パルスオキシメーターとは……血中酸素飽和度の測定器
パルスオキシメーターでは血中の酸素飽和濃度を誰でも簡単に測ることができます
パルスオキシメーターの「パルス」というのは「脈」のこと。心臓が一拍「どくん」と打つと、手首などの動脈で「どくん」という触れることのできる、あの脈です。「オキシ」というのは、酸素のこと。「メーター」は測定器ということですから、パルスオキシメーターを直訳すると、「脈の酸素の測定器」ということになるでしょうか。
医師や看護師は20年ほど前から使用していましたが、特にこの10年ほどは急速に増えた在宅医療や介護現場でも日常的に使われるようになりました。私も患者さんのところに訪問した際には、体温や血圧、脈拍とともに、これを使って血中酸素飽和度も確認することが多いです。
パルスオキシメーターでわかること・数値の意味
冒頭で、医療現場では「サチュレーションモニター(saturation monitor)」と呼ばれることが多いと書きましたが、saturationというのは飽和濃度のことです。パルスオキシメーターの画面には「SpO2」と書かれていますが、このSはsaturationのSです。O2は酸素のことですから、パルスオキシメーターで示されているのは血中の「酸素飽和濃度」ということになります。「血中酸素飽和度」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、人間が生きていくためには、肺から取り込んだ酸素を、血液を使って全身の組織に運んでいく必要があります。血液にどの程度の酸素が含まれているのかは重要です。
ごく簡単に言えば、「血中のヘモグロビンの何パーセントが、肺から取り込まれた酸素で満たされている(結合している)かという値」ですので、例えば、SpO2が95%なら、血中のヘモグロビンの95%がしっかり酸素と結合し、全身に酸素を運搬しようとしている状態だということができます。
パルスオキシメーターは血液にどの程度の酸素が含まれているのかを、採血することもなく測定できる「スグレモノ」なのです。
パルスオキシメーターの使い方……初心者でも簡単に測定可能
パルスオキシメーターの使い方は極めて簡単です。機種によっては電源スイッチがあるものもありますが、基本的にそのまま機械を指先に挟むだけです。挟む指はどの指でもいいですが、中学生以上だと人差し指や中指が機械のセンサーとフィットするので使いやすいと思います。小学生や赤ちゃんだと、親指ぐらいがちょうどフィットする場合もあります。適切な指先を挟んで10秒もすれば、測定された結果が画面上に表示されます。パルスオキシメーターの種類によっては脈拍も同時に表示されるタイプのものもありますので、画面で「SpO2」と表示される部分の数字を確認しましょう。
パルスオキシメーターを正しく使うときの3つの注意点
ご自宅で、ご自身やご家族の測定をされる場合に、注意すべき点が3つあります。1. マニキュアやジェルネイルは避ける
測定原理上、爪にマニキュアやジェルネイルなどが施されている場合は、正確な値を出すことができません。もし、ネイルを塗っておられる場合、測定する指だけでも落としておきましょう。
2. 指を機器の奥までしっかり差し込む
測定するときには、機器の奥までしっかり指を入れましょう。指先だけチョンと挟んでも、センサーが正確に指先の脈を検知できず、数値を出すことができません。機械の奥に指先が軽く当たるまで、しっかりと指を差し込んで測定するようにしましょう。
3. 5~10秒待ってから数値を確認する
指を入れた後すぐにぱっと出た値を採用しないことです。測定のメカニズム上、初めは数字が安定しないことがあるため、最初に表示が出てから5~10秒ぐらい待ち、表示が安定してきたときの数値を読み取るようにしましょう。
パルスオキシメーターの数値の見方……正常値・異常値・注意事項
パルスオキシメーターでわかる血中酸素飽和濃度について、大体の目安を知っておきましょう。正常値としては、通常94~95%以上のことが多いです。92%を下回るようであれば、酸素が十分に肺から取り込みづらい状態ということになります。90%を切ると、いわゆる低酸素状態といえるでしょう。
ただし、パルスオキシメーターの測定原理上、全身の状態が悪かったり気温が低かったりして手足の先が冷たい状態では、正確な数値が出ないことがあります。指先の動脈まで血液がしっかりと流れておらず、正しく測定できないためです。パルスオキシメーターの画面で、心臓のマークや波のマークで脈をきちんと測定していることが確認できない場合には、SpO2として測定された値の信頼性は、低くなってしまいますので、注意が必要です。
また、現在喫煙されている方の場合、一酸化炭素がヘモグロビンと結合してしまうことによって、SpO2が実際よりも4~5ポイント高くなってしまうことも報告されています。直近まで喫煙されていた方はSpO2の値を過信するのは危ないかもしれません。
臨床症状などを組み合わせて考え、症状がひどければ、やはり医師の診察を受けることが重要です。