ヘルスケアベンチャー大賞受賞者の活動報告(前編)

2021年6月25日(金)~27日(日)国立京都国際会館で開催された「第21回日本抗加齢医学会総会」において、日本抗加齢医学会イノベーション委員会による「イノベーション委員会シンポジウム」が開催された。シンポジウムでは過去2回のヘルスケアベンチャー大賞受賞者による講演も行われ、受賞後のトピックなどをはじめ、現在の取り組みや展望について報告がなされた。
 

世界初となる高齢者向けの転倒予防デバイス「StA²BLE」

第 2 回ヘルスケアベンチャー大賞
仮想ライトタッチに基づく転倒リスク評価法 StA2BLE ―立位年齢モデルと社会実装―
受賞者:島 圭介(横浜国立大学大学院工学研究院、UNTRACKED株式会社)
 
島 圭介氏(横浜国立大学大学院工学研究院、UNTRACKED株式会社)

島 圭介氏(横浜国立大学大学院工学研究院、UNTRACKED株式会社)


第2回ヘルスケアベンチャー大賞を受賞したUNTRACKED株式会社の島 圭介氏は、高齢者に生じる転倒の問題を定量化する新しい検査システムを提案している。超高齢社会の日本において、健康寿命を延ばすための転倒予防対策は急務であり、そのために転倒リスクの可視化は欠かせない、と語る。

「まず背景として"転倒"という社会問題の存在がある。65歳以上の要介護要因でも4番目に多い転倒を予防することがQOLの向上に大きく貢献し、アンチエイジングにもつながっていく」(島氏)

コロナ禍でしっかり運動するということもなかなか難しい状況ではあるが、島氏は「それでも健康を保つために運動しようという流れは継続されている。ただし、転倒のしやすさという観点において、そのリスクを完全に定量化し、把握し、予防する方法論というものが存在しなかった」と説明。そもそも人はなぜ転倒するのか・しないのかについて解説した。

「身体機能(筋力や柔軟性など)の低下は言うまでもないが、歩く・立つという状況においては、身体機能だけではなく外界の環境(感覚機能)をいかに効率よく把握するかだ。視覚(目で見る)、体性感覚(足の裏や動きの感覚)、前庭感覚(耳からの情報)の統合と、それに基づいた身体の制御が非常に重要になる。身体機能と感覚機能、このふたつのバランスを定量的に評価することが必要になってくる」(島氏)

これを評価するために島氏が着目しているのが「ライトタッチ現象」だ。これは、人は指先などで軽くどこかに触ることで、指先に生じる反力を感じて姿勢の動揺が低下し、安定した立位歩行になるというものだ。これを活用し、世界初となる高齢者向けの転倒予防デバイスを開発している。なにもないところでも"見えない接触"をつくるウェアラブルデバイスによりライトタッチ現象を再現できれば転倒予防につながる、という。
 
講演の様子

講演の様子


島氏が提案する立位機能検査「StA²BLE」は、わずか1分で自身が抱える転倒のリスクを「立位年齢®」という指標で提示する極めて画期的な方法論である。これは体力テストでは測れない身体系と感覚系の両方の機能を定量化することで見えてくる新しい指標だ。

「StA²BLEは自宅、職場、ジム、健診会場、リハビリなど医療現場、高齢者福祉施設、産業現場などさまざまなシーンで活用できる。バランス能力を評価する新しい技術として普及していく可能性がある」(島氏)

「私たちが目指すのは、身体機能と感覚機能を同時に評価できる世界初の検査技術を提供することによって、機能低下がどういう側面から起きているかを明らかにすること。そのうえで装置や杖などの補助具を適切に使っていただくためのツールにしたい。我々が手がけているウェアラブルデバイスが自身の転倒リスクを下げていくための最適な方策を考えていく手助けになっていければ」と島氏は語った。

 

視覚再生遺伝子治療薬の開発は進行中
来年度の臨床試験開始を目指す

第 2 回ヘルスケアベンチャー大賞 学会賞
網膜色素変性症を対象とした視覚再生遺伝子治療薬の開発
受賞者:堅田 侑作(株式会社レストアビジョン、慶應義塾大学医学部眼科学教室)
 
堅田 侑作氏(株式会社レストアビジョン、慶應義塾大学医学部眼科学教室)

堅田 侑作氏(株式会社レストアビジョン、慶應義塾大学医学部眼科学教室)


「視覚再生遺伝子治療薬開発」で第 2 回ヘルスケアベンチャー大賞 学会賞を受賞した株式会社レストアビジョンの堅田 侑作氏は、治療法の確立しない失明難病である「網膜色素変性症」の治療法を研究すべく、大学院で遺伝子治療研究を行ってきた。

「日本では視覚障害に伴う社会コスト(経済損失)は年間約8.8兆円と試算されており、なかでも網膜色素変性症は日本における視覚障害原因の14%(第2位)を占め、有効な治療法がない指定難病であり希少疾患である。

これを克服するためのテクノロジーが、堅田氏が開発に取り組んだ光センサータンパク質「キメラロドプシン」だ。

「キメラロドプシンは高感度かつ単体で働き続けることができる。光センサーであるロドプシンは動物型と微生物型に大別され、動物型は高感度である一方、単体で働くことができないのに対し、微生物型は単体で働くことができるが屋外光レベルの強い光にしか反応しない(感度が低い)性質がある。それらを組み合わせ、いわゆる良いこと取りをすることで、高感度かつ単体で働き続けられることができる視覚再生に最適なロドプシンを慶應大学と名古屋工業大学の研究成果をもとに開発した」(堅田氏)

製品はアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療薬であり、対象疾患である網膜色素変性症の遺伝子型によらず1回の投与で半永久的な治療効果が期待できるという。
 
講演の様子

講演の様子


「簡便かつ高質な視覚再生治療が実現することで、これまで治療法がなかった網膜色素変性症患者の視覚再生、社会復帰を実現し、社会的にも社会保障費の削減が期待できる」(堅田氏)

堅田氏は、オーファンドラッグとしての強みを生かした開発計画での早期実用化を目標に、来年度の臨床試験の開始を目指している。

「医師としていち早く患者に有効な治療を施し、目に再び光を取り戻してあげたい。そして研究者として本技術の臨床有効性を証明したい。経営者としては、日本発そして大学発の遺伝子治療技術・産業で世界をリードしていきたいという思いがある」と堅田氏は語った。

 

第3回ヘルスケアベンチャー大賞 アイデア募集中!

応募締切:2021年8月6日(金)まで
開催概要はこちらから

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