ママと息子の「お泊りデート」に感じる違和感

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今年5月、某ホテルの「ママと息子の初めてのお泊まりデート」というプランがSNSで批判を浴びて削除されたことがあった。母親にとって、特に息子がかわいいのは昔から言われていること。だが、今の女性たちは「ママと息子」にある種の嫌悪感を覚えたようだ。

もちろん「パパと娘のデート」も快くは受け入れられていないが、「母と息子」とは微妙にニュアンスが異なっているように見える。
 

イメージが一人歩き

「子どもが小さいうちは、ママと息子のデート、パパと娘のデートもありだと思うんですよね。私なんかSNSで娘や息子とデートってよく書いてますよ」

そう言うのは、ルミさん(39歳)だ。結婚して10年、8歳の娘と5歳の息子がいる。1歳年下の夫も「娘とデートしてくる」とふたりだけで出かけることもある。

「軽い気持ちで使っているだけなんですよね。ちょっとした“お出かけ”のつもりを楽しく言い換えているだけ。だけど近所の年配の女性に『デートってどういうこと?』と怪訝な顔をされたことはあります」

娘しかいない友人にその話をしたら、「息子とデートって気持ち悪い」と言われたという。友人いわく、「夫との間に愛がないから、息子を恋人か夫代わりにしてすがっているみたい」だそうだ。「マザコン予備軍みたいにも聞こえるし、子離れしませんと宣言しているみたいにも聞こえる」とも。

「そんな意図はまったくありません。5歳ですからね。一瞬、ムッとしたけど、他人からはそういう見方もあるのかと参考になりました」



そこでルミさんが「今はママがいないとやっていけないと思うけど」と言うと、友人は「親子の信頼関係と依存関係は違うと思うよ。息子と出かけることをデートと言っていると、きっとこの先、息子がつらい思いをするんじゃないかな」とさらりと言ってのけた。それ以来、ルミさんは息子とデートという言葉をやめた。

「幼い息子との戯れの言葉だと軽く考えていたんだけど、彼女の言い分をよく考えてみると、確かに将来、大人の男になる息子を想定しながら、いくつになってもデートできればいいなと思っているところもありました。マザコン予備軍を作り出していると言われてもしかたがないかもしれませんね」

子どもたちを自立させるのが親の務めだとわかっているのに、とルミさんはつぶやく。

 

親子関係に「これが理想」はない

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一方、「父と娘のデート」が一部で「気持ち悪い」と言われながらも大炎上しないのは、「父はもともと自立している」という世間のイメージが強いからではないだろうか。母親が息子にすがると想定されがちで、父は娘を包容力で愛すると思われがちなのだ。

だが、父親が好きで「父親以上の男性に会えないから、いまもって独身」という女性は少なからずいる。マザコンと違って、そういう場合は娘に問題があると思われがちで父親への批判にはならない。

母親はもともと過多な愛情で子どもを支配する面があり、父親は一般的には子どもと過ごす時間が短いと思われているから、愛情過多でも悪影響はないということなのかもしれない。いずれにしても、さまざまなイメージに現実が増幅されて、「親子関係はどうあればいいのか」と子育て中の母親をより悩ませているように見える。

「理想の親子関係なんてないと思うんですよ」

長年、小学校の教諭をしているレイコさん(50歳)は言う。自身もふたりの子をもつが、多忙だったため家庭はフリーランスで仕事をしている夫にほとんど任せていた。

「今年22歳になった息子は、中学時代、荒れたことがありました。今になって『あの頃はお母さんに構ってほしかったんだと思う』って。でも20歳の娘は、親に干渉されない10代を過ごせてラッキーだったと言うんですよ。同じように育てているつもりでも子どもの受け止め方は違う。私自身、仕事優先のシングルマザーのもとで育ちました。子どものころは祖父母が世話してくれたし、中学生以降は友だちといるほうが楽しかった。母は週に1度はじっくり時間をとってくれたので、そのときは言いたいことをすべて言っていましたね」

支配も依存もダメ、かといって放任もダメと最初から「言葉で評価しないほうがいい」とレイコさんは言う。

「理想を求めるより、目の前の子どもが何を言いたいと思っているのかを考えたほうがいいと私は思っています。どんなに礼儀正しい子に育っても心が冷たかったら意味がない。小さいうちは『ママとデート』もいいじゃないですか。妻がいるのに放置して、ママとデートしたいと思う大人にならなければいいだけのこと。厳密に考えすぎて、お母さんたちが神経質になるのが心配です」

何かに違和感や気持ち悪さを覚え、どうしてなのかを考えるのは自分を知る上でいいことだろう。だが、その違和感にとらわれてストレスを抱えるようになったら本末転倒。自分たち親子はどうあればいいか、どうすればいい関係になれるかはお互いが育ちながらゆっくり考えていくべきことなのかもしれない。
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