはいえ、決して無理せず、自分が心地よいと思うペースで安全第一で楽しんでください。事故の無いサウナブームが続くことが、温泉や入浴の医学研究をしている私のような医師にとっての願いです。

■参考
  • 観光経済新聞(2021年3月9日)
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