大学受験

「公立高校」から医学部進学は可能? 合格ランキング圧勝「中高一貫校」の強さの理由と対抗策

毎年様々なメディアから発表される「高校別医学部合格者ランキング」。結果を見てみると、中高一貫校の圧倒的な強さがわかります。そこで今回は、大学受験予備校で進路指導を担当されてきた清水まちこさんに、その強さの理由、また中高一貫校でない生徒はどう太刀打ちすればよいか、話を聞きました。

西村 創

執筆者:西村 創

学習塾・個別指導塾ガイド

毎年様々なメディアから発表される「高校別医学部合格者ランキング」。結果を見てみると、中高一貫校の圧倒的な強さがわかります。大学受験予備校でこれまでに約1000人の生徒の進路指導を担当、私立文系から国立理系、医学部、難関国立など、多岐にわたる志望の生徒を担当してきた清水まちこさんに話を聞かせてもらいました。
 

「医学部合格者ランキング」は誰のため? 受験生は何を見ているのか?

受験生は、医学部合格者ランキングのそのものより、大学ごとの科目配点や出題傾向などを読んでいる

受験生は「医学部合格者ランキング」に載っている、大学ごとの科目配点や出題傾向、体験談などを読んでいる

毎年いろいろなメディアで発表されている「高校別医学部合格者ランキング」は、医学部医学科合格者数を高校別に集計してランキングにしたものです。国公立合格者数、私立大合格者数、現役占有率(現役合格者数/卒業生数)など、さまざまな集計方法があります。

医学部合格者ランキングは市販の医学部情報誌にも掲載されており、受験生が目にする機会自体も多いと思います。でも、実際に進路指導の場で話題に出されたことはありません。それよりも、同じ冊子に書いてある、大学ごとの科目配点や出題傾向、先輩の体験談などの方が読まれています。

ランキングは中学受験や高校受験を検討しているご家庭が、学校選びのための参考資料にしていたり、高校の先生方が指導実績の結果として確認したりするのに使われたりすることが多いようです。

どの医学部合格者数ランキングを見ても、ランクインしている学校の8割近くが、中高一貫校です。でも、なぜ中高一貫校が医学部合格に圧倒的な実績を出しているのかを知っている人は、予備校の現場から見てもあまり多くないように感じました。

そこで今回は2つの理由をお伝えします。そして、中高一貫校でない生徒はどう太刀打ちすればよいかもあわせてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
 

合格者ランキング圧勝、授業進度が早い「中高一貫校」と勝負するには?

最初に押さえておいてほしいことは、中高一貫校は、授業のカリキュラムを前倒ししているということです。例えば数学は中2や中3で高校範囲に入り、高2終わり時点で高校範囲をすべて終了、高3の1年間は復習も兼ねながら、受験を意識した演習授業を行っています。

ただ、「授業の進度が早いことそのもの」が強さの理由ではありません。中高一貫校の生徒は、早い授業についていくために集中して授業を受けなければいけません。かつ、定着のために学校の勉強以外での復習が欠かせません。この積み重ねこそが結果に出ているのです。

ですから全範囲が共通テスト前の11月末に終わるスピードの授業であれば、今やっている範囲をいかに完璧にできるかに全力を注ぐことです。すごいスピードで勉強をしていて、さらに一年かけて受験対策もしている人(中高一貫校)と戦わないといけない、それに対して今の自分の勉強はどうか、と常に振り返ることが大切です。「今やっている所は完璧にマスターできている」と返答できる人は、一貫校でなくても勝負できます。

数は少ないですが、ランキングに公立高校も入っていることからも、そのことがわかるでしょう。例えば、令和3年度国公立大学医学部医学科合格者数(既卒生を含む)は、熊本高校71名(防衛医大は除く)、札幌南高校55名(防衛医大を含む)、日比谷高校37名(防衛医大を含む)
となっています(どちらも高校公式ホームページより)。

自分の高校が進学校ではないなどで、本当に授業の進みが遅いようなら、予備校を利用して授業を先取りすることも考えてよいと思います。

中高一貫校の授業進度と差があることに悲観するのではなく、ライバルの状況を知ったうえで、どうすれば勝負できるかを自分の状況に合わせて考えましょう。たとえランキング1桁の高校でも、入学後に勉強に対する意欲を失えば共通テスト模試偏差値40ということもあり得ることを、予備校の現場で見てきました。
 

中高一貫校の「医学部志望者用コース」のような環境がない場合は?

中高一貫校で充実する医学部志望者向けのコースやプログラム

中高一貫校で充実する医学部志望者向けのコースやプログラム

もう一つの理由として、医学部志望者向けのコースやプログラムを組んでいる学校も多いことです。代表的な内容は、『卒業生の医師による講演会』『医学部の先生の講義』『病院実習』『大学の医学科見学』など。学校によっては心臓手術の模擬体験を行う『ブラックジャックセミナー』、離島の診療所を訪問する『Drコトーキャンプ』など、ユニークなネーミングであったり、なんと中学から医学部志望者を集めたプログラムを設けている学校もあります。

実習を通じて命の尊さを実感してほしいということと、活躍している人から話を聞くことで「医師になりたい」という気持ちを再認識し、受験への当事者意識を持ってもらうということですね。受験生活の中では勉強に少し疲れてしまったり、伸び悩んでしまうこともあるかもしれません。このような刺激を受けることで、本来の受験の意義を思い出すことができ、モチベーションアップに繋がります。実際に医学部プログラムやコースを設けたことで、合格者数が飛躍したという学校も多いです。

では、特に医学部プログラムやコースを設けていない学校の生徒は、同じ環境を得ることはできないのでしょうか。そんなことはありません。学校で実施されないのであれば、ぜひ自分で環境を探して参加しましょう。

例えば大手予備校には医学部医学科向けのイベントがあり、予備校生でなくても参加できます。昨年度は、「新型コロナ対策と医療の最前線から見た、医学科を目指す人たちへのメッセージ」を伝える講演が実施され、医師が招かれていました。医師体験についても高校生や予備校生を対象に、病院や民医連などの団体が独自に実施している一日医師体験が複数あります。
 

中高一貫校でないと、医学部に合格できないわけではない

自分の学校は中高一貫校ではない、または医学部合格者が先輩にあまりいないから不安という生徒も多いと思います。

そんな不安があれば、「合格している人はどんなことをしているのか」をリサーチし、自分の勉強に積極的に取り入れることを意識しましょう。身近に医学部合格者がいなくても、合格者がどのような取り組みをしているか情報を手に入れることはできます。

今回は、実績を出している中高一貫校の取り組みを紹介しましたが、科目ごとの勉強方法やスケジュールの立て方など、取り入れられる要素は無数にあるはずです。中高一貫校は、最初から天才的な人が集まっているわけでも、他の学校でやらない特別な勉強をしているわけでもありません。実績には必ず理由があり、その理由を実践する人が合格します。


医師になりたい気持ちが確かなのであれば、迷わず目指してください。努力を積み重ねた人が集まる大学生活は、きっと充実した日々になることでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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