お金の悩みを解決!マネープランクリニック/30代シングルの方のお金悩み相談

38歳契約社員。ずっと一人暮らしだった場合の住宅購入や運用など、いろいろ悩んでいます(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、住宅購入すべきかどうか悩んでいるという38歳の会社員女性。持病もあり、今後は無理もできないため、将来のマネープランが不安にもなっているといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 購入するなら早い方が望ましい

まずは、将来の備えについて、住宅購入をしたとして考えみましょう。
 
資金的に無理のない住宅購入は、住宅ローンの返済可能額から借入金の上限をまずは決めることです。返済期間は、できれば60歳までに完済したいので、20年とします。金利1.5%の全期間固定だと、借入額1200万円で、毎月の返済額は約5万8000円(ボーナス返済を併用しない)、借入額が1500万円なら約7万2000円となります。
 
ただし、持ち家となれば、維持費=ランニングコストを考慮しなくてはいけません。具体的には固定資産税と、マンションをご希望ですから、毎月の管理費・修繕積立金など。物件によって金額に差はありますが、少なくとも合計で月2万~3万円は見ておきたいところ。
 
したがって、1200万円借り入れた場合、実際の住宅コストは月7万8000~8万8000円。現在の家賃が7万円ですから、現在の収支から考えて、ここが借入額の上限ではないでしょうか。

頭金は300万円、諸費用はちょっと多めですが100万円として、計400万円。老後資金も考えれば、自己資金はこのくらいに抑えたいので、購入可能な物件価格は1200万円+300万円=1500万円となります。
 
購入時期は、後になるほど返済期間を短くしないといけません。かおりんさんの場合、貯蓄ペースから考えても、頭金を増やすために購入を先延ばしするより、遅くとも2年後、40歳までにはしたいところです。
 
上限1500万円で、希望エリアに望む物件が見つかるかどうかは、わかりません。当然、中古物件になりますが、あまりに築年数のある物件だと、早い時期に大規模修繕が必要になるかもしれません。慌てて購入する必要はありませんが、2年はすぐに過ぎます。今から少しずつでも調べておくといいでしょう。
 

アドバイス2 定年後も収入を得ることが住宅購入の条件

では、実際に1200万円を借り入れた場合、今後のキャッシュフローはどうなるか、試算してみましょう。
 
仮に40歳で購入した場合、それまでの2年間について、現在は月1万~2万円の貯蓄とのことですが、購入を控えていますのできっちり月2万円貯蓄し、ボーナスは半分貯蓄するとします。これで年間貯蓄額は44万~54万円ですから、2年間で100万円貯めることができます。
 
購入時に自己資金400万円(頭金300万円+諸費用100万円)を貯蓄から捻出しますから、手元に残る資金は400万円。購入後、住宅ローン+マンションの管理費・修繕積立金+固定資産税(月割額)=8万円とすれば、現在の生活コストより1万円アップします。したがって、年間の貯蓄額は38万円。これを20年間継続すれば760万円。つまり60歳の時点で手持ち資金は1160万円。これに退職金を加算した、1400万円前後が老後資金となります。
 
ここでポイントとなるのが、定年となる60歳から公的年金を受け取る65歳までの5年間。現在の仕事を再雇用という形で継続することは、体力的に難しいとのこと。健康が第一ですから、無理は禁物です。
 
ただ、60歳で住宅ローンが完済になりますが、他の生活費が変わらないとすれば、毎月の生活費は約14万円。これに、それまでボーナスから出していた不定期支出分を加算すると、年間の総支出は180万~190万円でしょうか。そうであれば、もしも、この間に収入がないとすれば、5年間で900万~950万円を老後資金から捻出しなくてはいけません。
 
一方、定年後にアルバイトなどで月5万円収入を得ることができれば、5年間で300万円、8万円なら480万円となり、その分、老後資金の目減りを抑えることができます。したがって、マンション購入を選択するなら、この間に収入を得ることは必須だといえます。
 

アドバイス3 40歳までを購入も含めて「考える」時間に

次に、65歳以降を考えます。公的年金の受給額は、ここでは正確には割り出せませんが、定年まで勤務したとして月額10万~12万円かと思います。手取りで9万~11万円として、生活費の不足額が月平均3万円なら、30年間(95歳)で1080万円、5万円なら1800万円の老後資金が必要になります。
 
そう考えると、65歳のときの手持ち資金が、60~65歳までアルバイト等で月8万円得たとして1000万円弱ですから、65歳以降、収入が年金だけなら毎月の生活費を少なくとも13万円程度に抑える必要があります。不定期支出を考慮すれば、今より月割りで2万円は節約しないといけません。

あるいは65歳以降も、働いて収入を得れば、たとえ少額でもその分余裕が生まれます。可能なら70歳までは何かしら働いておきたいところです。
 
したがって、老後については不確定要素がまだ多く、この試算もあくまで試算に過ぎませんが、もしマンション購入をするならば、購入可能な物件価格は上限1500万円、かつ60歳以降も無理のない範囲で働いて収入を得ることが条件と考えます。また、実際に購入する物件の価格を下げる、あるいは定年までに、より貯蓄ペースを上げる(家計を見直す)ことで、老後資金を増やすことも可能です。購入自体が、そのモチベーションになることも考えられます。
 
ただ、もしもマンションを購入しなかった場合、60歳の時点で退職金も含めて、手持ち資金は2000万円ほど。しかし、その後も家賃は発生します。したがって、購入をしないことを選択しても、定年後も継続的に働くことが必要となることは、ここまでの試算でいえると思います。
 
ともあれ、今後2年間を、住宅の情報収集や物件探しと同時に、どういうマネープランを描くことができそうか、考える時間とされてはどうでしょう。
 

アドバイス4 運用リスクは取らず貯蓄商品で老後に備えたい

最後に、ご質問の資産運用と医療保険について。
 
資産運用は不要です。確かに老後資金を増やす手段ではありますが、現状では運用リスクは取れません。しいていえば、iDeCo(個人型確定拠出年金)で、確実に節税効果を得ることはしてもいいと思います(iDeCoは元本保証の商品も選択可能)。ただし、掛金の引き出しは原則60歳以降であることと、口座管理等のコストがかかり、金融機関によってその額も異なります。それについては事前に調べておきましょう。
 
医療保険については、確保するなら保障は入院5000円の必要最小限でいいと思います。保険料は月2000円程度に抑えられるはずですから、結果的に昇給分でカバーできると思います。がん保険に絞るかどうかは、何ともいえませんが、がん以外にも対応できる医療保険の方が「備える」という意味では、合理的ではあります。
 
ただし、現在持病がおありということで、かおりんさんがいわれるように保険加入そのものが難しいかもしれません。あるいは、引受基準緩和型なら加入できる可能性もありますが、同程度の保障内容の保険より保険料が割高です。保険料コストを考えれば、かかる医療費は貯蓄でカバーするという選択も当然あります。まずは、加入できるかどうか、保険会社に問い合わせてみてください。
 

相談者「かおりん」さんから寄せられた感想

具体的で詳しいアドバイスとても参考になりました。住宅購入する・しないを問わず、やはり定年後はセミリタイア・パートの道が現実的ですね。健康に気をつけて、長く働けるように頑張ります。購入可能な物件価格の目安がわかったので、おっしゃっていただいたように物件探しを意識しながら、これからのマネープランを考えてみる時期にしようと思います。iDeCoと保険についても調べてみます。ありがとうございました!

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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