「全入時代」「少子化」の中、生き残りをかけた学校経営
バカでも入れる「Fラン」大学からの逆転就職、難関ブランド大学の負け組……本当の勝ち組は?
少子化にもかかわらずこの大学進学率を押し上げ続けている大きな要因が、「せめて、大学ぐらいは出て欲しい……」そのような親の声もありますが、なんといっても「Fランク大学」と呼ばれる偏差値の基準が40未満の大学群の存在です。生き残りをかけた学校経営では、とかく、やり玉に挙がる「Fランク大学」ですが、はたして、難関ブランド大学と比べたとき、その存在意義はどこにあるのでしょうか?
バカでも入れる? Fランク大学の入試は「落ちない」が基本
私立大学の入試は大きく2種類に分けられます。学力を測るテストを課す「一般選抜(旧:一般入試)」、そして学ぶ意欲や課外活動などをアピールする「総合型選抜(旧:AO入試を含む推薦入試)」です。難関ブランド大学は、偏差値の高さだけでなく、スポーツの実績や知名度のある卒業生の活躍などでも注目を集め、全国から受験者を募ることができます。その結果、人気に応じた入試の倍率がでます。そして多数の受験者の合否を同時に判定する必要から、「一般選抜」が主体になります。
一方、Fランク大学は、認知度も低いため、自ずと受験者の地域も限定されます。一般選抜による入学者よりも、学ぶ意欲やモチベーションを問われる「総合型選抜」を利用する受験生が多いのも特徴です。そのようなことから、不合格者は少なく、合格者の学力域も広い分布になっていることが「F(フリー)ランク」といわれる所以にもなっています。
入学時にこれだけの違いがあるなら、当然、難関ブランド大学とFランク大学の出口となる就職については、さぞかし隔たりがあるのだろうと邪推してしまいます。
就職率を紐解くと、難関ブランド大学が“安泰”というわけでもない
人気の難関大学、学校が公表する高い就職率からは見えづらい「中退」「留年」などの数
「学生自ら学校に名乗り出ている就職希望者」だけを分母とする学校もあれば、「卒業生」の人数にしているところもあります。当然のことながら、就職に対する意識の低い学生を除いた就職希望者数を分母にした方が就職率は高くなります。
では「卒業者数」という分母が実態に即しているかともいうと、意外とそうでもありません。なぜならば、4年前の入学者が、その後に学校を辞めた中退者や留年した学生の数字は反映されていないからです。では、どの数字をみれば適性かというと、卒業年次の学生が入学した年の入学者数を分母に据えて割り出した数値の就職率を指標にしてこそ、“4年間を通した学校のあり様”が映し出されます。
具体的な学校を例にとってみていきましょう。まずは、難関ブランド大学の最高峰の一つである早稲田大学です。世間一般では圧倒的に優位な就職を誇るといわれていますが、4年前の入学生の人数からみた就職状況はどうなっているでしょうか。
早稲田大学の2019年度(2020年)卒業生は8,657名と公表されています。就職希望者6,796名に対し、就職者は6,585名で就職率は96.9%と謳われています。では、その年次の学生が入学したときはどれだけいたかというと、2016年度の入学になりますが9,421名となっています。そもそも順当に4年で卒業した生徒は91.9%となります。
さらに、入学者数からみた4年後の就職数の数値から割り出した就職率となると、69.9%という数値なります。ざっくりとみると、10人入学したうちの3人は就職できていない状況となります。早稲田大学といえば上場企業や知名度の高い企業への就職が印象的ですが、取りこぼれている学生も決して少なくありません。
もう一つ、「就活支援に手厚い」と評判の明治大学をみてみましょう。明治大学にいたっては、退学者数、中退率を公表しています。2016年の入学者は7,321名で、4年後の2020年の卒業生は6,141名です。そのうち就職した学生は5,477名となっていますので、入学者数からみた就職率は早稲田大学よりは上回るものの74.8%となります。
(※ただし、早稲田大学、明治大学ともに、卒業者数には4年前より前の入学者、つまり留年した学生なども含まれるため実数はさらに低くなります)
資格取得、零細企業への就職……入学後の面倒見が良いFラン「レバレッジ大学」
一方、Fランク大学の就職状況はどうなっているのでしょうか。Fランク大学の特徴の一つに学校規模の小ささ、定員数の少なさがあります。歴史も浅く、ブランド大学のような全国区ではありません。当然知名度は低くなり、小規模にならざるをえなく、それを逆手にとって就職支援だけではなく、あらゆる面での学生に対する「面倒見」をうたい文句にしている学校が数多くあります。入学後の面倒見としては、
- 入学後に高校の学び直しをサポート
- 履修科目以外に、論文やレポートの書き方などの基礎力講座の開設
- 書く技術を向上させるため添削などを個人指導
- 高校時と同じようにクラス制を導入し、担当教員の声掛け、学生生活にも目を行き届かせる体制
就職率については、難関ブランド大学と違って、あえて卒業者数を分母にし、いかに4年間面倒見たかをアピールするFランク大学もあります。
あるFランク大学のキャリアセンター長がいうには
また、別のFランク大学の担当者は「○○ナビといわれる就活サイトに登録し、ブランド大学の学生と同じく肩をならべて上場企業を狙った就活をしても勝負になりません。うちは、○○ナビに求人情報を出さないような地域に根ざしている中小企業、零細企業への就職活動を推奨し、一人ひとりに合った企業へのアプローチをフォローしています」
といいます。「うちは、確かに偏差値ではFランクといわれているが、学ぶ領域がより専門学校に近い分野なので資格取得率や特定業界の就職率は100%に近いものがあります」
どちらにしても少人数だからこそできる「面倒見」をウリに地域性や設置学部・学科の専門性を活かした学びの支援、就職活動の支援をしています。
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いまどきの大学生の就職に対する意識は、自分にとっての成長ややりたいことの実現を軸に、ひとところに留まるのではなく、転職を視野にいれながら、効果的なキャリアパスを目指す方向に向きつつあります。
「その道のプロを養成する」専門学校と違い、大学はブランド大学だろうとFランク大学だろうと「学びを極める」ための教育機関であることに相違ありません。
学びを極めた上で、大学のブランドをまとい、自力で実力を磨きながら個人戦で勝負するか、はたまたFランク大学のように、地域性や専門性を武器に学校とともに団体戦で勝負するか。
ブランド大学に入学したから「就職も安泰」と構えることもできませんし、Fランク大学に進学したから、負け組でもありません。その後の4年間に的確な自己分析をし、自分に合った就労観を軸にした就職活動をできた人こそが、本当の勝ち組ではないのでしょうか。
【参考データ】