老後のために貯蓄すると、今の暮らしが豊かにならない

豊かに生きるための支出の考え方

豊かに生きるための支出の考え方

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、家計管理や老後資金づくりに悩む30代の会社員男性。ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんがアドバイスします。
※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

■相談者
光と影さん
男性/会社員/38歳
賃貸住宅

■家族構成
独身・一人暮らし

■相談内容
私は38歳、独身で一人暮らしです。結婚するつもりはありません。精神・発達障がい者で、精神障害者保健福祉手帳を取得しています。現在は契約スタッフとして勤めています。契約は毎年更新されるようです。退職金は出ません。勤め先に積立貯金(年率0.25%、半年複利)があるので、毎月5万円を給料から天引きで貯金しています。これは老後のためにと思ってやっています。現在困っていることは、老後のために積立貯金はするのですが、手取り月収が少ないため、家電等が壊れたときのための、プチ貯金がなかなかできません。また、もう少し手取りがあれば、暮らしを豊かにするための費用(交際費・書籍・CD等)にまわせるのにと思います。障がいがあり、これ以上の収入アップは見込めません。また、老後も不安です。何か良いアイデアがあれば、ご教示いただきたく存じます。


■家計収支データ
「光と影」さんの家計収支データ

「光と影」さんの家計収支データ



■家計収支データ補足
(1)賃貸住宅について
自治体の賃貸支援を受けていない。現在住んでいるエリアは築年数の古い1K、1DKなら3万円台で見つけることはさほど大変ではない。

(2)「暮らしを豊かにするための費用」について(相談者コメント)
「できればあと2万~3万円は欲しいのですが、贅沢でしょうか……。交際費1万円、書籍・CDに1万円、ダイエット費用に1万円といったあたりです」

(3) もしものときの頼れる人について(相談者コメント)
「健康面では主治医(精神科医)の先生が頼りになり、仕事の面ではジョブコーチ(就労支援施設のスタッフ)がいます。「障害者就業・生活支援センター」もあります。ただし、お金の面に関しては相談する相手はいません」

■FP八ツ井慶子からの3つのアドバイス
アドバイス1 収入アップが望めないなら、長く働くことでカバー
アドバイス2 贅沢ではなくても現状はきびしい
アドバイス3 創意工夫で「豊かな生活」を手にしてみる

アドバイス1 収入アップが望めないなら、長く働くことでカバー

貯蓄ペースを今よりも上げるには、今回の相談者の方に限らず、収入を上げるか支出を減らすしかないわけです。ご相談内容には「収入増は難しい」とありますが、長く働くことはできるのでしょうか。

例えば、毎月6万円預金されていますから、年間72万円。60歳まで継続できれば1584万円が今ある貯蓄に上乗せされます。これが65歳まで続くと1944万円。同じ給与水準で65歳まで働けるとすれば、これだけ金額に差が出ます。将来、老齢年金をどのような形でいくら受給されるかは、不確定要素もありますが、現在の生活水準が変わらないとすれば、ある程度用意できるのでは、と考えられます。

ただ、この金額が足りるかどうかは別として、障がいを持ちながら自立をして、かつこれだけ毎月貯蓄ができている。そして、老後資金としては2000万円前後用意できる。これは立派ですし、自信を持っていいと思います。

今、老後への不安は「決まり文句」のように、誰もが口にします。そうなると、そう感じていなかった人も、周りがそうだからと何となく不安になってくることもあるようです。もちろん、危機意識は必要かもしれませんが、老後生活は上を見ればきりがありませんし、下も同じこと。

十分な老後資金が用意できないからと、必要以上に思い悩むのではなく、その金額でどう生活するか、それを前向きにとらえて考えることができれば老後への余計な不安は減るのではないかと思います。

アドバイス2 贅沢ではなくても現状はきびしい

次に、今のまま貯蓄していくと、ご相談者の方が言われる「豊かな生活」をする資金がどうしても足りないとのこと。これについて考えてみます。

金額としてはできれば月3万円。内訳は、交際費1万円、書籍・CDに1万円、ダイエット費用に1万円。これだけ、さらに支出することが「贅沢」かどうかはわかりませんが、貯蓄ペースはぐっと落ちます。その分だけ老後資金は当然ながら貯められなくなります。そこまでして今の「豊かさ」を優先したいかというと、おそらくそれはご本人も避けたいでしょう。

となると、他の支出を削って、その費用を捻出するという方法はどうでしょう。ただこれも、今の家計支出を見る限り難しそう。しいて言えば、通信費、趣味娯楽費、雑費をちょっとずつ削って、1万円を浮かせる。

あるいは、貯蓄ペースを1万円下げて月5万円にする。ただ、これでも老後資金が60歳の時点で264万円減額になってしまいます。それをどう考えるか。

ともあれ、家計から捻出できるのは月1万円か多くて2万円。毎月3万円は現実問題として、頂いた情報の限りではきびしいという印象です。

アドバイス3 創意工夫で「豊かな生活」を手にしてみる

ただ、工夫をし、見方や考え方を変えることで、その問題もクリアできるのではないでしょうか。

まず、豊かな生活のための支出は、毎月ではなく隔月にする。それは結局、1年の半分は我慢をしなくてはいけないということですが、今までは毎月我慢していたのですから、かなり改善されたとも言えます。それと、本やCDはネットで中古を探すなど、支出を抑える工夫もできると思います。

それとダイエットですが、医師の診断や薬の服用が必要であれば別ですが、そうでなければ、費用をかけなくても済む方法があるはず。仮にメタボ体質であれば、食事のカロリーを落し、かつ適度な運動で摂取したカロリーを消費すれば、改善につながります。しかも、食費も抑えられ、健康体にもなれて一石二鳥。結局、ダイエット費用もゼロに抑えられるでしょう。

栄養補助食品やサプリメントでダイエットをされているというのであれば、それは手軽でしょうが、工夫と時間をかける(自炊する、栄養バランスのいい食事をする)ことでクリアできるのでは。

お金をかければ効果があるとは限りません。逆にお金をかけなくても効果を出すこともできるわけです。何をするにも「お金が必要」と結論づける前に、「ないなりの方法」を考えるようにしてみましょう。いろんな場面で常に、トライしてみてください。

あと「家電が壊れたときのための貯蓄ができない」ことについては、確かに予期せぬ出費は痛いものの、必要であれば今ある貯蓄から出すしかありません。貯蓄はそのための資金でもあります。

もちろん、金額の程度にもよりますが、貯蓄=老後資金が減ることをあまり心配し、それがストレスになっては意味がありません。気持ちをもう少し柔軟にし、上手に家計管理をしてみてください。

相談者「光と影」さんから寄せられた感想

先生からのアドバイスがFPらしからぬものだと思いましたが、「ない袖は振れぬ」ということでしょうか。これから再び自らの生活実態を改めて見つめ、できることがあるなら善処し、どうしようもないことは、受け入れるしかないのかなと思います。ただ、私のような社会の影になっている部分で生きている人たちに、少しでもあたたかい光が差すようになってほしい、という願いもあります。


教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん

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ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後大手信用金庫に入庫。本当にお客様にとっていいものを勧められる立場になりたいとの思いから、個人相談が中心のファイナンシャル・プランナーとして独立。近著に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)と『サラリーマン家庭は"増税破産"する! 』(角川oneテーマ21)がある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。All Aboutマネーのガイドを務める


取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ

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